[秘書投稿]



平成26年6月18日提出



《質問》

いわゆる袴田事件に係る再審請求決定に対する即時抗告に対する政府の説明等に関する質問主意書

 

 昭和四十一年に静岡県で発生した強盗殺人放火事件で犯人とされ、死刑が確定した元プロボクサーの袴田巖氏は、冤罪を訴え、再審請求を行ってきた。その袴田氏に対し、本年三月二十七日、静岡地方裁判所は、死刑および拘置の執行停止と再審開始を決定した。右と「政府答弁書一」(内閣衆質一八六第一五〇号)はじめ過去の関連答弁書、並びに「政府答弁書二」(内閣衆質一八六第一六三号)、「政府答弁書三」(内閣衆質一八六第一八四号)、そして「政府答弁書四」(内閣衆質一八六第二〇四号)を踏まえ、質問する。


一 袴田氏は四十八年もの間身柄を拘束され続けてきたが、今回袴田事件の再審が決定したことで身柄が釈放された。右に対する政府の見解、更には一人の国民の自由がこのように長期間奪われ続けてきたことに対する安倍晋三内閣総理大臣の率直な見解を求めたところ、過去の答弁書では「現在再審請求審係属中の刑事事件に関わる事柄については、お答えすることを差し控えたい。」との答弁が繰り返されていた。右の答弁内容を決めたのは、安倍総理ご自身の判断であるのかとの問いに対し、「政府答弁書一」では「法務省刑事局において起案し、同省においてしかるべく決裁を経た上で、内閣として決定したものである。」との答弁がなされている。右の決裁に関わった者の官職氏名について、「政府答弁書二」並びに「政府答弁書三」で「お尋ねの答弁書の決裁に関与した職員について、その官職氏名を明らかにする必要があるとは考えていない。」との答弁が繰り返されている。当方が法務省として「その官職氏名を明らかにする必要があるとは考えていない」と考える理由を問うているのにも関わらず、同じ答弁を繰り返す理由は何であるのかとの問いに対して、「政府答弁書四」では「法務省刑事局において起案し、同省においてしかるべく決裁を経た上で、内閣として決定したものである」ことを理由に挙げている。当方の質問に対する答弁書が、法務省刑事局において起案し、同省において決裁がなされ、内閣として決定したことは当方も承知しているが、それがなぜ、起案並びに決裁に関わった職員の官職氏名を明らかにすることを拒む理由となるのかを問うているのである。法務省刑事局のどの職員が、「現在再審請求審係属中の刑事事件に関わる事柄については、お答えすることを差し控えたい。」との答弁内容を起案し、決裁をしたのか、再度問う。


二 袴田氏の弁護団、支援者は、袴田氏が逮捕された当時、時に一日十時間以上の長時間に渡る取調べを受け、しかもその際に、警察官により棍棒で殴られる等の熾烈な暴力にさらされたと訴えている。右の経緯につき、政府、特に法務省、検察庁として調査をしているか、調査結果云々は問うことはしないところ、調査をしているか否かのみ、明らかにされたいとの質問に対し、過去の答弁書では「裁判所に予断を与える」として答弁を拒んでいた。「政府答弁書三」においても同様の答弁が繰り返されている。冒頭述べた、袴田氏が逮捕以来受けたとされる行為については、各種報道機関により報道され、広く周知されているものではないのか。右の問いに対し、「政府答弁書四」では何の答弁もなされていないところ、政府の見解を再度問う。


三 二で指摘したように、政府として、袴田氏が逮捕当時、非人道的な取り調べを受けていたことがすでに広く国民の知るところとなっていると認識しているのならば、仮にそのことについて政府として調査をしていることを公にしたところで、当たり前の事実が述べられたにすぎず、裁判所に予断を与えることにはなら

ないのではないのか。改めて答弁を求める。


四 今回の即時抗告を最終的に判断し、決定した者は誰であるのかとの問いに対し、「政府答弁書一」では「御指摘の即時抗告については、静岡地方検察庁検察官により行われた」とされている。その後当方は、即時抗告の事務的手続きを行った者ではなく、最終的責任を負う形で即時抗告を行うという判断を下した者は誰かと問うたところ、「政府答弁書三」には「静岡地方検察庁検察官により行われた」、「御指摘の即時抗告について、静岡地方検察庁検察官は、上級庁と適切に協議したものと承知している。」とある。静岡地検検察官と上級庁、右のどちらが、袴田事件に関して即時抗告を行うと、最終的な責任を負う形で判断を下したのかとの問いに対し、「政府答弁書四」では「お尋ねの『最終的な責任を負う形で判断を下した』が具体的に何を指すのか必ずしも明らかでない」とある。当方の言う「最終的な責任を負う形で判断を下した」の意味が、どのような点で明らかでないのか説明されたい。


五 今回の即時抗告は、あくまで静岡地方検察庁検察官により行われたものであるというのなら、最終的に袴田氏の無罪が確定し、長年に渡り同氏が冤罪により苦しめられたことが判明した場合、同氏に対する賠償等の責任を負うのは、右検察官であると認識して良いか。確認を求める。


 右質問する。



《答弁》

いわゆる袴田事件に係る再審請求決定に対する即時抗告に対する政府の説明等に関する質問に対する答弁書


一について

 先の答弁書(平成二十六年五月十三日内閣衆質一八六第一五〇号)一についてでお答えしたとおり、先の答弁書(平成二十六年四月二十五日内閣衆質一八六第一二五号)は、法務省刑事局において起案し、同省においてしかるべく決裁を経た上で、内閣として決定したものであることから、お尋ねの「法務省刑事局のどの職員が、・・・答弁内容を起案し、決裁をしたのか」を明らかにする必要があるとは考えていない。


二及び三について

 先の質問主意書(平成二十六年四月十六日提出質問第一二五号)三においてお尋ねの「右の経緯につき、政府、特に法務省、検察庁として調査をしているか」否かは公表しておらず、お尋ねについては、先の答弁書(平成二十六年五月二十七日内閣衆質一八六第一六三号)二についてでお答えしたとおり、現在再審請求審係属中の事件における公表していない捜査機関等の活動内容を裁判所に推知させることとなるため、裁判所に予断を与えるものと考えている。


四について


 先の答弁書(平成二十六年六月十七日内閣衆質一八六第二〇四号)六についてにおいて、「お尋ねの「最終的な責任を負う形で判断を下した」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかでない」と答弁したのは、「最終的な責任を負う」が具体的に何を指すのか必ずしも明らかでないためであるが、検察庁法(昭和二十二年法律第六十一号)第四条は、「検察官は、刑事について、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求し、且つ、裁判の執行を監督し、又、裁判所の権限に属するその他の事項についても職務上必要と認めるときは、裁判所に、通知を求め、又は意見を述べ、又、公益の代表者として他の法令がその権限に属させた事務を行う。」と規定しており、御指摘の即時抗告は、静岡地方検察庁検察官により行われたものと承知していることから、「御指摘の即時抗告は、静岡地方検察庁検察官により行われたものと承知している」と答弁したものである。


五について

 お尋ねは、仮定の質問であり、お答えすることを差し控えたい。