『オールドワイズマンとシャドウの関係の主役の二人』 from からくりサーカス | 仕事とマンガと心理学

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心理カウンセラーが語るマンガと小説についてのブログです。
心理学でマンガをみるとオモシロいので、それを伝えたくて
ぐだぐだお送りしますので、楽しんでくださいね!

こんにちは、心理カウンセラーの織田です。

 

強いメンタルとか

負けないココロとか

そういうフレーズは

私たちメンタルトレーナーの

お約束の言葉でもあるんですが

 

いわゆる「少年漫画」の永遠のテーマでも

ありますよねえ。

 

長いのと物語がかなり錯綜しているので

藤田氏のファンの人は、これの前の「うしおととら」を

挙げる人も多いですが

私は断然こちら。

 

少年 勝(マサル)が、壮大なタクラミの中で

成長する物語、とまとめてもいいんですが

この勝を助ける鳴海(ナルミ)が

私は、勝に対するシャドウ(影)の存在に見えて

仕方がないんですよねえ。

 

どちらも、言ってみれば

「正義の味方」で、特に勝にとっては

ナルミは命の恩人であり

強さを教えてくれた心の師匠であり

シャドウならぬオールドワイズマンそのものなんですが。

 

あ、このシャドウとか

オールドワイズマンとかいうのは

ユング心理学で語られる象徴の話です。

 

オールドワイズマンは、日本語訳では「老賢人」。

助言や忠告を与えて、主人公を正しい方向へ導いてくれる存在。
男性にとっての「成長の最終的到達点」とも表現され、
「父親元型」であり、経験の知恵や理性の象徴とされています。

 

シャドウは、影。

認めたくないもの、否定してきたもの、

受け入れられない現実や価値観、

社会的秩序や規範に反するもの、

生きられなかった反面・半面。

そんな象徴です。

 

物語の中のナルミの言葉をひろっていけば

元々、すごく意識が高いとか

ものすごく正義感が強いとかではなかったようですが

勝に出会い、

しろがねと名乗る謎の女性とともに

勝を守るために戦い、

そのために瀕死の重傷を負って

記憶もなくして

自動人形との戦いの日々の中に

変わっていくのです。

 

これが、どんどんシャドウな感じに

変わっていくんですよねえ。

まあ、事情が、これでもか!というぐらいに

入り組んでいますし。

 

とりあえず、作品の体裁としては

少年の勝君が主人公(だって少年誌だし)。

怒りや恨み、憎しみや絶望を糧に

もがき苦しみながら前進しようとしているのは

一見主人公の勝のように見えるけれど

本当はナルミじゃないのかな、と

思うんですよね。

 

この藤田和日郎さんという作家さんは

もーーう、主人公たちを

これでもか!というぐらいに苦しめる作家さんで

でもそれが独特の熱さと緊張感を

生み出してくれてもいたりするんですけれど

 

絶望の暗いトンネルの向こうに

決して消えることのない希望という灯り

どこまで苦しんでもそれを見失うことなく

進み続けていけるのかと

作者が自分の生み出したキャラに

突きつけているようで

 

どっぷりと暗い暗い時間を

戦い続けたその後に

明るい日の下に立つナルミの笑顔は

うん、統合だ。

で、勝くんの方がシャドウの役割を

引き受けた感じだなあ。

 

とにかく、ややこしく愛憎がからみ

涙とユーモアも満載で

読み応えのある作品が好きな人には

お勧めです。

ただし、一気読みしないとダレるかも。