ミュージカル座【Woman~源氏物語より~】を鑑賞してきました。
劇場は品川の六行会ホール。この劇場もミュージカル座の公演で何度か訪れてます。
なんと、今作はあの源氏物語をミュージカル化した作品という一風変わった作品。
キャストはこんな感じですが…
源氏物語を実はほとんど知らない側からすれば、似たような十二単を着た、似たような名前(しかも馴染みのない文字列)の女性がわんさかわんさか登場する作品に些か困惑(笑)
初見の舞台で登場人物の相関図がつかめないって致命的じゃないですか(笑)
正直、物語を追うのが精いっぱいでキャストの事まで観てる余裕がなく、あとからキャスト一覧を見返してみて、え!と思う事も…例えば、作中ではなかなかにインパクトがあり、人物としてしっかり認識していた筈の六条御息所(ろくじょうみやすどころ)を演じていたのが佐渡寧子さんだった事に最後まで気付かなかった…みたいな勿体ない部分も。
あ、でも光源氏のライバル的な色男、頭中将(とうのちゅうじょう)を演じていたのが元ラウルの柳瀬さんだって事には(二幕から)気付いたわよ!←やっぱり遅い。
~あらすじ~
ひとりの女性が何気なく手にした小説に目を落とす。
それは千年も昔に描かれた小説。タイトルは「源氏物語」。
自分自身、そして恋愛に悩んでいるこの女性は愛の物語を読み進むにつれ、
登場人物たちに「私」を重ね、深くはまっていく。
空蝉、夕顔、葵の上、紫の上、末摘花、それとも藤壺?
明石の君、玉鬘?私は誰に似ているのだろう?
そして私にも現れてくれるのだろうか。光源氏は…。
現在の彼女に「源氏物語」は何を語るのだろう?
萩野カオリ28歳。職業薬剤師。
家庭環境、恋人。人生そのものに難あり…。
今、初めての「源氏物語」を読み始める。
(公式HPより)
開演前は、舞台上には平安時代を扱った時代劇なんかで良く見る様な、紙製の風除けが付いた燭台が二本のみ置かれるというシンプルながらに、源氏物語がこれから始まるんだなって思わせる雰囲気。
…なのに、始まった途端にいきなり時代が現世に飛ぶというビックリな幕開けから始まる作品です。
全体的な設定としては、現代に生きる女性が源氏物語の小説を読むという体で源氏物語の部分が進むという感じらしく、ところどころで本を読んでる筈の女性が物語の中に迷い込んで作中の人物と会話したり接したりする部分はあるものの、それは"実際に不思議の世界に迷い込んじゃった"訳ではなく、飽くまでも読み進める上での脳内での出来事、みたいな感じ。
光源氏役の方が元・宝塚男役で、宝塚男役的な特徴ある声質や喋り方をされていた点と、出演者の男女比があまりに女性に偏ってる事とで、宝塚の舞台を見てるんじゃないかという軽い錯覚もあるのだけど、あれ?これは宝塚か?と思い始めるタイミングでちょこっと男性が混ざって出てきて変な気分になる、みたいな(笑)
現実の世界と、華やかかつ浮世離れした源氏物語の世界が頻繁にクロスオーバーする作品で、源氏物語の方で起こった出来事を、現世の方でなんとなく説明してくれてると言うか補完してくれてるというか…って感じなんだけど、登場人物の名前もイマイチわからない、相関図もわからない、むーん…わからない…わからない…と、どこか蚊帳の外に置かれてる感を感じながら、無事に物語の世界に入り込めるのか心配しつつ観ていたのですが…いつの間にやら物語のなかにどっぷり…お見事!
源氏物語や紫式部とは縁遠そうな派手な演出やギャグを交えつつ、数々の姫君たちが光源氏の虜になって落ちていき、悲劇の人生を辿りながらも尚光源氏を慕った女性たちの姿を描いた作品でした。
↑ただ、源氏が手を出す人数の多さ、ペースの速さが災いして余計に人物相関図がわからなくなるっていう…笑
物語としては世に言われる通りで、ロリコンで女ったらしの浮気野郎が良家のお嬢様を次々手にかけ、子供を孕ませちゃ去っていく武勇伝でしかない、と言えばまさにその通りなんですが…笑。
↑源氏物語の一部しか扱ってないと思われるこの作品の中ですら最年少で14歳の女子を孕ませてるっていうね。全編読んだら最年少は何歳になるやら。
でも、これだけの悪事を(しかもごく身近な狭い範囲で)働いても誰一人として、源氏を恨んでなく、源氏も源氏で現代でいうところのヤリ逃げとは違い、時々は手を掛けた姫君に顔を見せに行き、来てもらった方も来てもらった方で、待ち侘びてたという、どうにも現代の感覚とは違い過ぎる世界観。
今この時代に、過去に遊んだ女達の所に順繰り順繰り顔なんか出そうもんなら、ぶん殴られるか刺されるか、或いはストーカー呼ばわりされてお縄になるかだわ。
そんな女遊びが過ぎる宮様の物語の筈なのに、そのせいで悲運に陥った女性同士のふれあいで泣かせる部分も。
個人的につらいなぁ…と思ったのが、源氏が明石から京に戻る事になったのを受けて、明石の君(源氏の妻の一人)の姫が、紫の上(ずっと源氏を慕ってるのに正室どころか妻にすらしてもらえなかった女性)の手に引き取られるシーン。
なんかもう、ミス・サイゴンのラストシーン(タムがキムの手からエレンの手に引き取られていくシーン)とダブっちゃって…つらいよぉ。
紫の上は妻という立場にすら成れなかったのに、明石の姫を立派に育て上げて、姫が嫁ぐ時に明石の君の手に返して、実の母親に嫁ぐ娘を送らせるというエピソードとセットで泣けますねぇ。
残念ながら楽曲は頭に残らなかったのだけど、作品としてはとても面白かった。
創作ミュージカルがメインのミュージカル座では珍しく、これは劇団Stepsというかつて存在した劇団の10年近く前の作品をミュージカル座のプロデュースという形で上演したものなんだとか。
これまでに見た事がない類のミュージカルにまた出会えた気がします。
こちらの作品にぽちっとな。