【平成25年6月24日提出 7月2日受領】

《質問》


検察の信頼回復に関する質問主意書




一 過去の質問主意書、委員会において「検察当局において、法と証拠に基づいて、適切に処理したものと考えている。」、「検察当局が、法と証拠に基づいて適切に判断したものと承知している。」、「検察当局は、常に法と証拠に基づき、厳正公平・不偏不党を旨として、適切に対処しているものと承知している。」等の答弁が数多く見受けられるが、検察当局は、常に法と証拠に基づき、厳正公平・不偏不党を旨として、適切に対処しているのか確認を求める。


二 平成二十二年十二月二十日の新任検事辞令交付式における仙谷法務大臣訓示において「検察が国民に信頼される存在であることが不可欠ですが,残念ながら,現在の検察に対する国民の目は極めて厳しいものがあります」、平成二十三年一月十七日の大臣就任に当たっての江田法務大臣訓示では「法務,検察に対する国民からの信頼は著しく損なわれたと言わざるを得ません」、平成二十三年九月五日の大臣就任に当たっての平岡法務大臣訓示では「私自身,この3つの分野についてしっかりと取り組んでいきたいと思っております。まず一つは,法務行政の信頼を取り戻していくこと,これが第一点であります。」、平成二十四年六月四日の滝法務大臣官邸記者会見では「本日,総理が会見で大臣に期待されることとしまして,検察の信頼回復を図ることが大事な役割を担うと発言されました。」、最高検察庁ホームページの検事総長の紹介において小津博司検事総長は「検察に対する国民の信頼が回復されるよう、全力で取り組んでまいります」と各々述べられていると承知するが、確認を求める。


三 一般論として検察当局は、常に法と証拠に基づき、厳正公平・不偏不党を旨として、適切に対処されているのであれば、法務、検察に対する国民からの信頼が著しく損なわれることはないと承知するが、なぜ法務、検察に対する国民からの信頼が著しく損なわれたのか可能な限り説明されたい。


四 検察当局は、一般論として常に法と証拠に基づき、厳正公平・不偏不党を旨として、適切に対処している旨答弁がなされていると承知するが、検察当局における一般論とはいかなる論か説明を求める。


五 平成二十四年十二月二十七日の大臣就任に当たっての谷垣法務大臣訓示において「今回,三年三か月ぶりに自民党に政権が戻りまして,安倍総理から,何か仕事を引き受けてほしいという要請がありましたときに,私は,法務大臣ならお引き受けすることができるというお答えをいたしました。そのように申し上げましたのは,昔,法務大臣をなさった後藤田正晴先生に,あるお話を伺ったことがあったからでございます。そのときに,後藤田先生からは,「谷垣君。結局,国家というのは,四つなんだ。つまり,財政を扱う大蔵。外交を扱う外務。教育を扱う文部。それから法の支配をきちっとする法務。この四つが内閣の要である。」というお話を承りました。これは,後藤田先生の国家観が反映されていて,どなたもがそうおっしゃるかどうか分かりませんし,国の機構の中には,そのときそのときの重要な仕事がいつも発生しますから,そのときどきで大事な仕事があることは言うまでもありませんが,私も後藤田先生がおっしゃるように,この法務行政の分野というのは,国の一番基本的なところを担っている,そういう組織であるという思いを持っておりました。私自身が法律家としてスタートしたという遠い昔の話がございますが,そういう思いで皆さんの仕事を見てきたわけです。そういうことで,今回,国家の一番基礎的な仕事を担っておられる皆さんと御一緒に仕事ができることになったということは,大変うれしいことでして,欣喜雀躍というと少し古い言葉ですが,張り切っているわけです。」と述べられているが、法務省としてこの大臣訓辞をどのように受け止めているか、また大臣の気持ちに応える姿勢を説明されたい。


六 平成二十三年一月十七日の大臣就任に当たっての江田法務大臣訓示において、「法務,検察に対する国民からの信頼は著しく損なわれたと言わざるを得ません。その信頼を回復するため,これまで省を挙げて取り組み,最高検の検証報告書も出され,検察の在り方検討会議の議論も進んでいます。私はこの際,断固とした決意で検察の改革を進め,必ず信頼を取り戻してまいります。そして皆さんには,このようなときだからこそ,愚直に仕事をしていただきたい。つまり法令や服務規律を遵守しつつ,常に国民の目線に立ち,法務行政をしっかりと前進させるという,これを肝に銘じてもらいたい。また,法は単に厳格なだけではなく,温かい血の通ったものでもあります。法の優しさも同時に追求していくということにも留意してもらいたいと思います。」と述べられているが、この江田大臣の訓示に対する法務大臣の見解は如何に。及び「また,法は単に厳格なだけではなく,温かい血の通ったものでもあります。法の優しさも同時に追求していくということにも留意してもらいたいと思います。」の箇所に対する法務省の見解は如何に。


七 平成二十四年六月十九日参議院法務委員会において小川敏夫委員より「私は、検察というもの、これは国の柱、社会の柱だと思うんです。正しい社会を構成する骨格だと思うんです。だから、法務・検察は絶対に正しくなくてはいけないし、いやしくも証拠物を改ざんするとか、うその捜査報告書を作成して裁判所に提出する、あるいは検察審査会に提出するということがあっては絶対にならない。検察の信頼を取り戻すためには、私は事実を全て明らかにして、その責任の所在も明らかにして、原因も明らかにして、そして出直すことが最も必要だというふうに思っておりますが。」との発言に異論はないか法務大臣の見解は如何に。



 右質問する。



《答弁》


検察の信頼回復に関する質問に対する答弁書




一について



 検察当局においては、常に法と証拠に基づき、厳正公平、不偏不党を旨として、刑事事件として取り上げるべきものがあればこれに適切に対処してきたものであり、今後も同様であるものと承知している。



二について



 御指摘の仙谷法務大臣(当時)による訓示、江田法務大臣(当時)による訓示及び平岡法務大臣(当時)による訓示には、それぞれ御指摘のような内容が含まれており、また、最高検察庁のホームページには、御指摘のような内容の検事総長のコメントが掲載されているものと承知している。

 なお、御指摘の滝法務大臣(当時)の記者会見においては、記者から、御指摘のような発言がなされたものと承知している。



三について



 お尋ねの「法務、検察に対する国民からの信頼が著しく損なわれた」理由について一概にお答えすることは困難であるが、法務大臣の下に設けられた「検察の在り方検討会議」が平成二十三年三月に公表した「検察の再生に向けて」と題する提言においては、「大阪地検特捜部における、いわゆる厚労省元局長無罪事件、同事件の主任検察官による証拠隠滅事件、さらには、その上司であった元大阪地検特捜部長及び元同部副部長による犯人隠避事件という一連の事態」により、検察の捜査・公判活動全体への不信を招くことになった旨指摘されている。



四について



 御指摘の「検察当局における一般論」の意味するところが必ずしも明らかではないが、「一般論」とは、個別的・具体的な問題を保留しつつ、一般的な事柄について論ずる議論をいうものと承知している。



五について



 御指摘の訓示は、谷垣法務大臣が、法務行政の重要性を述べたものであり、法務省職員としては、こうした訓示を踏まえ、その職務を誠実に遂行しているところである。



六及び七について



 検察は、刑事司法において重要な役割を担っており、検察官の捜査・公判活動に対し国民から疑念を抱かれることがないよう、常に法と証拠に基づき、適正な捜査・公判活動の徹底に努め、国民の負託に応えていくことが重要であると考えている。

 また、法務省及び検察当局においては、検察の再生及び国民の信頼回復のための多岐にわたる改革に取り組んでいるところであり、引き続きこれらの改革を推進することが重要であると考えている。