《質問》
いわゆる袴田事件に関する再質問主意書
昭和四十一年に静岡県で発生した強盗殺人放火事件で犯人とされ、死刑が確定した元プロボクサーの袴田巖氏は、冤罪を訴え、再審請求を行ってきた。その袴田氏に対し、本年三月二十七日、静岡地方裁判所は、死刑および拘置の執行停止と再審開始を決定した。右と「前回答弁書」(内閣衆質一八六第一〇六号)を踏まえ、再質問する。
一 袴田氏は四十八年もの間身柄を拘束され続けてきたが、今回袴田事件の再審が決定したことで身柄が釈放された。右に対する政府の見解を問うたが、「前回答弁書」では「現在再審請求審係属中の刑事事件に関わる事柄については、お答えすることを差し控えたい。」との答弁がなされている。再審請求審係属中云々に関係なく、国民の自由がこのように長期間奪われ続けてきたことに対する安倍晋三内閣総理大臣の率直な見解を示されたい。
二 塩谷立衆議院議員を会長とする「袴田巖さんを支援する超党派の国会議員連盟」は、本年三月二十八日、「検察には、地裁が判断した事実を重く受け止め、最大限の配慮の上、即時抗告を断念することを強く求める」との声明を発表し、その後稲田伸夫法務事務次官を訪ね、谷垣禎一法務大臣あての議員連盟としての声明を渡していると承知する。「前回答弁書」では、谷垣大臣は同日に右声明を受領していることが明らかにされている。前回質問主意書で、右の声明に対して谷垣大臣はどのような見解を有しているか、更に谷垣大臣として右の声明を受けてから、法務省内、特に検察当局に対し、何らかの指示を出しているか否かを問うたが、「前回答弁書」では「現在再審請求審係属中の刑事事件に関わる事柄については、お答えすることを差し控えたい。」とされているだけである。右の声明は、国民の代表たる国会議員が、国民の思いを受けて谷垣大臣に渡した、極めて重いものである。それが今後法務省内においてどのような手続きが踏まれ、袴田氏の再審においてどのように扱われるのか、可能な限りで説明されたい。
三 袴田氏の弁護団、支援者は、袴田氏が逮捕された当時、時に一日十時間以上の長時間に渡る取調べを受け、しかもその際に、警察官により棍棒で殴られる等の熾烈な暴力にさらされたと訴えている。右の経緯につき、政府、特に法務省、検察庁として調査をしているか。調査結果云々は問うことはしないところ、調査をしているか否かのみ、明らかにされたい。
四 本年三月三十一日、静岡地方検察庁は即時抗告を行った。しかし、三の経緯に鑑みても、政府、検察として、袴田事件の再審決定に対して即時抗告をするのではなく、同判決を受け入れ、袴田氏の人権回復に努めるべきであったと考える。右についての谷垣大臣の見解を前回質問主意書で問うたが、「前回答弁書」では「現在再審請求審係属中の刑事事件に関わる事柄については、お答えすることを差し控えたい。」とされているのみである。静岡地方検察庁は言うまでもなく政府・行政の一部をなすものであり、法務大臣の指揮監督下に置かれるものである。静岡地検の即時抗告について谷垣法務大臣には、いつどのような形で報告を受けたか、明らかにされたい。
五 静岡地検の即時抗告手続きは、静岡地検の独自の判断か。
六 静岡地検の即時抗告手続きはどの様に、法務省、検察庁に連絡がいったか、時系列を示されたい。
右質問する。
《答弁》
いわゆる袴田事件に関する再質問に対する答弁書
一から三までについて
現在再審請求審係属中の刑事事件に関わる事柄については、お答えすることを差し控えたい。
四から六までについて
お尋ねは、個別具体的な事件における捜査機関の活動内容に関わる事柄であるので、詳細についてお答えすることは差し控えるが、御指摘の即時抗告について、静岡地方検察庁検察官は、上級庁と適切に協議したものと承知しており、また、検察当局から報告を受けた法務当局において、谷垣法務大臣に対して適切に報告を行っている。