《質問》

特定秘密保護法の法制化に係るプロセスに関する質問主意書


 

 昨年十二月六日、「特定秘密の保護に関する法律案」、いわゆる特定秘密保護法案が参議院で可決し、成立した。
 右を踏まえ、質問する。

一 昨年十二月九日、安倍晋三内閣総理大臣は、特定秘密保護法の成立を受け記者会見し、「私自身がもっと丁寧に時間をとって説明すべきだったと反省もしている」と述べていると承知する。安倍総理として、同法案の成立に際し、国民への説明がどう不足していたと考えているのか説明されたい。


二 特定秘密保護法案が国会に提出されることとなった契機は、二〇一〇年十一月、尖閣諸島沖で我が国海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した時の映像が、現職の海上保安庁職員によりインターネット上に流されたことがあると承知する。その後二〇一一年一月、当時の民主党政権下で「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が発足し、その報告書が同年八月八日にまとめられ、それを受け、「情報保全に関する検討委員会」における協議が始まり、今日に繋がっているものと考える。この一連の経緯について改めて説明されたい。


三 安倍内閣において、二の有識者会議並びに検討委員会での議論の内容は、特定秘密保護法が成立する上でどのように活かされたのか説明されたい。


四 昨年十一月二十一日、衆議院国家安全保障に関する特別委員会において、森まさこ内閣府特命担当大臣は、二の有識者会議によりまとめられた報告書について、その内容を十分に尊重した上で法制化作業を進めることが、二の検討委員会において決定している旨の答弁をしていると承知するが、確認を求める。


五 四の報告書が作成される以前から、政府において特定秘密保護法案の法制化作業が進められていたという事実はあるか。


六 本年一月二十二日付東京新聞に、政府において二の有識者会議で結論が出される前に、内閣情報調査室が法制化作業を始めており、「秘密保全法制に係る検討資料等の協議について」と題した電子メールを各省庁担当者に送っていたと報じる記事が掲載されている。政府として右の記事を承知し、その内容を把握しているか。


七 六の記事の内容は事実か。内閣情報調査室が、二の有識者会議での報告書が出される前に法制化作業を始めていたというのは事実か。事実なら、それは誰の指示により、誰の責任の下始められたのか、またそれに係る決裁書は作成されているのか説明されたい。


八 六の記事には、内閣情報調査室から各省庁担当者にあてたメールの中に、「法制化に向けた作業も進めていきたい」、「法案化作業については、今後開催される検討委員会の決定により開始される予定ですので、資料の取り扱いについてはくれぐれもご注意願います」との文言があったと報じられているが、右は事実か。


九 六及び八のメールが送信された担当省庁の担当者の官職氏名を明らかにされたい。


十 六の記事の内容が事実なら、二の有識者会議の報告書を十分に尊重した上で特定秘密保護法案の法制化作業を進めるとした森大臣の答弁は虚偽のものになると考えるが、いかがか。


十一 六の記事により、特定秘密保護法案は、国民の代表である国会議員の目に触れるところなく、特定の官僚の手により法制化が進められたものであることが明らかになった。法制化のプロセスが民主主義に反していたこと、また安倍総理自身が一で触れたように、国民に対する説明が不足していたことを認めていることに鑑みても、再度、同法のあり方を審議し直すべきではないのか。


 右質問する。




《答弁》

特定秘密保護法の法制化に係るプロセスに関する質問に対する答弁書


一について

 お尋ねの発言は、特定秘密の保護に関する法律(平成二十五年法律第百八号。以下「本法」という。)については、様々な議論を経て成立したものであり、その過程で伺った御意見を真摯に受け止め、今後とも、本法について、国民に丁寧に説明を重ねるとともに、その適正かつ効果的な運用が図られるよう施行準備を進めていきたい旨を述べたものである。


二から四までについて

 秘密保全に関する法制の整備は、御指摘の「契機」以前からの課題であったが、平成二十二年十二月、政府における情報保全に関する検討委員会(以下「検討委員会」という。)における検討が開始され、平成二十三年一月以降、その検討に資するため、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議が開催され、同有識者会議において、同年八月八日、「秘密保全のための法制の在り方について」(報告書)が取りまとめられた。さらに、同年十月七日には、検討委員会において、当該報告書の内容を十分に尊重の上、平成二十四年の通常国会への提出に向けて、秘密保全に関する法制の整備のための法案化作業を進めることとされた。これらを踏まえ、政府においては、更に検討を進め、特定秘密の保護に関する法律案を第百八十五回国会に提出したものである。
 御指摘の森国務大臣の答弁は、以上の経緯を述べたものである。


五から十までについて

 お尋ねの「記事」及び「その内容」については承知しており、また、当該「記事」において報じられている御指摘の「電子メール」(以下「電子メール」という。)の中には「法制化に向けた作業も進めていきたい」及び「法案化作業については、今後開催される検討委員会の決定により開始される予定ですので、資料の取扱いについてはくれぐれもご注意願います」との記述がある。
 また、お尋ねの「法制化作業」が何を意味するのか必ずしも明らかではなく、お答えすることは困難である。いずれにせよ、政府においては、二から四までについてで述べた経緯のとおり、秘密保全に関する法制の整備のための法案化作業を進めたところである。
 なお、電子メールが送信された者は、内閣官房については高岩直樹参事官補佐、岩浅太一主査、八幡浩紀主査及び丸山洋平主査、警察庁については重久真毅警備局警備企画課課長補佐、増田美希子同課課長補佐及び同課職員一名、法務省については角田亨刑事局公安課公安労働係長及び同課職員一名、公安調査庁については総務部総務課職員一名、外務省については田中麻美子国際情報統括官付事務官及び大臣官房総務課職員一名、経済産業省については林勇樹大臣官房情報システム厚生課長補佐、監物英樹大臣官房情報システム厚生課調整係長及び斉藤眞経済産業政策局産業組織課知的財産政策室企画一係長、海上保安庁については坂本伸男総務部政務課企画係係員並びに防衛省については防衛政策局調査課職員二名(いずれも当時)である。


十一について

 本法は国会における慎重な審議を経て成立したものと承知しており、「法制化のプロセスが民主主義に反していた」や「同法のあり方を審議し直すべき」との御指摘は当たらない。