《質問》

二〇一〇年九月に尖閣諸島沖で発生した衝突事件に係る現安倍内閣における文部科学大臣の当時の発言等に関する質問主意書



 二〇一〇年九月七日、尖閣諸島周辺に侵入した中国漁船が、我が国の海上保安庁巡視船に衝突する事件(以下、「衝突事件」とする。)が起きた。右を受け、同月八日、石垣海上保安部は同漁船の※(注)基雄船長を公務執行妨害の容疑で逮捕したものの、同月二十四日、那覇地方検察庁の鈴木享次席検事は、同船長を処分保留として釈放することを発表し、翌二十五日午前一時半過ぎに釈放がなされた。右の事件が発生した当時、内閣官房長官を務めていた仙谷由人氏が、本年九月十九日、時事通信社のインタビューに応じている。例えば本年九月二十四日付北海道新聞に掲載されている、「衝突中国漁船の船長釈放 仙谷氏 政治関与認める 背景に菅元首相の指示」との見出し記事(以下、「記事」とする。)では、「次官に対し、言葉としてこういう言い方はしていないが、政治的・外交的問題もあるので自主的に検察庁内部で(船長の)身柄を釈放することをやってもらいたい、というようなことを僕から言っている」、「中国が来ないとどうするのか。これは菅氏も大変焦りだした。『解決を急いでくれ』というような話だった」と語ったとある。
 右につき、「政府答弁書一」(内閣衆質一八五第三八号)では「御指摘の事件の被疑者を釈放するとの方針は、検察当局において、法と証拠に基づいて決定されたものであり、当該方針の決定に関して、関係省庁との折衝及び協議が行われたことはないと承知している。」との答弁がなされている。「政府答弁書二」(内閣衆質一八五第六六号)でも「前回答弁書二から四までについてでお答えしたとおりである。」と、同じ内容の答弁が繰り返されている。右を踏まえ、質問する。



一 二〇一〇年十月二十九日の衆議院文部科学委員会において、現在文部科学大臣の任に就かれている下村博文氏は、「衝突事件」に対し、「そもそも、今回の民主党政権は、本当に統治能力を持った政権運営をしているとは全く思えません。例えば尖閣問題においても、検察のせいにする、そういうひきょうな政府の姿勢、…」と、また翌年六月一日の衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会において「四月十八日に那覇の検察審査会が、昨年九月の、尖閣海域で衝突事件を起こした中国人船長を不起訴処分にした件、これは不起訴処分は不当である、起訴相当とする、こういうふうに議決をしたというのは御存じだと思います。これは国民感覚からいっても、まさに適切な判断であったのではないかというふうに私は思っております。」と発言していると承知するが、確認を求める。



二 安倍内閣として、「衝突事件」に対する当時の菅内閣の対応は、一の下村大臣の過去の発言にあるように、その責任を検察になすりつけた卑怯なものであったと認識しているか。



三 安倍内閣として、「衝突事件」に関し、二〇一一年四月十八日に那覇検察審査会が、中国漁船船長を不起訴とした那覇地検の判断は不当であり、起訴するのが相当であると議決したことは、国民感覚に照らして適切なものであったと認識しているか。



四 下村大臣として、「記事」にある仙谷元長官の発言は真実を反映したものであると認識しているか。



五 下村大臣として、自身が属する安倍内閣が閣議決定した「政府答弁書一」及び「政府答弁書二」の内容は、当時の自身の発言に照らし、真実を反映したものであると認識しているか。


 右質問する。




《答弁》

二〇一〇年九月に尖閣諸島沖で発生した衝突事件に係る現安倍内閣における文部科学大臣の当時の発言等に関する質問に対する答弁書



一について


 平成二十二年十月二十九日の衆議院文部科学委員会及び平成二十三年六月一日の衆議院沖縄及び北方問題に関する特別委員会において、お尋ねのような発言があったことは承知している。



二について



 先の答弁書(平成二十五年十一月十二日内閣衆質一八五第三八号。以下「三八号答弁書」という。)二から四までについて及び先の答弁書(平成二十五年十一月二十二日内閣衆質一八五第六六号。以下「六六号答弁書」という。)三及び四についてでお答えしたとおりである。



三について


 お尋ねは、検察審査会の判断についての評価を問うものであり、政府として答弁することは差し控えたい。



四及び五について


 お尋ねに関し、政府としての認識は、三八号答弁書二から四までについて並びに六六号答弁書三及び四について及び五から七までについてでお答えしたとおりである。お尋ねが下村文部科学大臣個人の認識に関するものであれば、政府としてお答えすることは困難である。