《質問》

日豪EPAに関する質問主意書


 本年四月七日、安倍晋三内閣総理大臣とオーストラリアのアボット首相との会談により、両国間で進められてきた日豪EPAの締結が大筋で合意されたと報じられている。右を踏まえ、質問する。


一 今回合意に至った日豪EPAは、関税措置に関し、米は撤廃対象から除外する、砂糖、乳製品、小麦は維持しつつも将来に見直すとし、牛肉については段階的に縮小することになっていると報じられているが、改めてその詳細を説明されたい。


二 日豪EPAについて、過去の答弁書(例えば内閣衆質一七〇第一六九号)でも、「政府としては、我が国とオーストラリアとの経済連携協定(以下「日豪EPA」という。)において、守るべきものは守るとの方針の下、我が国にとって最大限のメリットを獲得することを目指している。」との答弁がなされてきた。我が国にとって「守るべきもの」、そして「我が国にとって最大限のメリット」とは何であったのか、更に日豪EPAが我が国の国益にどう資するものであるのか。過去の答弁書では「現在交渉中の日豪EPAについては、妥結後の影響について言及することは困難である」として明確な答弁は避けられていたが、合意に至った今、改めて詳細な説明を求める。


三 日豪EPAにより、今後農業をはじめとする一次産業を含め、我が国の産業、経済全体にどのような効果が生じるのか、都道府県別に明確な数字と共に示されたい。


四 日豪EPAにより、政府として我が国の食料自給率はどう変わると推測しているのか明らかにされたい。


五 日豪EPAにより、我が国の産業、とりわけ一次産業、農業はどのような影響を受けるか。コスト面ではオーストラリアと太刀打ちできず、多くの農業経営者は経営が成り立たなくなり、離農を余儀なくされると当方は考える。そうした生産者への補助政策のあり方等も含め、政府の見解を示されたい。



 右質問する。


《答弁》

日豪EPAに関する質問に対する答弁書


一について

 我が国とオーストラリアとの経済連携協定(以下「日豪EPA」という。)の大筋合意においては、例えば、米については関税の撤廃等の対象から除外され、精製糖、一般粗糖、バター、脱脂粉乳及び食糧用麦については将来の見直しの対象とされ、飼料用麦については一定の措置を講じた上で関税が撤廃され、牛肉については一定の期間をかけて関税が引き下げられること等とされている。


二、三及び五について

 政府としては、日豪EPA交渉の大筋合意においては、一定の農林水産品等のセンシティビティに配慮しつつ、国内農林水産業の存立及び健全な発展を図ることができる内容等を確保するとともに、物品貿易やサービス貿易の自由化、投資の保護や促進、さらには、知的財産、競争、政府調達等の幅広い分野における高いレベルの経済連携を目指す合意に達することにより、守るべきものは守り、我が国にとって最大限のメリットを獲得する結果が得られたと考えている。我が国とオーストラリアは、共通の価値と利益に基づく戦略的パートナーとして、政治・安全保障、経済、人的交流などを中心として広範な協力関係を構築しており、政府としては、日豪EPAは、こうした戦略的関係を更に強化することに資するものと考えている。
 お尋ねの「我が国の産業、経済全体にどのような効果が生じるのか」については、政府としては、日豪EPAが両国間の貿易及び投資の促進に寄与すると考えているが、お尋ねの「効果」が具体的に何を指すのかが必ずしも明らかではないため、具体的にお答えすることは困難である。
 また、お尋ねの「我が国の産業、とりわけ一次産業、農業はどのような影響を受けるか」については、日豪EPAの大筋合意において、国内農林水産業の存立及び健全な発展を図ることができる合意に達することができたと考えている。政府としては、生産者が引き続き意欲を持って経営を続けられるよう、構造改革や生産性の向上による競争力の強化を推進していく考えである。


四について

 政府としては食料自給率の目標達成に向けて取り組んでいるが、食料自給率については、国内の農業生産及び食料消費の状況や、景気や為替の変動等の要因による各国との貿易の状況の変化等に影響されるものであり、日豪EPAの締結のみによる食料自給率への影響を具体的に推計することは困難である。