《質問 》

北方四島への邦人の入域に係る閣議了解に関する質問主意書



一九八九年九月十九日、政府は、当時のソビエト連邦のビザ発給を受ける形で北方四島へ入域することを自粛するよう、邦人に要請する閣議了解を決定している。その後も、右了解を基にして、一九九一年十月二十九日、一九九八年四月十七日、一九九九年九月十日にも同趣旨の閣議了解を決定している(以下、「閣議了解」という。)。

右を踏まえ、質問する。



一、 「閣議了解」に反し、ソ連、ロシアのビザ発給を受け、邦人が北方四島に入域した事例があると承知するが、直近三年のうち、そうした事例は何件あったか。


二、 政府、特に外務省として、一、の事例に対してどのような対応を取ってきているか。


三、 「閣議了解」は既に形骸化し、邦人がロシア政府により発給されたビザを受けて北方四島に入域することを抑止するものとは、既になっていないのではないか。外務省の見解如何。


四、 「閣議了解」は、そもそも「北方領土問題は存在しない」というスタンスをとり続けていた旧ソ連時代に最初に決定されたものであるが、ソ連の後継国であるロシアは、自由と民主主義という基本的価値観を我が国と共有する国家である。北方領土問題の存在を認め、その後様々な声明、諸合意により、北方領土は日ロの係争地域であり、両国が話し合いによってそれに係る問題を解決する旨、両国の最高首脳が合意しており、文書でも明確にそのことが担保されている。このことを鑑みる時、我が国として、ソ連に対するものと同様の認識の「閣議了解」を、今後とも維持し続け、更に頑なに邦人に対して北方四島への入域を自粛することを今後とも求め続ける必要はないのではないか。安倍晋三内閣総理大臣の見解如何。


五、 我が国として、今後も「閣議了解」にこだわるのではなく、むしろそれを発展させる意味で、何より北方四島の「非日本化」を食い止めるために、邦人が現在より自由に北方四島に入域できる仕組みにすべきではないか。安倍総理の見解如何。


 右質問する。





《答弁》

北方四島への邦人の入域に係る閣議了解に関する質問に対する答弁書




一及び二について


 外務省としては、我が国国民がロシア連邦の出入域手続に従って北方四島を訪問するといった事案に関する情報を含め必要な情報の収集を行ってきており、具体的事案が判明する場合には、その都度、申入れを行う等適切に対応してきているが、同省が行っている情報収集の内容等について具体的にお答えすることは、今後の情報収集等に支障を来すおそれがあることから、差し控えたい。



三から五までについて


 政府としては、あたかも北方四島に対するロシア連邦の管轄権を前提にしたかのごとき形で我が国国民が北方四島に入域し、又は北方四島における経済活動等に従事することは、北方領土問題に関する我が国の立場とは相容れないと考える。政府としては、御指摘の閣議了解に基づいて、我が国国民の北方領土への入域は、墓参、四島交流及び自由訪問の枠組みの下での訪問のみとし、これら以外の北方領土への入域については、北方領土問題の解決までの間、これを行わないよう、国民の理解と協力を要請してきており、これまで基本的に理解と協力を得られているものと認識している。政府としては、今後とも、御指摘の閣議了解の周知徹底に努めていく所存である。