『黙って微笑む美しい少女が一番怖い』from 観用少女 | 仕事とマンガと心理学

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心理学でマンガをみるとオモシロいので、それを伝えたくて
ぐだぐだお送りしますので、楽しんでくださいね!

こんにちは、プロフェッショナル心理カウンセラーの織田です。

今日は、こちらの作品を。

とっても好きな作品なんです、ちょっとマイナーですが。

 

 

「観用少女(プランツドール)」

 

黙って微笑むだけの生きているお人形、

観用少女(プランツドール)と

ドールにかかわる人々の物語。

 

とても高価な「観用少女」。

感覚としては生きて動く少女型の植物みたいな感じかな。

一日2回、ミルクをあたためてあげること。

そして、愛してあげること。

これが少女が必要とする全てです。

 

物語はオムニバス形式で

基本的には物語同士の連携はありません。

ドールも同じドールは登場しません。

 

あくまで美しく、あくまで語らず。

ドールはただ、美しく微笑むだけ。

そのドールを取り巻く人間達の

悲喜劇というか喜悲劇が

とても面白く・・・時にとても悲しくて。

 

全体的にあやしい感じが漂う

ちょっと面白い物語なんですけれどね。

 

美しいこの観用少女、

実はえり好みします。

望まれても、自分が気に入らないと

目を覚まさず寝てばかり。

だから、高価とはいえ、

お金にあかせて買うことは出来ないのです。

つまり、買う側が買われる側に

気に入られないといけない。・・・

 

で、買ったら今度は

きちんと良質の愛情を注がないといけないわけです。

きちんと愛されないドールは

枯れてしまうのです。

 

恐ろしく高く、かつ、恐ろしく面倒くさい。

そして、何をしてくれるかといえば

「極上の笑み」のみ。

でも、その為なら何でもする~!という

まあ、ちょっと倒錯的な物語なんですが。

 

意味深なタイトルですよねえ。

観る用の少女・・・

ただ観るだけで何の役にもたたない。

でも、それはもしかしたら

人が一番手に入れたいものなのかもしれない。

 

それは、愛すべき存在。

 

愛されたいと願うよりも

愛したいと思うほうが

人は滅びるのかもしれない

 

と思ったり

 

愛されたいと願うよりも

愛したいと思ったほうが

人は幸せになれるのかもしれない

 

と思ったり。

 

純粋に、ただひたすら純粋に

少女を大事に大事に愛した青年の物語。

初めて何かを欲しいと思いながら

結局自分の枠を超えられなかったジゴロ。

滅びる瞬間の美しさを恐れながら求めずには入られなかった男。

決して年老いず、美しいままで入るドールに嫉妬する女。

 

観用少女が美しければ美しいほど

あやしい雰囲気が漂っていて

人が人らしく生きるってなんだろうとも思うし、

観用少女は黙って笑っているだけなんだけれど

何でもわかっているような雰囲気でもあり

何でもお見通しのような雰囲気でもあり

何にも分かっていないような感じもあり

 

何も言わないから。

ただ、愛されることを待っているだけだから。

だから、周囲は余計にきりきり、あたふた

するんでしょうね。

 

この物語もあれこれ語ってみたいテーマが

盛りだくさんなんですが

一つだけ。

 

やたらと高価いこの観用少女

飲むミルクも高価い

週に一度の肥料も高価い

着せるもの、身につけるもの

全て高価い高価い。

で、少女が返してくれるのは

 

そのご主人だけに向ける

極上の笑み。

それだけで、その笑みを向けられたご主人は

それだけで天国にも昇る

気持ちになるそうな。

 

少女の愛は、とても高価な

「無償の愛」。

すごく矛盾しているけれど

なぜかそんな言葉が思い浮かぶ。

 

少女は「観られるだけ」の存在であり

「観るだけ」の存在。

 

だから、人は鏡の前に立つよりも

自分のことを思い知らされるのかもしれません。

 

観る用?

観られる用?

 

観用少女、ぜひ一度ご一読を。

 

http://www.idear.co.jp/art-therapy/