《質問》

いわゆる「証人テスト」に関する質問主意書


一 刑事訴訟規則において、いわゆる「証人テスト」と呼ばれる手続きが定められていると承知するが、右につき、その目的や意義等、実施にあたっての取り決め、法的根拠等、その詳細を説明されたい。


二 証人テストの際、検察側が証人となる者に対し、事実ではないことを裁判の場で証言するよう求めることは認められるか。認められるのなら、それはどのような場合においてか。


三 本年一月五日付朝日新聞に、「検察、裁判証言を指示か 宮城三人殺傷 密室で『予行練習』 他の地検でも相次ぐ」二〇一〇年、宮城県石巻市で三人を殺傷したとして死刑判決を受けた者の裁判員裁判において、証人となった者に担当検事が証人テストの段階で、事実とは異なる内容を証言することを指示していた疑いがあると報じる記事が掲載されている。政府として、右の記事を承知し、その内容を把握しているか。


四 朝日記事には、三の事件の他にも、二〇〇八年十一月に愛知県で起きた窃盗事件、滋賀県大津市での相続税法違反事件における証人テストで、証言内容の指示が担当検事からなされた旨書かれている。右の朝日記事の内容は事実か。担当検事が証人テストに際して、特定の事実を述べるよう指示をしたという事実があるのか。


五 四で、朝日記事の内容が事実なら、それぞれの検事は誰の指示を受け、証人テストでそのようなことを行っていたのか、その者の官職氏名を含め、全て明らかにされたい。


六 四で、朝日記事の内容が事実なら、それぞれの検事の行為は、真実を明らかにするという裁判の趣旨に合致するものであると言えるか。政府の見解如何。


七 二〇一〇年、大阪地検特捜部の検事が証拠を改ざんした事件を受け、法制審議会における検察改革が進められ、取調べを録音・録画するといった可視化措置も実施されるようになった。しかし、証人テストは可視化の対象とはなっていないと承知する。朝日記事の内容にあるように、証人テストが、検事が証人となる者に事実でないこと、またはある特定の内容を証言させる誘導の場となっている事例に鑑み、右も可視化の対象とすべきであると考えるが、政府の見解如何。


 右質問する。



《答弁》

いわゆる「証人テスト」に関する質問に対する答弁書


一について

 いわゆる証人テストは、刑事訴訟規則(昭和二十三年最高裁判所規則第三十二号)第百九十一条の三の「証人の尋問を請求した検察官又は弁護人は、証人その他の関係者に事実を確かめる等の方法によつて、適切な尋問をすることができるように準備しなければならない。」との規定に基づいて行われているものである。


二について

 一般論として申し上げれば、刑法(明治四十年法律第四十五号)第百六十九条は、「法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。」と規定しており、御指摘の「証人テストの際、検察側が証人となる者に対し、事実ではないことを裁判の場で証言するよう求めること」が、この規定に該当する行為を行うよう求めることを指すのであれば、そのようなことをしてはならないことは当然である。


三について

 御指摘の記事については承知しており、その内容は把握している。


四から六までについて

 お尋ねは、個別具体的な事件における捜査機関の活動内容に関わる事柄であるため、答弁を差し控えたい。


七について

 一般論として、検察当局においては、証人が体験した事実、記憶状況、表現能力等について十分確認するなどして、いわゆる証人テストを適切に実施しているものと承知しており、仮に不当な証人テストが実施されることにより証言の信用性に問題があると疑われる場合には、証人尋問において、その経緯等が吟味されるものと承知している。