【平成25年6月24日提出 7月2日受領】

《質問》



いわゆる取り調べの可視化に関する質問主意書




一 法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会作業分科会において、取り調べの可視化について議論が行われていると承知するが、今日までの分科会での議論に対する法務大臣の見解は如何に。


二 資料「作業分科会における検討(一)」の取り調べの録音・録画制度の第二において、「録音・録画の対象とする範囲は、取調官の一定の裁量に委ねるものとする制度」とあるが、厚生労働省社会・援護局長の村木厚子特別部会委員から「今回の議論の発端が、取り調べや調書に対する信頼性を失わせるような事案が重ねて発生したことであることを考えると、そうした状況を招いた捜査当局に録音・録画の範囲を任せるという第二の案は、そもそも問題外だと考える」と厳しく指摘されているが、法務大臣の見解は如何に。


三 資料「作業分科会における検討(一)」の取り調べの録音・録画制度の第一において、録音・録画義務の例外について極めてあいまいな個々の例外事由が見受けられ、結果、取り調べの可視化制度導入の本来の趣旨に反し、制度が骨抜きになるのではと危惧するが、法務大臣の見解は如何に。


四 本年一月にまとめられた時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想の九頁、制度の対象とする事件等のなかで、「実際に在宅での取り調べの適正さが問題とされた例もある以上」とあるが、当局として把握されている在宅での取り調べの適正さが問題とされている例は何件あるのか、また、個別事案に触れない範囲で結構なので、どのような点が問題とされたのか説明を求める。


五 四の実際に在宅での取り調べの適正さが問題とされた例を法務大臣は承知しているか、また、その問題に対する法務大臣の見解は如何に。


六 制度の対象とする事件等を考慮するうえで、制度化される以上は実際に機能されなければならず、コストや捜査機関の負担も考慮する必要があると考えるが、身柄拘束下、及び在宅での取り調べにおいて、それぞれどのくらいのコストや、どのような捜査機関の実際上の負担が挙げられるのか説明を求める。



 右質問する。



《答弁》


いわゆる取り調べの可視化に関する質問に対する答弁書


一から三まで及び六について



 被疑者の取調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入については、法制審議会に設けられた新時代の刑事司法制度特別部会(以下「特別部会」という。)において、本年一月に取りまとめた「時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想」に基づき、「一定の例外事由を定めつつ、原則として、被疑者取調べの全過程について録音・録画を義務付ける」案及び「録音・録画の対象とする範囲は、取調官の一定の裁量に委ねるものとする」案を念頭に置いて具体的な検討が進められており、御指摘の「制度の対象とする事件等」の検討において考慮すべき「コストや捜査機関の負担」も含め、法務大臣としては、まずは、その議論の状況を見守っていきたいと考えている。



四及び五について



 御指摘の「実際に在宅での取り調べの適正さが問題とされた例もある以上」との記載は、特別部会の構成員がその見識に基づいて表明した意見の内容に関するものであり、そのような「実際に在宅での取り調べの適正さが問題とされた例」については、政府としてお答えする立場にない。なお、在宅の被疑者の取調べの適正さが問題とされた事例については、網羅的に把握しておらず、その件数をお答えすることは困難であるが、連日の長時間にわたる取調べ、体調への配慮を欠く取調べ等が問題とされた事例があるものと承知しており、取調べの適正確保には、十分配慮する必要があると考えている。