《質問》

環太平洋経済連携協定で日米両政府が実質的に合意したとする読売新聞報道に関する再質問主意書


 本年五月十六日に閣議決定された「前回答弁書」(内閣衆質一八六第一五五号)では「環太平洋パートナーシップ(以下「TPP」という。)協定に関して、お尋ねの『我が国政府と米国政府の中で合意がなされた』という事実はない。」との答弁がなされている。右を踏まえ、再質問する。


一 他国政府との交渉における「合意」の定義如何。


二 「前回答弁書」には「お尋ねの『我が国政府と米国政府の中で合意がなされた』という事実はない」とある。では、日米政府間において、豚肉や牛肉等の個別品目の関税のあり方等につき、両国政府の然るべき立場にある者による調印等の儀式を経た合意はなされていなくとも、その前段階として、何らかの了解が相互になされているという事実はあるか。


三 甘利明TPP担当大臣は報道機関に対し、TPP交渉が八合目まで来ている旨の発言をしていると承知するが、確認を求める。


四 三の甘利大臣の発言の真意如何。八合目までTPP交渉が進んでいるということは、日米両政府間で合意に至る前の何らかの了解がすでになされているということか。明確に答えられたい。


五 本年五月三日付読売新聞一面に「日米TPP 豚肉関税『五十円』に 現行四百八十二円 差額制は維持 牛肉は『九%』」との見出しの記事が掲載されている。また同年四月二十六日付読売新聞にも、「日米TPP実質合意 重要課題に道筋 共同声明を表明」との見出し記事が掲載されていた。「前回答弁書」の答弁をそのまま読むのなら、右の記事は誤報ということになるが、政府はそのように認識しているのか。明確に答えられたい。


六 五の読売記事には、豚肉に関し、差額関税制度を維持する一方で、一㎏あたり四百八十二円の現行の関税を十五年程度かけて五十円へと引き下げるとされている。また牛肉に関しては、三十八.五%の現行の関税を十年程度かけて九%に引き下げるとされている。コメや麦、甘味作物の関税率は原則維持し、乳製品については米国産乳製品を低関税で輸入する特別枠を新たに設定するとのことである。更に自動車に関しては、米国が我が国に課している二.五%の関税率を、「TPP交渉で設定されるもっとも長い期間」で撤廃するとの合意がなされているとのことである。右の内容で、日米の間で合意に至る前の何らかの了解がなされているということはないか。確認を求める。


七 本年五月二十日付読売新聞には、「政府は、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉妥結に備え豚肉の関税収入を養豚業界向けの補助金に充てる検討に入った。」との記事が掲載されている。政府として、豚肉の関税収入を養豚業界向けの補助金に充てる検討に入ったという事実はあるか。


八 七の読売記事は誤報であるか。


九 「読売新聞」が報道している実質合意の内容の下、我が国がTPPに参加した場合、我が国の第一次産業、第二次産業、第三次産業はプラス面、マイナス面双方につきそれぞれどのような影響を受けるか、またそれを踏まえ、TPP参加が我が国のマクロ経済にもたらす影響はどのようなものかを問うても、「前回答弁書」では「TPPへの参加による我が国の第一次産業、第二次産業、第三次産業及びマクロ経済にもたらす影響について具体的な数字を挙げてお示しすることは困難」との答弁がなされている。しかし、政府として、「読売記事」が報じた実質合意があろうとなかろうと、国益の観点からTPP参加による我が国の各産業への影響について、それなりの裏付けを持ったシミュレーションを行っているはずではないのか。それを行っているからこそ、交渉において様々な駆け引きが可能となるのではないのか。TPP参加による第一次産業、第二次産業、第三次産業に、政府はどの様なプラス面、マイナス面を考えているか、明確にされたい。


 右質問する。




《答弁》

環太平洋経済連携協定で日米両政府が実質的に合意したとする読売新聞報道に関する再質問に対する答弁書



一について


 お尋ねについては、交渉の対象とする分野等により異なり得るものであり、一概にお答えすることは困難である。


二から四まで及び六について

 お尋ねの「了解」の意味するところが必ずしも明らかでないが、日米政府間では、平成二十六年四月の日米首脳会談等の後に、環太平洋パートナーシップ(以下「TPP」という。)に係る事項を含む日米共同声明が出されており、これを踏まえ、甘利経済再生担当大臣は、TPP協定に係る日米の交渉が八合目くらいまで進んでいる旨の発言をしたものである。


五について

 先の答弁書(平成二十六年五月十六日内閣衆質一八六第一五五号)二から八までについてでお答えしたとおりである。


七及び八について

 御指摘の報道内容については、そのような事実はない。


九について


 先の答弁書(平成二十六年五月十六日内閣衆質一八六第一五七号)四及び六についてでお答えしたとおり、TPP協定については、現在交渉中であり、TPPへの参加による我が国の第一次産業、第二次産業及び第三次産業への影響等について具体的な数字を挙げてお示しすることは困難である。いずれにせよ、交渉においては、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求するよう、全力で交渉に当たっているところである。