泉秀樹さんの『商売繁盛・老舗のしきたり』を読みました。


PHP新書から2008年に出版されています。


三越の三井高利、伊藤忠商事や丸紅の伊藤忠兵衛、大丸の下村彦右衛門など数多くの老舗経営者を紹介しています。



大丸の創業者の下村彦右衛門は、「義を先にし、利を後にする者は栄える」という言葉を店是にしました。


中国の古典の『荀子』の栄辱編から引用した言葉であるそうです。


下村彦右衛門は、最初に伏見で「大文字屋」を開業して成功しました。


そして、江戸への進出計画を練り始めた時に一計を案じました。


取引先の江戸の業者に京呉服を送る時に呉服と一緒に何枚もの大きな風呂敷を詰めました。


その風呂敷には、鮮やかな萌黄色に大文字屋の商標の大に◯のマークが白く大きく染め抜かれていました。




大きく使いやすい風呂敷であったため、取引先の使用人が重宝して、大文字屋の風呂敷に荷を包んで背中に背負って江戸中を走りまわったそうです。


江戸店を開店する5年前のことです。


おかげで開店時には、大文字屋の名前はすでに江戸の人々に広く知れわたっていました。


人の役に立つと同時に自分の店の宣伝にもなるPR戦略でした。


他にもにわか雨が降って困っている客に無料で傘を貸し出す「大丸貸傘」は風呂敷を上回る宣伝効果をもたらしました。


風呂敷と同じように大に◯マークが描かれていたそうです。


お金をかけずに宣伝をする昔の人の知恵に驚きます。