『自己実現って、何かにナルことじゃないんだよね』from おいしい関係 | 仕事とマンガと心理学

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心理カウンセラーが語るマンガと小説についてのブログです。
心理学でマンガをみるとオモシロいので、それを伝えたくて
ぐだぐだお送りしますので、楽しんでくださいね!

こんにちは、プロフェッショナル心理カウンセラーの織田です。

 

本日はこのマンガでいってみましょう。

 

 

「おいしい関係」

 

作者の槇村さとるさんという方の作品は

「自己実現」がよくテーマになっていて

その実現は、才能に支えられているものも多いんだけど

少女漫画のお約束

自分に対するコンプレックス、というのは

ちゃんと忘れずくっつけてくれる。

 

で、結構努力型なんですよね。

だから感情移入もできるんですけれど

その中でも私は

この作品が好きです。

 

美味しそう^^)っていうのもあるんですけれど

 

コックさんをめざす

百恵さんの物語。

この百恵さんが恋しているのが

織田さんという私と同じ苗字の料理人。

天才的な料理人なんだけれど

性格が偏屈で分かりにくい人。

 

でも、このちょっと影のある織田さんに

百恵さんはどんどん惹かれていくのでした。・・・

 

と、物語的・人物設定的には

少女漫画の王道なんですけれどね。

 

この百恵さんの恋のライバルは

やり手のフードプロデューサーの今村さん。

関係ないけど私のいとことおんなじ苗字。

この今村さんは

やり手だし、美人だし

性格もまま、よし。

強力なライバルです。

 

これも王道。

 

で、最初、織田さんは今村さんとくっつきまして

同棲してます。

「悲しみの種類が同じだから・・・」とつぶやく今村さん。

彼女は、自分の母親との深刻な葛藤をかかえていて

深い自己否定観に囚われている人。

 

自己実現して、自信に満ちていて

明るくて仕事も上手くいっていて

彼とは一緒に住んでいて

それでも、彼女は百恵さんのことが

どうしても気になっちゃう。

 

百恵さんは、たっぷり愛されて育った人。

いろんなことで落ち込むし

周囲の人の深い悲しみやトラウマに直面して

けっこうめげる。

役に立てない自己嫌悪とか

いくじなしの自分とか

沢山泣くんだけれど

最終的には逃げない人なんですよね。

 

人から逃げない人。

これは、とても強い、と思います。

メンタルの強さっていろいろだけれど

人から逃げないのは

とても強い。

だって、人は一番人によって影響されるものだから。

 

今村さんの「悲しみの種類が同じ」という言葉に

百恵さんをいろんな意味で支える

高橋さんという人がぽそりと言います。

「喜びの種類が同じほうがいいと思うけど」

 

記憶に頼っているので

ただしい台詞じゃないかもしれないけれど

 

これは、刺さった言葉ですねえ。

刺さったって、そう、ワタクシ自身の心に。

 

織田さんも

今村さんも

深い孤独に苦しんだ人。

そして、自分の力で肯定感を見出していく人たち。

 

生きる意味を必死で問う彼らが

「食」を生業としていくことが

意味深い比喩になって

作品を貫きます。

 

食べて、生きていくものですものね、人って。

 

そういう人々の様々な葛藤の中で

百恵さんの葛藤は

「実現していくこと」へのいろんな道のり。

真剣に何かをめざしていくからこそ

はじめて出会う色んなこと、様々な気持ち。

それを乗り越えて

百恵さんは自分の道を歩み続ける。

 

何で悩むか

何で葛藤するか

それは、人それぞれだけれど

何かの職業に就くこととか

何かを手に入れることが

自己実現じゃない。

 

私は生きている

私はこの人生を愛している

 

それをきちんと前を向いて言えること。

それが、自己実現の本質ではないかなと

この作品を読んでいると思うのです。

 

強い心とか自己実現って

メンタルトレーニングによく出てくるテーマですが

やわらかくわかりやすく

強い心とか、自己実現ってなんだろうってヒントが欲しい時には

ぜひ読んでみて下さいね。