しんゆりシアターミュージカル公演【のっぽの古時計】 | たかびの自己満観劇ブログ

しんゆりシアターミュージカル公演【のっぽの古時計】を鑑賞してきました。

ミュージカルの鑑賞は、劇団東少【アルプスの少女ハイジ】以来、実に2年振り…随分久し振りになってしまったなぁ。

 

 劇場は新百合ヶ丘駅からすぐのところにある、川崎市アートセンターアルテリオ小劇場。

座席数160あるかないかの中小規模の劇場で、列数(10列程度)のわりにしっかりと高さがあり、見易い劇場でした。 

その中でも、役者目線より少し高い位置のど真ん中のお席を用意して頂けたので、その距離感と見易さと言ったらもう。 

 

さて、のっぽの古時計と聞くと、誰もが思い浮かべるのが【大きな古時計】 あまりに有名なこの楽曲の誕生にまつわる物語を描いた作品で、ストーリーなどは世界中に知られるものそのまま。 

 

のちに【大きな古時計】を作曲する作曲家(ヘンリー・クレイ・ワーク)率いる楽団が、物語の舞台であるイギリスの【ジョージ・ホテル】に滞在中に、そのホテルにあった古時計が『11時5分』で止まったままになっている理由を、ホテルの女性亭主(エレン)に尋ねるところから始まる物語。 

 

ジョージ・ホテルも11時5分で止まったままの古時計も、イギリスに実在するそうで、この楽曲が作られた時のエピソードも、歌に込められたストーリーも実話だという事は知らなかった、というより考えたことすらなかった。 

 

ヘンリーがストーリーテラーとなって、良く知られる歌詞の通りに物語が展開していく感じ。

 

 『良く知られる歌詞』自体が日本人によって後年作られたものだし、原典からの意訳も多少はあるだろうから、この歌詞の通りに展開していく物語は、ひょっとして海外に存在する物語とは若干違うかも知れません。 

 

例えば、100年いつも動いていた…は原典だと90年の筈だしね。

 

ホテルを共同経営していたのは、この作品にも出てきた通り『ジェンキンズ兄弟』という兄弟であることは間違いなさそうだけど、その兄弟の名前が『ジョージ』と『マイケル』だったという記事はネットで探しても見付からないし、繋げると『ジョージ・マイケル』(Wham!のメンバー)になるし(笑)

 

まぁ作曲家のヘンリー・クレイ・ワーク以外の登場人物名はフィクションなのかもなぁ。

 

"お爺さんの生まれた朝に買ってきた時計さ"

"綺麗な花嫁やってきた その日も動いてた"

"嬉しいことも悲しいことも みな知ってる時計さ"

"真夜中にベルがなったおじいさんの時計 お別れの時が来たのをみなに教えたのさ"

 

 これらの歌詞にある物語が、エレンの語り(現在)と回想シーン(6年前)を交互に繰り返し、時には現在のエレンが回想シーンへブレイクスルーして、回想シーンの中のエレン(現在のエレンとは別の役者さん)の代わりに6年前の台詞を喋ったりしながら紡がれていく。 

 

有名な歌ではあるけど、常日頃から歌詞を完璧に覚えてるし頭の中に常に鳴り響いてる!…のかと言えば、まぁ普通はそんなことないよね。

 

なので、物語を見ながら、あぁそう言えばこんな歌詞だった、あの歌詞にはこんなシーンが描かれていたのか、真夜中にベルがなった…11時5分は23時5分だったのか、と歌詞を思い出しながら見ていった感じ。

 

ジョージ・ホテルに時計がやってきた日にジョージが生まれ、ジョージ&マイケルの成長、兄弟の喧嘩別れと仲直りを見守り、ジョージとエレンの結婚の時に祝福の鐘を鳴らした時計。

 

旅行者に話題になるほど正確だったはずの時計が弟マイケルのコレラ死を境に大幅に遅れ、ジョージの死を知らせる鐘を打って止まった…この時計には命が宿っていたんだ…という物語に感銘を受けてヘンリーがこれを歌にしようと決意する。

 

一幕ではこうした、"あったら素敵だな"、"例え偶然が重なっただけだとしても、ありそうな話だな"、という物語を展開していったのだけど。 

 

それが二幕になると早々に、時計そのものが人間化して出てきてしまう"ないな…"というファンタジー展開に…。

だけど、ジョージとエレンが知り合う前の、エレンが知らない物語を、時計の記憶として補完させる為に、なぜ時計が命を宿したのか、それをヘンリーに伝える為にこの演出は必要だったんだろうな。

 

エレンがこの家に来る前の、エレンが語る事がなかった"記憶"を、時計から聞いた"記憶"を受けてヘンリーが完成させた曲を、改めてその場で歌うんだけど、歌詞が、歌声が沁みる…めっちゃ沁みる…。

 

止まったままの時計に旅行者が激怒し、よくある『古いものを壊して新しいものを売りつける輩』が登場し追い込まれるも、エレンは気丈に時計を守り抜き、この時計の物語を伝えていく事を誓う。

最後に全員でもう一度【大きな古時計】をゴージャスなアレンジと綺麗なコーラスで聞かせ、そしてその大時計が今でも現存して物語を語り継いでいる事を述べて幕。

最後に歌われた曲の歌詞に"心が命を宿らせる 物に命が宿るとき 心が満ちている"というのがあったけど、物語の一番大事な部分、一番伝えたい部分を表している様でした。

本当に久し振りに触れた生舞台の空気、生のミュージカルの空気、感動的な空間。
あまりに知られ過ぎた題材ではあるけど、でも観に行って良かったと思いました。 

 

この物語の舞台となったジョージホテルの実際の姿。

(ストリートビューより) 

 

場所はここ。

 

ただ、残念な事にホテルは近年に閉業してしまった様です。

物語の主役になった、のっぽの古時計はどこへ行ってしまったのでしょう?

 

市街地に同じ名前の綺麗なホテルがあったので、こっちに移転したのかな?

(ストリートビューより)

 

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