[秘書投稿]



平成26年6月16日提出




《質問》

我が国における政教分離の原則に係る内閣官房参与の発言に関する質問主意書


 本年六月十日、訪米先で講演した内閣官房参与の飯島勲氏は、現在安倍晋三内閣が進めている集団的自衛権の政府解釈変更に関連し、宗教と政治との関係について定めた日本国憲法の「政教分離」について、自民党と連立政権を組む公明党と、同党の支持母体である創価学会との関係を指し、「内閣によって法制局の答弁を一気に変えた場合、政教一致ということが出てきてもおかしくない」との発言(以下、「飯島発言」とする。)をしたと報じられている。右を踏まえ、質問する。


一 「飯島発言」を政府として承知し、その内容を把握しているか。


二 「政教分離」並びに「政教一致」の定義如何。


三 我が国における「政教分離」の原則につき説明されたい。


四 現在自民党と連立政権を組み、政府と一体となっている公明党と、その支持母体である創価学会との関係は、三の「政教分離」の原則に照らして適切なものであるか。公明党と創価学会は「政教一致」の関係にあるか。政府の見解如何。


五 飯島氏は内閣官房参与という公の立場にある人物である。その人物が公の場で「飯島発言」を行ったことに対し、政府としてどのような見解を有しているか。


六 飯島氏が「飯島発言」を行うにあたり、政府に対し事前に何らかの説明はなされていたか。


七 「飯島発言」は、政府、つまり安倍晋三内閣総理大臣の見解を反映したものか。


八 現在政府、安倍総理は、政府解釈を変えることにより、集団的自衛権の行使を可能とすることを目指

している。集団的自衛権について政府解釈を変えた際、公明党と創価学会の関係についても、「飯島発言」にあるように、「政教分離」ではなく「政教一致」というように解釈が変えられる可能性はあるのか。


 右質問する。



《答弁》

政教分離の原則に係る内閣官房参与の発言に関する質問に対する答弁書


一及び五から七までについて


 御指摘のような発言があったことは承知しているが、政府において「事前に何らかの説明」を受けた事実はなく、個人としての見解を述べたものと承知しており、当該発言について政府として見解を述べることは差し控えたい。


二から四までについて

 お尋ねの「政教一致」の定義については、政府として承知していないが、いわゆる政教分離の原則は、憲法第二十条第一項前段に規定する信教の自由の保障を実質的なものにするため、国その他の公の機関が、国権行使の場面において、宗教に介入し、又は関与することを排除する趣旨であると解され、この原則に基づく規定として同項後段及び同条第三項並びに第八十九条の規定が設けられている。特定の政党と宗教団体との関係について政府としてお答えする立場にないが、一般論として申し上げれば、憲法の定める政教分離の原則は、先に述べたような趣旨を超えて、宗教団体等が政治的活動をすることをも排除している趣旨ではなく、また、憲法第二十条第一項後段の規定は、宗教団体が国又は地方公共団体から統治的権力の一部を授けられてこれを行使することを禁止している趣旨であって、特定の宗教団体が支援する政党に所属する者が公職に就任して国政を担当するに至ったとしても、当該宗教団体と国政を担当することとなった者とは法律的に別個の存在であり、宗教団体が「政治上の権力」を行使していることにはならないから、同項後段違反の問題は生じないと解してきているところである。


八について

 いわゆる限定的な場合における集団的自衛権の行使の問題については、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が平成二十六年五月十五日に報告書を提出したことを受けて、国民の命と平和な暮らしを守るため、あらゆる事態に切れ目のない対処を可能とするための国内法制の整備の在り方について、憲法解釈との関係も含め、現在、「安全保障法制整備に関する与党協議会」において協議が進められているものと承知しているが、この問題と政教分離の原則とは何ら関係がなく、また、政府として、政教分離の原則に関する憲法解釈について改めて検討を要する問題があるとは考えていない。