《質問》

外務省報償費がかつて官邸へ上納されていたことに対する安倍晋三内閣の認識等に関する再質問主意書


 二〇一〇年二月五日、当時の鳩山由紀夫内閣時に閣議決定された政府答弁書(内閣衆質一七四第五三号)において、「これまでの経緯等を改めて確認したところ、かつて外務省の報償費が総理大臣官邸の外交用務に使われていたことがあったことが外務省において判明した。なお、現在は外務省の報償費が総理大臣官邸の外交用務に使われていることはなく、また、今後においても使われることはない。」との政府答弁がなされ、過去に外務省における報償費、いわゆる機密費が首相官邸に上納されていたことが明らかにされた。同日の記者会見において、当時の岡田克也外務大臣も「外務省の報償費については昨年以来、これまでの経緯等について私の下で確認作業を担ってきましたが、その結果、かつて外務省の報償費が総理大臣官邸の外交用務に使われていたことがあったことが判明しました。」と述べている。更には、同年二月十二日の衆議院予算委員会でも同趣旨の答弁をしている。右と「前回答弁書」(内閣衆質一八六第二二号)を踏まえ、再質問する。


一 森喜朗内閣、小泉純一郎内閣で内閣官房長官を務めた福田康夫氏は、同職在任中、上納の慣行について国会の場で、
 ① 二〇〇一年二月十三日 衆議院予算委員会
  「いわゆる上納という問題につきましては、これは何度も何度もそういうことはないというように申し上げておるわけでございまして、(中略)上納はないということでまずは御理解いただきたいと思います。」
 ② 二〇〇一年三月八日 参議院予算委員会
  「報道にありますいわゆる外務省の上納というものはございません。」
 ③ 二〇〇一年十一月二十一日 衆議院内閣委員会
  「委員は、何か上納があってというようなこと、それを前提にしてすべて物語をつくり上げているような、そんなお話をされているようでありますけれども、これは私は、国会答弁でも再三申しておりますように、上納というものはないということで、その前提で話をしていただきたいと思います。」
 ④ 二〇〇二年一月二十八日 衆議院予算委員会
  「これは、そういうように経費が入り組んでいたということがあったわけですね。これを上納と言うかどうか、私どもは上納というふうに言っていない。要するに、経費の明細が、項目によって向こうで負担してもらうとかいうようなことがあった。そういうような事実があったということは確かでありまして、それは、現在と申しますか、十三年度から明確にして疑いのないようにするというように改めておるところでございます。」
 ⑤ 二〇〇二年一月三十日 参議院予算委員会
  「いわゆる上納というものがあることはありません。今までもね。」
 ⑥ 二〇〇二年二月十八日 衆議院予算委員会
  「明細をここに持ち合わせていないので、正確なことは申し上げられませんけれども、上納とかそういうものと絡み合わせて考えていただきたくないと思っております。」
 との発言をしている。右につき「前回答弁書」では「当該答弁における『上納』の意味するところが明らかではないため、お尋ねにお答えすることは困難である。」との答弁がなされている。右答弁を起草し、作成した者の官職氏名を明らかにされたい。


二 一の答弁を作成するにあたり、決裁書は作成されているか。されているのなら、それに署名をした者の官職氏名を全て明らかにされたい。


三 安倍晋三内閣総理大臣はじめ各閣僚は、「前回答弁書」を閣議で決定する際、その内容を把握していたか。


四 一で挙げた当時の福田長官による発言は、内閣官房長官という公職にある者が、国会という公の場で行ったものであり、議事録にも掲載されている。質問者の発言との文脈で見ても、「上納」の意味するところが、外務省の報償費が内閣官房へ回されることつまり、「前回答弁書」でもあるように「外務省の報償費が総理大臣官邸の外交用務に使われていたこと」を指すのは明白である。それにも関わらず、「当該答弁における『上納』の意味するところが明らかではないため、お尋ねにお答えすることは困難である。」とするのは、国民の代表たる国会議員の質問に対する答弁としてはあまりに不誠実であり、国会議員、更には国民を侮辱するものではないのか。安倍総理の見解如何。


五 一の福田長官の発言は、安倍晋三内閣総理大臣が内閣官房副長官を務めていた時になされたものもある。外務省の報償費が総理大臣官邸の外交用務に使われることが実際にはあったのにもかかわらず、当時それを否定する答弁が閣僚によってなされ、国民に対して嘘がつかれていたことに対し、安倍総理としてどのような見解を有しているか。


 右質問する。



《答弁》

外務省報償費がかつて官邸へ上納されていたことに対する安倍晋三内閣の認識等に関する再質問に対する答弁書


一から三までについて


 お尋ねの答弁書は、外務省大臣官房において起案し、同省においてしかるべく決裁を経た上で、内閣として決定したものである。


四について

 政府としては、国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第七十四条に基づく質問に対して誠実に答弁している。


五について

 福田康夫元内閣官房長官は一連の答弁の中で、内閣総理大臣の外国訪問に関して内閣官房と外務省の経費の分担が従来は明確になっていなかった点を明らかにしている。なお、内閣総理大臣の外国訪問に関する内閣官房と外務省の経費の分担は既に明確化されている。