宅地建物取引士=不動産仲介業者は建物のプロなのか? | エスクローおじさんのブログ

宅地建物取引士=不動産仲介業者は建物のプロなのか?

一般の方からすると宅地建物取引業者は、宅地と建物のプロだと思われるかもしれません。


実際仲介したり販売するのは宅地と建物であって、どちらにも精通しているからこそ「宅地建物取引士」という資格があるはずです。


仮に購入した住宅に隠れた欠陥=瑕疵(かし)が発見されれば、宅地建物取引士の調査不足ではないかと思いたくなるでしょう。


しかし、過去の裁判の判例を見るとそうなってはいません。


「仲介者は契約自体の成立を仲介するもので、それ以上に物件の性状等について調査等を行うべき立場にはない。」東京地裁平成13.11.14


「宅地建物取引業者が建物の物理的瑕疵の存否を調査する専門家でない以上、建物に適した性状、機能を備えているかについて調査義務を負わない。」東京地裁平成20.5.20


「仲介業者は鑑定人ではないから、原則として物件の状況、隠れた瑕疵の有無、瑕疵の内容についてまで調査すべき義務を負っていない。」大阪地裁平成12.3.23


など枚挙に暇はありません。


つまり建物について詳しく調査する作業は、仲介業者ではなく別の人がやらないといけないということなのです。


ここに来てようやく国も建物診断=ホームインスペクションの重要性に気づき、特に中古住宅の売買にはホームインスペクションを推奨するようになりました。


しかし、このホームインスペクションを宅建業者がやろうという動きも出ています。


宅建業者は建物の調査者ではないという判例があるのなら、今から勉強してホームインスペクションをするより、建物の専門家に任せた方がお客様のために良いのではないかと考えますが、いかがでしょうか?


せっかく国が推奨している新ビジネスなので、自分で儲けたいと思うのは山々ですが。


これからしばらくホームインスペクションも、いろいろな業種の人が参入し、品質勝負になるまでには少々時間がかかると思います。