【平成25年6月24日提出 7月2日受領】


《質問》


裁判員制度見直しに関する質問主意書




一 平成二十一年九月九日に行われた、裁判員制度に関する検討会第一回会議からのべ十七回会議が行われ、裁判員制度の見直しに関し活発な議論が行われたと承知するが、今まで検討会の委員に、裁判員に選ばれた一般国民の経験者が加わったことがあるか。


二 今まで検討会において、裁判員に選ばれた一般国民の経験者から意見聴取を行ったことがあるか、また、行われたことがないのであれば、この先、プライバシー保護の上、意見聴取を行う予定はあるか。


三 裁判員裁判の評議において、裁判官が結論を誘導することは絶対に起こらないと限らないことを踏まえ、評議の妥当性、内容を裁判員のプライバシー保護の上、国民が検証できる制度を検討すべきと考えるが、法務大臣の見解は如何に。


四 裁判員は評議の内容を生涯、家族にも話せない等、裁判員に対する守秘義務が重すぎるとの意見があると承知するが、加えて、裁判官には守秘義務違反の罰則がないのに、一般国民から選ばれた裁判員、及び経験者には罰則があるのは事実か、また事実であればその理由を説明されたい。



 右質問する。



《答弁》


裁判員制度見直しに関する質問に対する答弁書


一について



 平成二十一年九月に法務省に設けられた有識者から成る「裁判員制度に関する検討会」(以下「検討会」という。)の委員に「裁判員に選ばれた一般国民の経験者」が加わったことはない。



二について



 検討会においては、「裁判員に選ばれた一般国民の経験者」からの意見聴取が行われたことはない。

 しかしながら、検討会では、各委員に対し、最高裁判所による裁判員等経験者に対するアンケート調査の結果が公表される都度、これを提供するなどし、裁判員等経験者の意見も踏まえた議論がなされたところである。

 なお、検討会の活動は本年六月に行われた第十八回会合をもって終了しており、今後、検討会において意見聴取が行われる予定はない。



三について



 裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第七十五条第一項において、「合議体でする裁判の評議は、これを公行しない。」と規定され、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成十六年法律第六十三号。以下「裁判員法」という。)第七十条第一項において、裁判員が参加し、又は傍聴を許された評議の秘密についてはこれを漏らしてはならないと規定されているが、これらは、他人のプライバシーを保護するとともに、裁判の公正さや裁判への信頼を確保し、評議における自由な意見表明を保障するなどのために必要なものである。

 お尋ねの「評議の妥当性、内容を裁判員のプライバシー保護の上、国民が検証できる制度」がいかなるものを指すのか明らかではないが、いずれにせよ、これらの規定の趣旨を踏まえつつ、検討会における議論の結果を真摯に受け止め、所要の措置につき、検討してまいりたい。



四について



 裁判官については、裁判所法第七十五条第二項において「評議の経過並びに各裁判官の意見及びその多少の数については、この法律に特別の定がない限り、秘密を守らなければならない。」と規定されており、同項の規定に違反した場合の罰則は定められていない。

 他方、裁判員については裁判員法第百八条第一項において、裁判員の職にあった者については同条第二項及び第三項において、それぞれ評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らす行為に対する罰則が規定されている。

 これは、裁判官については、高い職業倫理に基づく行動が期待でき、評議の秘密等を担保する措置として裁判所法及び裁判官分限法(昭和二十二年法律第百二十七号)による懲戒並びに裁判官弾劾法(昭和二十二年法律第百三十七号)による罷免の制度が設けられていることから、必ずしも、罰則を設ける必要はないと考えられる一方、裁判員等については、事件ごとに選任されるものであり、罰則を設けるほかに評議の秘密等を担保する措置が考えられないことによるものである。