劇団四季【ブラックコメディ】 | たかびの自己満観劇ブログ

劇団四季のストレートプレイ【ブラックコメディ】を鑑賞してきました。

【アンチゴーヌ】以来、四季では【エクウス(馬)】以来久し振りのストプレ鑑賞。

劇場は自由劇場、座席は最前列ドセン。

キャストボード。

人は突然視界を奪われたら、どんな行動に出るのか?を観察するお芝居。

物語の世界が明るい設定の時は舞台照明が薄暗く、物語の世界が暗闇になった途端に舞台照明が明るくなると言うあべこべの表現が特徴的な作品でした。

舞台は売れない彫刻家ブリンズリーの部屋、世界一の富豪が彼の作品を観にやってくると聞いて、なにもない彼の部屋を少しでも飾り立てようと、ブリンズリーの婚約者キャロルがブリンズリーの反対を押し切ってお隣に住む収集家ハロルドの部屋から家具を無断で拝借してきたところから物語は始まります。

家具の移設がひと段落したところで突然電気のヒューズが飛び、部屋は真っ暗闇に(=薄暗かった舞台が明るくなる)

突然真っ暗やみに放り込まれたブリンズリーとキャロルはへっぴり腰になり、足を思いきり開いて踏ん張り手を尽き出して、顔は目を見開いて不安に満ち溢れた表情になりながら恐る恐る動きます。

ちょっとした段差に躓き、階段から滑り落ち、家具にぶつかり、柱にめり込む。

助けを求めて迷い混んできた上階のミス・ファーニヴァルをはじめ、様々な人が真っ暗闇のブリンズリーの部屋を訪れては、みんながみんな視界がないが為に起こるトラブルに翻弄され、展開は思わぬ方向に…。

売れないけど(パッと見は)真面目な彫刻家ブリンズリー、その彫刻家を愛する天真爛漫な婚約者キャロル、その婚約者の父親で格式を重んじる頑固なメルケット大佐、屈強な外見とは裏腹にオネエ言葉を操りくねくねしてるお向いのハロルドさん、真面目かと思いきや実は優柔不断な彫刻家が繋ぎとめてる元恋人クレア、ただ電気工事に呼ばれて来ただけなのに芸術に少しばかり詳しかったばかりにとんでもない勘違いをされる電気技師シュバインツィッヒなど、個性豊かな面々が暗闇の中で繰り広げるドタバタコメディでした。

この日は高校生くらいの学校集団が客席の大半を占めてましたが、彼らも大笑いを連発する出来。

暗闇の中、その場に新しくやってきた人と、それまでそこにいた人が入れ替わり、会話がちぐはぐする。

手探りで相手の位置を確認しようとした結果、手は胸やお尻などあらぬ場所に辿り着いてしまい…触られた方は悲鳴を挙げる訳でもなく、静かに喘いじゃう。

お互いに向かい合って会話してるつもりが、みんな微妙に方角がズレてて明後日の方向に向かって話し掛けてる。

Aと言う人物がやって来た事に誰も気付かずに、Aと言う人物を挟んで座ったBと言う人物とCと言う人物がAと言う人物の悪口を散々に言って、それを真ん中で聞かされたAと言う人物がどんな表情をしたか。

突然視界が戻った時、みんなどんな滑稽な格好をしてるか。

何よりも自分のコレクション命なハロルドに、家具を勝手に持ち出した事を気付かれまいと必死になるブリンズリーと、何も知らずに灯りをともそうとする大佐を全員で妨害する暗黙の連携…

次から次からテンポ良くやって来る笑いと、どうしてそうなるに至ったかをしっかり描く導線。

これは凄い作品だ。
これは本当に面白いし、それを描く為の役者達のパントマイムや顔の表現力も凄い。

個人的には大好きな牧野さんの声芸を久し振りに見れたのが嬉しかった。


それから、最後の最後にちょこっとだけ登場した世界一の富豪ゲオルグ(勅使瓦さん)の、出番が物凄く少ない上にリアル・ミシシッピー殺人事件(30代以上ならこのネタわかるかな?)で舞台上から突然姿を消すという散々なキャラ、暗闇で突然胸を触られるハプニングに遭って悲鳴を挙げるどころか少し感じてしまったミス・ファーニヴァル(中野さん)の声使い、自分の存在を散々に言われてるのを聴いている時のクレア(高倉さん)の表情、そして視界が全くない状態でブリンズリーがクレアの存在に気付いた理由(ブリンズリーがクレアのお尻を揉んで、その感触でそれがクレアだと気付くネタ)が面白くて好きでした。

これは是非また観に行きたい作品です。

 

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