《質問》

ガーナ人男性が強制送還の際に急死した件に関する第三回質問主意書


 二〇一〇年、我が国での在留期限が切れ、成田空港から強制送還されることとなったガーナ人男性が、送還される際に急死した件につき、同男性の妻が、男性が急死したのは東京入国管理局の職員による過剰な制圧行為が原因であるとして、国に損害賠償を求めていた訴訟の判決が、本年三月十九日なされた。東京地裁の小林久起裁判長は、入管職員の違法な制圧行為により、同男性が窒息死したことを認定し、国に約五百万円の支払いを命じている。右と「前回答弁書」(内閣衆質一八六第一〇七号)並びに「前々回答弁書」(内閣衆質一八六第八八号)を踏まえ、再度質問する。


一 在留期限が切れた外国人を本国に送還する際、何らかのトラブルにより死亡者が出たケースは過去にあるかとの問いに対し、「前回答弁書」では「お尋ねの『在留期限が切れた外国人を本国に送還する際、何らかのトラブルにより死亡者が出たケース』が具体的に何を意味するのか明らかではない」とされている。右の答弁を起草・起案した者の官職氏名を明らかにされたい。


二 「在留期限が切れた外国人を本国に送還する際、何らかのトラブルにより死亡者が出たケースは過去にあるか」という当方の質問のどの文言の意味が不明であるのか。右の問いの具体的な意味がどのような理由でわからないのか、一の者に質問する。


三 国民から選ばれた国会議員の質問に対し、一で指摘したように「具体的に何を意味するのか明らかでない」とするのは、国会議員を上から見下し、馬鹿にした言いぶりであり、国民を愚弄することに等しいと考えるが、右の答弁を起草・起案した一の者の見解を明らかにされたい。


四 在留期限が切れた外国人を本国に送還する際、何らかのトラブルにより死亡者が出たケース以外に、死亡には至らずとも外国人が負傷した事例はないか。あるのなら、その事例を全て挙げられたい。


五 四の事例に対し、政府としてどのような再発防止策を講じてきたのか説明されたい。


六 「前々回答弁書」で、ガーナ人男性が死亡した際の法務省入国管理局長、東京入国管理局長の氏名が挙げられている。また「前回答弁書」では、田内正宏、高宅茂両氏に関し、「当該男性の死亡事案に関して、御指摘の両名が懲戒処分又は法務省の内規に基づく処分を受けた事実はない。」とされている。一人の人間が結果として死亡したことには、当然ながら担当責任者の監督責任が問われるべきではないのか。この点、政府、法務省の明確な答弁を求める。


 右質問する。


《答弁》

ガーナ人男性が強制送還の際に急死した件に関する第三回質問に対する答弁書


一について

 先の答弁書(平成二十六年四月十五日内閣衆質一八六第一〇七号。以下「先の答弁書」という。)は、法務省入国管理局において起案し、同省においてしかるべく決裁を経た上で、内閣として決定したものである。


二から四までについて

 先の答弁書四及び五についてのとおりお答えしたのは、先の質問主意書(平成二十六年四月七日提出質問第一〇七号)四でお尋ねのあった「在留期限が切れた外国人を本国に送還する際、何らかのトラブルにより死亡者が出たケース」について、その字句からは、出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)第二十四条に定める退去強制事由に該当する外国人のうち、不法残留者を送還する際に死亡者が発生した事案について問うものと考えられたが、御質問全体の文脈からは、不法残留者に限らず広く退去強制事由に該当する外国人を送還する際に死亡者が発生した事案について問う趣旨とも考えられたことから、当該趣旨を踏まえて答弁するためであり、政府としては、国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第七十四条に基づく質問に対して誠実に答弁している。
 その上で、お尋ねの「在留期限が切れた外国人を本国に送還する際、何らかのトラブルにより・・・外国人が負傷した事例」については、法務省において、外国人を本国に送還する際に当該外国人が負傷した事案について、入国警備官が同行するなどして把握している限りで調査したところ、送還に係る報告文書が保存されている平成二十年以降、当該外国人が抵抗した際に手錠の擦過により手首に擦過傷を負った事案が一件、当該外国人が負傷を理由に航空機から降りると主張するため自ら頸部を爪で傷つけ、更に航空機内で抵抗した際に顔面及び頭部を座席前簡易テーブルの金具に打ち付けてまぶた及び頭頂部に切り傷を負った事案が一件ある。


五について

 日頃から、二から四までについてで述べたような負傷事案の防止を含め、護送及び送還の安全かつ確実な実施に努めており、護送及び送還の実施に困難を伴うことが見込まれる場合には、事前に詳細な実施要領を作成し、必要に応じて護送及び送還に従事する入国警備官に事前に模擬訓練を行わせるなど安全かつ確実な送還に万全を期しているところである。


六について

 お尋ねは、現在、裁判所に係属中の事件に関わる事柄であり、お答えすることを差し控えたい。