アルフォンス・ミュシャと私 | 「身体と知性を磨こう」90秒の読むサプリ

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心技体のバランスが整ってはじめて安定感が生まれるのではないでしょうか?身体と知性を磨いて楽しい毎日を過ごしましょう。


  ミュシャ展がBunkamuraで7/13から開催されるのをとても楽しみにしている鶴田貴子です。1世紀以上も経ていながらマンガチックで一周回って新しく感じられますね!


  フランスの女優、サラ・ベルナールの絵など誰もが一度は目にしたことがあると思います。下の絵がサラ・ベルナールです。



  今日の話は私のミュシャの思い出です。



  アルフォンス・ミュシャは大好きな画家の1人です。ミュシャの絵をはじめて見たのは1980年、夏でした。



  その頃、中学生だった私は日本画を習いに横田忠之先生の教室に通っていました。広いアトリエ兼絵画教室に入ると油絵具用のテレピン油や日本画の顔料をとく膠(にかわ)の匂いがしました。中には書きかけの大きな絵や沢山の下絵、絵の具、画集があり、無造作だけど作業しやすい場所だったのを覚えています。



  おかっぱに揃えた髪に黒のベレー帽をかぶった横田先生が「こんな絵はなかなかモダンでいいんだよ。参考にしてどんどんかいてみるといいよ。これからは古典的な日本画を描いていては駄目だから。面白いものをどんどん取り入れなさいよ」と言って渡してくれたのが、ミュシャの画集でした。



当時70歳を越えていた先生から手渡されたその絵は、予想とはちょっと違うものでした。
その当時の私は墨で竹や笹の描き方を習っていたので、そうした水墨画とミュシャは遠くかけ離れたものでした。



  優しくて綺麗な顔、肉感的な体(その時、忘れもしませんが、エミール・ゾラの「ナナ」を読んでいたので、ナナはミュシャの絵のような女性だろうとすぐさま連想しました)、中間色の美しさ、人物の周りの縁取り、平面的でマンガチック。
全てが私にとって新鮮で衝撃的でしたし、油絵とも日本画とも違うイラスト的な絵にワクワクしました。



  後から調べて驚いたのはなんと19世紀から20世紀の作品だったということで、古さを感じさせない画風だと思いました。ポスターなどの広告として使われていたというので馴染みやすい、一般受けする感じなのも頷けました。



  中学生だった私が見て、ファンタジックでおしゃれでした。大人になったらミュシャの絵のような女性になりたい、と思ってました。実際は浮世絵に近い和顔なんですけどね。でも、いつ見ても素敵な絵だと思いますし、Bunkamuraの展覧会も見に行きたいです。ミュシャが描く女性はいつまでも私の理想像です。



  ミュシャの絵を見ると、ミュシャへの憧れと私に絵を教えてくれた横田先生のことを思い出します。私は今でもたまに絵筆を握っていますが、今はもうない横田先生のアトリエが懐かしくて堪らなくなります。