小説 5 | 高木豊オフィシャルブログ「感動の裏には努力が存在する!」Powered by Ameba

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新年会は、予定通り19時から、監督である勇介の挨拶で始まった。
こういった会は、決まって厳かな礼儀正しく背筋を伸ばした状態で進む。
勇介にとって、けして嫌いな雰囲気ではなかったが、今年に限っては、早く場が崩れる事を望んでいた。
胡座をかき、背筋を伸ばした体制は、なんとも苦しく苦痛そのものであった。
野球界は縦社会なので、後輩達が、監督始め、先輩達にお酌を終えなければ余興など始まる事は無い。
その時が、勇介には待ち遠しかった。
待っていると、小出が立ち上がり
「皆さん、忘年会の時は、失礼しました」
「今回は、笑ってもらいます」
暮れの出し物は、全く受けず滑りまくりだった。
おもむろに裸になり、大事な部分には、灰皿を当てガムテープ固定している。
颯爽と庭に飛び降りた。
今度は、お尻にティッシュを挟んでいる。
その姿でも、十分笑えるのだが、同僚に火をつけてもらい走り出した。
「こんな寒いのに、蛍がやってきました~」
その姿を見て、会は一気に盛り上がりを見せた。
勇介も、腹を抱えて笑ったが、「いつ以来だろう、こんなに笑ったのは」
そう思いながら、小出には感謝すらした。
おかげで、体制を楽に出来た事も‥!
会も、中締めの時間を迎えた。
「みんな聞いてくれ」
勇介が立ち上がる。
「言い忘れていたが、キャンプには高樹が来るからな、楽しみに」
そう言って、勇介は帰り支度を始めた。
その場に残るもの、二次会に行くもの様々である。
「監督、二次会どうされますか?」
とチームのキャプテン坂本が声を掛けて来た。
今まで、酒の誘いを断った事は無い。
しかし、付き合うだけの体力に自信が持てなかった。
「若い奴らで行ってこい、領収書は持ってこいよ」
そう言って笑ってみせたが、二次会を断る監督を見て、坂本は驚きを隠せない感じだった。
「妻も迎えに来てるし、今日は帰るよ」
実は、妻に迎えを電話で頼んでおいたのだ。
誘いは必ずある。
断る口実として、妻の迎えなら断りやすいし、誘いが強引にならない事を、勇介は計算していた。
「お帰りなさい」
「あぁ、つかれたよ、すまんな」
会話は、家に着くまでこれだけだった。
妻の佳子は、察っした。
よっぽど体調が悪いんだなと・・・
勇介には、家に帰ったら試したい事があった。
「おぃ、ビールをくれないか」
宴会で飲んだビールは、流し込んだだけで、味など覚えてもいない。
一口飲むと、今までに味わった事の無いくらいの不味さだ。
「やはり、背中など関係ない、どこかに異常がある」
ビールもまともに呑めなくなる寂しさと、見えない何かが襲って来ている恐怖を、ビールの味から察する事は、勇介にとって耐え難い事だった。
高樹が来る。
その時までには何とかしなくては・・・!


どうでしょうか?
次は、キャンプ突入です。
6では、勇介が大変な事に・・・!
お楽しみにね。