《質問》
NHK会長の各種発言に対する政府の見解に関する再質問主意書
本年一月二十五日、日本放送協会(NHK)の会長に就任した籾井勝人氏が記者会見を行った。その会見場において籾井会長は、いわゆる従軍慰安婦問題について「戦争地域にはどこにもあったと思う」、尖閣諸島、竹島について「国際放送で尖閣、竹島など領土問題について明確に日本の立場を主張するのは当然だ」等、我が国の歴史、領土問題等に関連する発言(以下、「発言」とする。)をしていると承知する。右と「前回答弁書」(内閣衆質一八六第七号)を踏まえ、再質問する。
一 NHKの会長は、公の場で政治的問題に関する自身の意見を述べることは許されるかとの問いに対し、「前回答弁書」では「協会の会長の地位にある者が、一個人としての立場から公の場で意見を述べることは当然にあり得る」としつつも、「その際には、協会の会長の地位にあることも踏まえた適切な言動が求められる」と答弁している。NHK会長の言動としてあるべき姿を示しつつも、「前回答弁書」において、政府として「放送機関の代表者が行った個別の発言について、政府として見解を述べることは差し控えたい。」と、「発言」に関する見解を拒んでいるのはなぜか。
二 「発言」は、右「協会の会長の地位にあることも踏まえた適切な言動」に該当するか。政府の見解を明確に述べられたい。
三 「前回答弁書」で「協会の会長は、経営委員会が任命することとされている。また、法第五十五条第一項において、経営委員会は、会長が職務の執行の任に堪えないと認めるとき等は、これを罷免することができると定められている。」とされている。「発言」を就任記者会見の場で行った籾井会長は、「職務の執行の任に堪えない」状態にあるのではないのか。政府の見解如何。
四 NHK経営委員会について、その権限、職責、また委員会を構成する委員の選ばれ方、果たすべき職責、年間支払われる報酬の額等、詳細を説明されたい。
五 NHK経営委員会委員の中に、たとえば一九九三年の朝日新聞襲撃事件の実行犯を礼賛したり、東京都知事選挙において応援演説をし、他の候補を「人間のクズ」等と罵る等の言動を行う者がいるが、政府として、右を把握しているか。
六 籾井会長だけでなく、その会長を任命し、罷免する権限を持つ委員の中にもその任に堪えないと思われる問題発言をした者がいるが、政府の見解如何。
七 会長人事、そして経営委員会委員の人事を、政府として再考する考えはあるか。
右質問する。
《答弁》
NHK会長の各種発言に対する政府の見解に関する再質問に対する答弁書
一について
放送法(昭和二十五年法律第百三十二号。以下「法」という。)は、放送事業者の自主自律を基本としており、その趣旨を踏まえて、放送機関の代表者が行った個別の発言について、政府として見解を述べることは差し控えたものである。
二について
先の答弁書(平成二十六年二月七日内閣衆質一八六第七号。以下「前回答弁書」という。)三から七までについてでお答えしたとおり、放送機関の代表者が行った個別の発言について、政府として見解を述べることは差し控えたい。
三について
前回答弁書八についてでお答えしたとおり、日本放送協会(以下「協会」という。)の会長の任命及び罷免については、経営委員会の権限とされており、政府として見解を述べることは差し控えたい。
四について
協会の経営委員会は、法の規定に基づき、協会の経営に関する基本方針等の議決、役員の職務の執行の監督及び協会の会長の任免等を行うこととされており、その委員は、このような権限を有する合議体としての経営委員会を組織し、協会の経営の一翼を担うことを職責としている。
委員の選任については、法第三十一条第一項の規定により、公共の福祉に関し公正な判断をすることができ、広い経験と知識を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命することとされ、この場合において、その選任については、教育、文化、科学、産業その他の各分野及び全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならないとされている。
委員の年間報酬については、協会の「経営委員会委員報酬支給基準」によれば、非常勤の委員は、その役職に応じ、委員長は六百十九万二千円、委員長職務代行者は五百五十七万二千八百円、委員は四百九十五万三千六百円であり、常勤の委員は、その役職に応じ、委員長は三千九十二万円、委員長職務代行者は二千六百九十万円、委員は二千二百六万円となっている。
五について
御指摘のような言動に関する報道があったことは承知している。
六について
御指摘の「問題発言」が何を指すのか必ずしも明らかでないが、いずれにしても、協会の経営委員会の委員が個人的に行った発言等について、政府として見解を述べることは差し控えたい。
七について
お尋ねの「会長人事」については、三についてでお答えしたとおりである。
また、「経営委員会委員の人事」については、現在の委員は、四についてでお答えした手続に従って選任されているものと認識しており、委員相互の真摯な議論を通じて、経営委員会全体として、法の規定に従い、その役割を果たしていただくことを期待している。