「エイラク」は第70話で完結している。その後、番外編となる「金枝玉葉」が6話分作られたが、「放送禁止」の影響もあり、その後の続編はないようだ。中国共産党の検閲部隊が「エイラク」を嫌った理由はいくつかあるが、その代表は「宗教」だと思う。

 

 

 実は、清朝の満州族が信奉した宗教は意外にもチベット仏教だ。映画「ラストエンペラー」ではチベット仏教僧が多数登場するが、「エイラク」では皇太后が信仰する宗教がチベット仏教。その関係で、瓔珞が刺繍するのは仏教の経典だったりする。

 

 

 一方、中国共産党では「宗教は麻薬(アヘン)」と定義しており、共産党的価値観においては「宗教は害悪」でしかない。だから当然、「宗教は害悪」として報じられるべきであって「エイラク」的放送は許容できないのだろう。

 

 

 日本人の多くは無関心だが、中国国内においては「宗教弾圧」が今も苛烈に行われている。チベット仏教の総本山であるチベット自治区をはじめ、イスラム教徒のウィグル自治区でも宗教者は弾圧されている。中国国内ではキリスト教徒が迫害されているし、法輪功という団体も邪教指定されて、多くの信者(学習者)が逮捕・殺害されている。中国とは、「個人の信教の自由を認めない」国なのだ。

 

 

 そんな中国で「エイラク」が制作されたのは奇跡と呼んでもよい。しかしいくら中国共産党が「エイラク」を放送禁止にしても、すでに世界中に「エイラク」の映像はある。「自由を抑圧する者はいずれ滅びる」。私は、中国が新しい国に生まれ変わって、中国の人々が自由に「エイラク」を見れる日が来ることを心から願う。