《質問》

返還前の沖縄と本土との渡航のあり方等に関する質問主意書



一 一九七二年、沖縄が日本へ復帰する以前、沖縄においては出入管理庁なる機関が置かれ、本土と沖縄の行き来に関する行政手続きが行われていたと承知するが、右につき説明されたい。


二 沖縄が日本へ復帰する以前、本土側の人間が沖縄に出入域する際、パスポートの携行は必要とされたか。


三 出入管理庁の下、当時の沖縄においては、米国領という建前はあっても、いずれ日本に復帰するという前提の下、本土と沖縄との出入域手続きについて特別な枠組みが設けられていたと承知するが、右につき説明されたい。


四 三で触れたように、かつて沖縄が日本に復帰する前、特別な行政の枠組みが設けられていたことは、我が国固有の領土でありながら我が国への返還がいまだ実現していない北方領土についても適用可能であると考える。北方領土への邦人の渡航については、政府としてロシア政府のビザ発給を受ける形で北方四島へ入域することを自粛するよう、邦人に要請する閣議了解を決定しているが、それにより邦人の北方領土への渡航を制限するのではなく、沖縄と本土を行き来する際の手続きと同様の方策を用いて、邦人が四島に行ける態勢をつくることは可能ではないか。安倍晋三内閣総理大臣の見解如何。


 右質問する。



《答弁》

返還前の沖縄と本土との渡航のあり方等に関する質問に対する答弁書



一から三までについて

 日本に復帰する以前の沖縄においては、米国施政下の琉球政府法務局の外局として出入管理庁が設置され、日本との間の出入域に関するものを含む出入域審査、琉球列島に本籍を有しかつ琉球列島に居住する者が日本へ渡航する際の日本渡航証明書の交付などの事務を行っていたと承知している。
 沖縄が日本に復帰する以前、沖縄に渡航する日本人に対しては、沖縄の復帰に伴う関係法令の改廃に関する法律(昭和四十六年法律第百三十号)第三十一条による改正前の旅券法(昭和二十六年法律第二百六十七号)附則第七項に基づく身分証明書を発給しており、日本からの出国及び日本への帰国の手続を行う際に、当該身分証明書を旅券に代わる証明書として取り扱っていたものである。
 米国施政下にあった琉球政府において、「いずれ日本に復帰するという前提の下、本土と沖縄との出入域手続きについて特別な枠組み」を設けていたかについては、政府としてお答えする立場にない。



四について

 政府としては、あたかも北方四島に対するロシア連邦の管轄権を前提にしたかのごとき形で我が国国民が北方四島に入域することは、北方領土問題に関する我が国の立場とは相容れないと考える。政府としては、御指摘の閣議了解に基づいて、我が国国民の北方領土への入域は、墓参、四島交流及び自由訪問の枠組みの下での訪問のみとし、これら以外の北方領土への入域については、北方領土問題の解決までの間、これを行わないよう、国民の理解と協力を要請してきており、今後とも、御指摘の閣議了解の周知徹底に努めていく所存である。