元朝日新聞記者の発言に関して。 | H i Bi no A T O

H i Bi no A T O

風景写真家 高橋智裕のBLOG
tomohirotakahashi.com

ある元朝日新聞記者が、Twitter上で南相馬市の被災者に対して発言している件。
まず、この被災者は、別に取材をしてくれと頼んでいない。
と、いうより、ずっとこの被災者は取材を拒否し続けている。
ずっと思っていたことで、私も取材をされていた時に感じたことだが、あまりに不勉強なジャーナリストや記者が多過ぎだ。
福島に取材に入る際、もうすでに偏見で福島を観ていて、どうにか、毒を吐けるネタを見つけてやろう、福島の人たちは哀しみに暮れている、笑っているのを観るとおかしい、衝撃的な場面が欲しい・・・等、今ある事実を述べる立場にある、伝えることを仕事にしている者が、取材に入る前から冷静な視点で福島を捉えることが出来なくなっている。
私は、いわき市を中心に東日本大震災の被災地を数多く取材や撮影をしているが、被災者は、丁寧に話してくれたり、案内してくれたりしている。
取材を拒む人たちも、「ごめんね」とか、「俺はいいから」とか、言うだけで身の危険を感じることなど皆無だった。
「わざわざ自腹で取材に来てこの仕打ち」というような想いや態度で被災地に行ったら、それは誰も取材になど応じないし、遺族としては腹が立つのが当たり前だ。
マスコミやジャーナリスト、フォトグラファーは、特別な存在でもなければ、正義の存在でもない。
そして、恩着せがましく取材してやるよ、みたいな態度は言語道断だ。
フリーだから何でも有りでもない。
まず、伝える側が、態度を改め被災者と寄り添うように活動していかなければ、正しいことなど伝えられない。
地元のマスコミは、多くがそれをしている。何度も足げ無く通い、信頼関係を構築し、何度も何度も事実確認をし、そして伝えている。それでも、取材拒否をされることがあるというのに、1日2日被災地に入っただけで、本質など見えるわけがない。
東京のマスコミに属する私の仲間は、頭を真っ白にして、被災者と話し、被災地を観、今ある事実を伝えようとしているし、それが出来なかったら伝えないという立場ととっている。
自分の思いどおりにならないからと、悪態をつくなど、取材活動をする前に、人間としてもっと学んで欲しいと思う。
そして、元記者の言葉を鵜呑みにし、くっついてくる多くの匿名者。
これが、自分がもし対象だったとしたら同じことが言えるのか?
震災で、これでもかというくらい打ちのめされ、傷ついている人たちに、こういったことで、更にまた深傷を負わせるようなことをしてはならない。
これは映画でもドラマでもなく、同じ人間が局面している、今の姿だ。
もう一度、日本人すべてが、しっかり考えなければならない問題だ。