《質問》



刑事事件の被疑者及び被告人に対する精神鑑定に関する質問主意書


 

 精神障害者による犯罪及び触法精神障害者の処遇が社会問題となっていることを踏まえ、以下のとおり質問する。



一 刑事事件の被疑者及び被告人に対して実施される精神鑑定(以下「精神鑑定」という。)にはどのような種類があるのか、それぞれの趣旨及び法的根拠とともに明らかにされたい。


二 東京地方検察庁には精神鑑定のための精神診断室が設けられていると承知するが、それは事実か。事実とすれば、それはいつ設置されたのか、現在何室あるのか、また、それらが最近五年間で精神鑑定のために使用された回数及び精神鑑定への検察庁職員の立会いの有無を、精神鑑定の種類ごとに明らかにされ、東京地方検察庁における現在の精神鑑定の実施体制について政府の見解を示されたい。


三 東京地方検察庁以外で、「精神診断室」もしくは同様の施設が設けられている地方検察庁はあるか。あればその検察庁の名称と、それぞれいつ設置されたのか、現在何室あるのか、また、それらが過去五年間で精神鑑定のために使用された回数及び精神鑑定への検察庁職員の立会いの有無を、精神鑑定の種類ごとに明らかにされ、東京地方検察庁以外の地方検察庁における現在の精神鑑定の実施体制について政府の見解を示されたい。


四 精神鑑定は拘置所で実施されることがあると承知するが、それは事実か。事実とすれば、過去五年間で精神鑑定が実施されたことのある拘置所の名称と、それぞれの拘置所で過去五年間に実施された精神鑑定の回数、精神鑑定が実施された拘置所内の場所及び精神鑑定への検察庁職員もしくは拘置所職員の立会いの有無を、精神鑑定の種類ごとに明らかにされ、拘置所における現在の精神鑑定の実施体制について政府の見解を示されたい。



 右質問する。



《答弁》


刑事事件の被疑者及び被告人に対する精神鑑定に関する質問に対する答弁書





一について



 お尋ねの精神鑑定については、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第百六十五条に基づき裁判所が学識経験のある者に命じて行われるものと、同法第二百二十三条第一項に基づき検察官等が嘱託して行われるものとがあり、いずれも、被告人又は被疑者が刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十九条の心神喪失者又は心神耗弱者に該当するか否かなど、その心神の状態を明らかにするために実施される。



二及び三について



 精神鑑定を実施するための部屋は、東京地方検察庁本庁においては昭和三十一年に、同地方検察庁立川支部においては平成二十一年にそれぞれ設けられ、現在、それぞれ一室ずつ設けられているものと承知している。これらの部屋が平成二十年度から平成二十四年度までの五年間で精神鑑定のために使用された回数は、東京地方検察庁本庁が千四百六十九回、同地方検察庁立川支部が四十回であり、これらはいずれも検察官等が嘱託して行われる被疑者の精神鑑定であったものと承知している。

 現在、東京地方検察庁以外で、精神鑑定を実施するための部屋を設けている地方検察庁は、横浜地方検察庁、大阪地方検察庁、広島地方検察庁及び福岡地方検察庁であり、大阪地方検察庁においては平成十四年に、広島地方検察庁においては平成二十三年に、福岡地方検察庁においては昭和五十六年にそれぞれ設けられているものと承知しているが、横浜地方検察庁における設置時期は不明である。精神鑑定を実施するための部屋は、現在、横浜地方検察庁、大阪地方検察庁及び福岡地方検察庁にそれぞれ一室ずつ設けられており、広島地方検察庁に二室設けられているものと承知している。これらの部屋が平成二十年度から平成二十四年度までの五年間で精神鑑定のために使用された回数は、横浜地方検察庁が九百四回、大阪地方検察庁が千百九十三回、広島地方検察庁が百二十九回、福岡地方検察庁が四百十五回であり、これらはいずれも検察官等が嘱託して行われる被疑者の精神鑑定であったものと承知している。

 お尋ねの「検察庁職員の立会いの有無」については、網羅的に把握していない。

 検察当局においては、精神鑑定を適切に実施するための体制の充実に努めているものと承知している。



四について



 過去五年間で精神鑑定が実施された拘置所は、東京拘置所、立川拘置所、名古屋拘置所、京都拘置所、大阪拘置所、神戸拘置所、広島拘置所及び福岡拘置所であると承知しているが、その他のお尋ねについては、網羅的に把握していない。

 拘置所における精神鑑定については、刑事施設を適正に管理運営する責務を有する刑事施設の長が、個別具体的な事案に応じ、適切に対応しているものと考えている。