12月にテレビで紹介されていたこのコンサートだが、これが創設された頃はワクワクしてテレビ中継を観ていたものだけど、私の興味の中心が歌曲や宗教合唱曲に移ったあとは観なくなっていた。12月の紹介を見て、「正月なのだからたまにはにぎにぎしいアリアの歌合戦を聴くのもいいか」と興味を喚起されチケットの販売状況を調べてみたら、意外にお安い値建ての席(三階席)に空きがあった。安い席には舞台が見にくい、音が聞こえにくい、などのデメリットが付き物だけれど、東京文化会館の五階席でも結構聞こえるのだから、NHKホールの3階席なら何とか聞こえるのではないか、もし良くない席だったとしても割りと名の通ったイベントに居合わせることができるだけでも楽しそうじゃないか、などと考えて安い席を購入した。
実際に着席してみると、舞台は谷底に見える、という感じだった。舞台奥から合唱、オーケストラ(沼尻竜典指揮、東フィル)、歌手が歌い演技する舞台の順に配置されており、歌手の声はビンビン響いてくるもののオケは上澄みのように控えめな音量、合唱は大勢いるのに良く聞こえない。たぶん舞台奥に行くほど低くなっている天井のせいだろう。一階席であれば後方の席でも、奥の合唱の声が真っ直ぐ届くのだろうと思う。三階席ではオーケストラによるワルキューレの騎行でさえ上澄みの音のように芯のない音として届いてきた。しかしこういうのは予め有り得ることとして考えていたので問題ない。十分楽しむことができた。それにしてもヘンデルからイタリアオペラ、ワーグナーまで、いいとこ取りの名曲集を次々にそつなく演奏するプロのオーケストラというのは流石だ。
演奏会は真ん中にイル・デーブの演奏を挟んで前半と後半に分かれていたけれど休憩なし。私は後半でボエームを歌った砂川涼子とサンサーンスを歌った藤村実穂子が抑えるところをきちんと抑えていて素晴らしいと思った。でも全体的に見ると、クライマックスに自らを投げうつように声を爆発させる人にブラボーが多かったようだ。