《質問》

ミャンマーにおける邦人殺害事件の真相解明に関する質問主意書


 二〇〇七年九月、ミャンマーで民主化を求める僧侶や市民のデモをミャンマー軍事政権が鎮圧している中、その現場にいた日本人ジャーナリストの長井健司氏がミャンマー治安部隊に射殺される事件(以下、「長井事件」という。)が発生している。その一方で、二〇一二年四月二十一日、野田佳彦前内閣総理大臣は、訪日したミャンマーのテイン・セイン大統領と会談した際、同国における民主化等への取り組みを評価するとして、二十五年ぶりに同国への円借款を再開し、約三千億円の債権を段階的に放棄する旨表明している。右と「政府答弁書」(内閣衆質一八〇第二一三号)を踏まえ、質問する。


一 「長井事件」について、「政府答弁書」では「長井健司氏死亡事件については、政府として、これまで事件の真相究明及びビデオカメラを含め長井健司氏が死亡したときに所持していた全ての所持品の返還についてミャンマー政府へ累次申入れを行っており、平成二十三年十二月二十六日(現地時間)に、玄葉光一郎外務大臣からワナ・マウン・ルイン・ミャンマー外務大臣に対し、ミャンマー政府は長井氏の御遺族や日本国民に対し、当該事件の捜査状況や捜査結果について説明する必要がある旨伝えた。また、平成二十四年四月二十一日の日ミャンマー首脳会談においても、野田佳彦内閣総理大臣からテイン・セイン・ミャンマー大統領に対し、改めて申入れを行い、同大統領からは、非常に心を痛めているとの発言があったところである。」との説明がなされている。現時点において、長井氏が所持していたビデオカメラの返却、真犯人の特定等、「長井事件」の真相解明はどのような状況にあるのか説明されたい。


二 安倍晋三内閣が発足してから、「長井事件」に関し、ミャンマー側に真相解明の申入れをしたことがあるか否か、明らかにされたい。


三 安倍内閣として、対ミャンマーODAはどうあるべきと考えているのか説明されたい。


四 安倍内閣として、「長井事件」の真相解明がなされないまま、前野田政権においてミャンマーへの円借款を再開し、債権放棄に応ずるとの決定がなされたことをどう評価するか明らかにされたい。


五 安倍内閣として、「長井事件」の真相解明に取り組む考えはあるか。


六 五で、あるのなら、発生から七年目となる本年、具体的にどのような実効性のある方策を持って真相解明を目指すのか説明されたい。

 右質問する。




《答弁》

ミャンマーにおける邦人殺害事件の真相解明に関する質問に対する答弁書



一、二、五及び六について

 長井健司氏死亡事件(以下「本事件」という。)については、政府として、これまで事件の真相究明及びビデオカメラを含め長井健司氏が死亡したときに所持していた全ての所持品の返還についてミャンマー連邦共和国(以下「ミャンマー」という。)政府へ累次申入れを行ってきている。第二次安倍内閣発足後も、平成二十五年五月二十六日(現地時間)及び同年十二月十五日の日ミャンマー首脳会談において、安倍晋三内閣総理大臣からテイン・セイン・ミャンマー大統領に対し、ミャンマー政府は長井健司氏の御遺族等に対して本事件の捜査状況や捜査結果について説明する必要がある旨申し入れ、同大統領からは理解しているとの反応があった。また、同年九月二十五日(現地時間)の日ミャンマー外相会談においても、岸田文雄外務大臣からワナ・マウン・ルイン・ミャンマー外務大臣に対し、同様の申入れを行った。今後もこのような申入れを継続していくこととしており、本事件に関するミャンマー政府の具体的対応を促していく考えである。


三及び四について

 我が国としては、ミャンマーの政治及び経済分野における諸改革の取組に対する支援を通じ、ミャンマーにおける民主化及び法の支配の一層の進展を促進していくことが、本事件の真相解明に取り組んでいく上でも必要と考えている。かかる観点から、ミャンマーに対する経済協力については、引き続き改革努力の進捗を踏まえつつ、必要な支援を実施する方針としている。