膝が軽い
促すように凝視してた瞳が椅子にかけるのを見極め
とたんに私の膝は椅子の延長だ
自由意志で選択したはずの温もりに自由を剥奪され続けた日常
じんわりと温かい
なぜこんなにもじんわりと温かいのだろうと不思議に思う
発熱器、カイロ、風呂
それより遥かに低いはずの温度
私の体温と2度ほども違わないはずなのになぜこんなにもじんわりと温かいのだろう
その温もりが伝わるとすぐに押し寄せる
重み
3キロに満たないその塊の何という重さだろう
満足しながらも全身で監視を怠ることのない鋭い感覚も伝わる
動くべからず
それを構築する全ての細胞から放たれる警報だ
嘆願など試みたことなど一度でもあったろうか
全ては司令であり強制でありつまりは一方的かつ絶対的に投じられる理なのだ
膝が軽い
私を支配し続けた理から解放された膝の軽さに凍るような静けさが募る
窓を拭こう
曇りない光りで部屋を充たそう