[秘書投稿]



平成26年6月17日提出



《質問》

福島第一原発事故の影響を描いた漫画表現に対して政府が明確な見解を述べない件に関する質問主意書


 本年四月二十八日及び五月十二日発売の週刊ビッグコミックスピリッツに掲載されている漫画「美味しんぼ」において、以下のような描写がなされている。
 〇福島県を訪問した主人公が突如鼻血を出す。その主人公に対し、双葉町の前町長が、それは被ばくの影響であり、双葉町では同じ症状の人が大勢いるとの発言をする。
 〇震災がれきを受け入れた大阪市内のごみ焼却場周辺の住民にも、同様に鼻血の症状が出ていると専門家が発言をする。
 右と「政府答弁書一」(内閣衆質一八六第一五九号)、「政府答弁書二」(内閣衆質一八六第一七九号)並びに「政府答弁書三」(内閣衆質一八六第一九六号)を踏まえ、質問する。


一 前文で触れた「美味しんぼ」における描写は、実際の事実を正確に反映したものであるか、福島県内を訪問した人に鼻血を出す症状が出て、福島県民、更には大阪市はじめ震災がれきを受け入れた自治体住民にも同様の症状を訴える人がいるという事実を、政府として承知し、把握しているかと問うたところ、「政府答弁書一」では「御指摘の『美味しんぼ』における描写の内容の一々について、政府として論評することは差し控える。」、「政府答弁書二」では「御指摘の『美味しんぼ』における描写の内容は、作者の表現物であることから政府として論評することを差し控えるものである。」とされている。右を踏まえ、政府として、漫画に限定しない、右答弁にある様々な「表現物」の内容が、事実と異なり、間違っている物であっても、一切の論評はしないということかと確認を求めたところ、「政府答弁書三」では「表現物の内容等により異なるため、一概にお答えすることは困難である。」とされている。では、過去に政府として、右答弁にある様々な「表現物」の内容が間違っているとして訂正を求める等の論評をした事例に何があるか、具体的に挙げられたい。


二 一の事例に対して政府が論評を差し控えなかった理由は何か、それぞれ明確に説明されたい。


三 一の事例は論評し、前文で触れた「美味しんぼ」については論評を差し控えるという対応を政府がとる理由は何か、両者の間にはどのような違いがあるのか、詳細に説明されたい。


四 「政府答弁書一」で政府は「お尋ねの削除又は訂正を求めることは考えていないが、引き続き、放射線による人体への影響等について、科学的知見に基づく正確な情報提供や風評被害の払拭に努める考えである。」と答弁している。政府として、前文で触れた「美味しんぼ」の描写につき、削除又は訂正を求めないのはなぜかとの質問に対し、「政府答弁書二」では「前回答弁書三及び四について及び五についてでお答えしたとおりである。」とされている。右答弁は、「美味しんぼ」の記述について削除または訂正を求める考えはないとの政府の見解が示されているものであり、当方はその理由を問うている。それに対し、同じ答弁をもって答弁とするという、誠実性のかけらもない答弁を政府がする理由を問うたところ、「政府答弁書三」では「誠実に答弁している。」という、禅問答のような答弁が繰り返されている。「政府答弁書一」と「政府答弁書二」の答弁がどうして誠実と言えるのか、その根拠を示されたい。


五 政府として、「放射線による人体への影響等について、科学的知見に基づく正確な情報提供や風評被害の払拭に努める考え」でいるのなら、前文で触れた「美味しんぼ」の描写について削除または訂正を求めるべきであるのに、それをしない理由は何か。再度、誠実な答弁を求める。


六 「政府答弁書二」並びに「政府答弁書三」においても、前文で挙げたような、「美味しんぼ」で描写されているような症状について、「お尋ねの『症状が見られる人がいるという事実』は承知していない。」との答弁がなされている。右は、政府としてそのような事実を承知していないというだけで、実際にそのような症状があるか否かは、把握していないということかと問うたところ、「政府答弁書三」では「承知していない」と、同じ答弁が繰り返されている。我が国において、「美味しんぼ」の描写にみられるような症状が実際に出た事例は一件もないのか。ないのならない、あるか否かは明確ではないが政府としてすべてを把握し切れていないというのならその旨正確に答弁されたい。


七 「美味しんぼ」の描写が正しく、実際にそのような事例があるのなら、政府として国民にその旨を正確に説明すべきであり、そうすることが、真の意味での風評被害の払しょくにつながると考える。右に対し、「政府答弁書二」では「前回答弁書一について及び三及び四についてでお答えしたとおりである。」との答弁を繰り返している。右の答弁がどうして当方の質問に対する答弁となり得るのか、説明を求めたところ、「御指摘の趣旨が必ずしも明らかではなく、」との答弁がなされている。右答弁を起案した者、その内容に承認の決裁をした者の官職氏名をそれぞれ明らかにされたい。


八 七の当方の質問の趣旨がどう明らかではないのか、政府として不明と考える点を説明されたい。


九 現在、安倍晋三内閣を構成する閣僚の中で、「美味しんぼ」の描写にあるような鼻血の症状について国会で質問をした者がいると承知するが、政府として把握しているか。


十 二〇一二年六月十四日の参議院東日本大震災復興特別委員会において、現在内閣府特命担当大臣の任についている森まさこ大臣は質問に立ち、「例えば、具体的にこんな心配の声をお寄せいただいています。子どもが鼻血を出した、これは被ばくによる影響じゃないかと心配なんだけれども、それを診察してもらった、検査してもらった、そのお金はどうなるんですかということです」との発言をしていると承知するが、安倍晋三内閣総理大臣として右を把握しているか。


十一 森大臣として、「美味しんぼ」の描写に対しどのような見解を有しているか。


十二 森大臣として、自身がかつて問題視し、国会で質問をした件について、現在自身が国務大臣として内閣の一員にありながら、何の答弁もしない姿勢を続けていることに対し、どのような見解を有しているか。


 右質問する。



《答弁》

福島第一原発事故の影響を描いた漫画表現に対して政府が明確な見解を述べない件に関する質問に対する答弁書


一から三までについて

 お尋ねの事例の有無については、網羅的に調査することは困難であるためお答えすることは困難であるが、先の答弁書(平成二十六年六月三日内閣衆質一八六第一七九号。以下「前々回答弁書」という。)一についてでお答えしたとおり、「美味しんぼ」における描写の内容は、作者の表現物であることから政府として論評することを差し控えるものである。


四について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないため、お答えすることは困難であるが、前々回答弁書一についてでお答えしたとおりである。


五について

 お尋ねについては、前々回答弁書二及び四についてでお答えしたとおりである。


六について


 お尋ねについては、先の答弁書(平成二十六年六月十三日内閣衆質一八六第一九六号)三についてでお答えしたとおりである。


七について

 お尋ねの答弁書は、環境省総合環境政策局において起案し、同省においてしかるべく決裁を経た上で、内閣として決定したものである。


八について

 先の質問主意書(平成二十六年五月二十六日提出質問第一七九号)五の質問については、前々回答弁書五についてで誠実にお答えしたところ、先の質問主意書(平成二十六年六月四日提出質問第一九六号)五の質問において「当方の質問に対する答弁となり得るのか」とされたためである。


九及び十について

 お尋ねについては、平成二十四年六月十四日の参議院東日本大震災復興特別委員会において、佐藤信秋参議院議員の質問に対する森まさこ参議院議員の答弁において、御指摘の発言があったと承知している。


十一及び十二について

 お尋ねについて、政府としての見解は、前々回答弁書一についてでお答えしたとおりである。お尋ねが森国務大臣個人の見解に関するものであれば、政府としてお答えすることは困難である。