《質問》

我が国邦人が北方領土に入域することに対する政府の認識等に関する質問主意書


「政府答弁書」(内閣衆質一八六第一四三号)を踏まえ、質問する。


一 邦人がロシア政府のビザの発給を受けてサハリン州に入域した後、航空機や船舶等の手段で北方四島に渡航することは、我が国の立場云々と関係なく、現実的に物理的に可能であるかとの問いに対し、「政府答弁書」では「政府としてお答えする立場にない。」との答弁がなされている。我が国の国民並びに我が国の国家主権に関わることについて、なぜ政府として、答える立場にないと考えるのか説明されたい。


二 過去に邦人がロシアの管轄権に服する形で北方四島を訪問したことが明らかになり、政府、外務省として注意をした事例があると承知するが、確認を求める。


三 一九八九年九月十九日、政府は、当時のソビエト連邦のビザ発給を受ける形で北方四島へ入域することを自粛するよう、邦人に要請する閣議了解(以下、「閣議了解」とする。)を決定している。それについて政府は「政府答弁書」でも「閣議了解」について、「基本的に理解と協力を得られているものと認識している。」と答弁している。しかし、「閣議了解」に反して邦人が北方四島を訪問した事例は実際にある。右につき、政府としてどう認識しているか。


四 邦人がサハリン経由で北方四島に上陸した際に、法的に罰則規定はあるか否か、明確に答えられたい。


五 日ロ両国の主権を互いに害さない形で邦人が四島に行ける態勢をつくる、特に我が国の報道関係者が四島に渡り、現地の情勢をつぶさに報じることが出来る態勢をつくることが、北方領土問題の解決、我が国の国益増進に資するのではないのか。右に対し「政府答弁書」では、「あたかも北方四島に対するロシア連邦の管轄権を前提にしたかのごとき形で…」とされているが、当方はあくまで日ロ両国の主権を互いに害さない、つまりロシアの管轄権に服さない形での態勢づくりを主張しているところ、政府におかれては、正確に質問の趣旨を理解した上で答弁されることを再度求める。


 右質問する。




《答弁》

我が国邦人が北方領土に入域することに対する政府の認識等に関する質問に対する答弁書


一について


 ロシア連邦は、法的根拠なくして北方四島を占拠しており、我が国は、現在、北方四島に対する管轄権の一部を事実上行使できない状況にある。このような状況の下で、お尋ねのような経路及び手段によって北方四島に渡航することが「現実的に物理的に可能であるか」については、「政府としてお答えする立場にない」とお答えしたものである。


二及び三について

 外務省としては、我が国国民がロシア連邦の出入域手続に従って北方四島を訪問するといった事案に関する情報を含め必要な情報の収集を行ってきており、具体的事案が判明する場合には、その都度、申入れを行う等適切に対応してきている。
 政府としては、あたかも北方四島に対するロシア連邦の管轄権を前提にしたかのごとき形で我が国国民が北方四島に入域することは、北方領土問題に関する我が国の立場とは相容れないと考えており、今後とも、御指摘の閣議了解や「我が国国民の北方領土への訪問について」(平成三年十月二十九日閣議了解)等の周知徹底に努めていく所存である。


四について

 お尋ねのような法令はない。


五について

 お尋ねについては、先の答弁書(平成二十六年五月十三日内閣衆質一八六第一四三号)七についてでお答えしたとおりである。