8日火曜日は劇団スイセイミュージカル【The Musical ALICE】を鑑賞してきました。
スイセイミュージカルの鑑賞は【フットルース】以来3年振りです。
劇場は久し振りに訪れる、来年から天王洲yoani劇場と言うガッカリな名前に変わるという天王洲銀河劇場。
つい先日、すぐ近くの六行会ホールにミュージカル座の公演を観に来たばかりなので、東品川なんて普段滅多に近寄らない(笑)エリアなのに、こんなに連続で来るなんて珍しい事もあるもんだなぁと。
不思議の国のアリスの世界観を模したお花も届けられた様です。
お、倖田來未からも来てる!
…つーか、そう言えば、misonoって倖田來未の妹なんだっけ(忘れてた)
劇場内至るところにアリスちっくな装飾。
こちらキャストボード。
座席は最前列下手側ブロック中央付近。
ここの劇場は外側のブロックの座席も内側を向かずに正面を向いてる為、やや首が疲れるなぁ。
~ストーリー~
オックスフォードに住むアリスは妹たちに自分の創った物語を読み聞かせていた。
そこへ洋服を着たおかしなウサギが現れ、アリスはそれを追い掛けて木の根元に空いた不気味な大穴へ飛び込んでしまう。
そこで同じ様にこの世界に迷い込んだ小説家のチャールズと出会い、二人は摩訶不思議な冒険へと旅立つ。
そこにはハートを失くしたハートの女王、イカれたフリをした帽子屋、自由気ままでセクシーな猫など個性豊かな不思議の国の住人達がアリスの到着を今か今かと待ちわびていた。
-公式HPより-
んだば雑感。
不思議の国のアリスを題材にしたミュージカルは、ホリプロのアリス・イン・ワンダーランドに続き、スイセイ版のアリスで2作品目。
ホリプロ版は、登場人物こそ不思議の国のアリスに則ってるものの、肝心のアリスが現代のキャリアウーマンだったり、マッドハッターが女性だったり、いわゆるディズニー版アリスの恰好をしたアリスもどきがワラワラと何人も出てきたり、と不思議の国のアリスとはかけ離れた設定が盛り込まれていて、展開としてもかなりドタバタしたコメディでした。それは、ウサギが『ワケわからなくてごめんなさい!』ってお客に向かって言っちゃうほど(笑)
それに対しスイセイ版は、不思議の国のアリスに沿ってるかどうかは別として、アリスが不思議の国の冒険をする内容で、登場人物も物語の枠を大きくはみ出した突飛な設定は無し。
ただミュージカルオリジナル要素として、小説家のチャールズと言う男性キャラが重要なポジションとして登場しアリス達と共に冒険をしたり、また(諸説あるにせよ)白うさぎの召使とされてるメアリーアンと言う名前が、行方不明になっているハートの女王の娘(のちに幽霊として登場)という事になってたり。
もちろん、いつも時間がないと騒いでる慌てん坊の白ウサギや、お誕生日じゃない日を祝うシーンなど、お馴染のシーンも出てきます。
また、物語全体を通して、アリスとチャールズがお互いに、今起きてる不思議な出来事は、全て自分が想像した世界の出来事であると思い込んでる、と言う前提がある様で、実際にこれは私の想像だ!いや僕だ!と言い争うシーンもたびたび。
妹たちに創作童話を聞かせるのが好きなアリスと、小説家と言う職業のチャールズらしいですね。
作品全体としては、あくまでも個人的なイメージではあるものの、長期に渡ってハウステンボスでレビュー作品を上演していた劇団である為か、音楽もアップテンポで賑やかなものが多く、ダンスもステージ全体を使うダイナミックさ、そしてライティングにミラーボウルを使うなど、とにかく派手。
スピーカーの音量も、最前列で見ていても生の声が聞こえない程大きく、また役者が頻繁に客席を練り歩くなど、とにかく派手です。
役者陣に関して言うと、著名な客演陣が目立つものの、プリンシパルを客演に任せきりではなく、劇団員もチャールズ役の吉田要士さんやチェシャ猫役の星野真衣さん、白ウサギの渡辺亮さんなど重要なポジションにいます。
以前、フットルースを見た時は(性格的に元々超が付くほどの早口、と言う設定のラスティを演じたAKBの増田有華さんは別としても)、とにかくみんな早口、台詞が早口か否かで劇団員か客演かを判断できるほど早口だったんですが、今回はまるでそれを感じる事はありませんでした。
むしろ(開幕2公演目であるとは言え)客演陣に大小のミスが目立ちました。
misonoさんは台詞の途中でニュアンスの迷いが声に出ちゃったし、ジェームス小野田さんが途中で口が回らなくなっちゃったし…彼らは役者本職ではないけれど。
あと、暗転中に袖から凄い音がしたり(何かを倒したか誰かが躓いてコケたか?)、歌いながら客席に降りてきたmisonoさんが躓いてコケそうになったりと、パプニングが多かった気がします。
また、舞台上のスロープがかなり急で、みんなそこを通る時はおっかなびっくり。
特記したいのはハートの女王役の松井誠さん。
ハートの女王はダブルキャストで共に男性が演じていたのですが(裏キャストは元四季の沢木順さん)、松井さんは普段は時代劇に多く出演されている方の様で、女王つまり女性役なのでもちろん全編の9割近く裏声なんですが、これが普段の仕事のせいかほとんど歌舞伎の女形状態(笑)
しかし、娘のメアリーアンを思って泣き崩れる姿とか、凄すぎて見入りました。さ…さすがの演技力…。
また、所作が非常に美しく、それでいて非常に存在感が大きい…文字通り圧巻。
国王(主人)とメアリーアン(娘)を同時に失いズタズタに傷ついた心をこれ以上傷付けない為に魔法で心を凍らせてしまい、心優しいハートの女王は国民からスペードの女王と呼ばれ恐れられる悪女になった、とされてますが、前半はまだメアリーアンを心配するあまりのご乱心でありメアリーアンを思う心が見え隠れしていたものが、後半になるにつれ恐ろしい存在になっていく、その移り変わりの表現も見事なもの。
歌に関しても、ご本人曰く初ミュージカルで本当に苦労したそうですが、確かにミュージカル俳優の様な美声ではありませんが、全然いい感じでした。
冒険が進み、お互いが『これは自分の想像力の成せるもの』として譲らずに嫌味を口走ってたアリスとチャールズが、やがて心を通わせ、これは『自分かあなたのどっちかの想像』と譲歩する様になり、それはやがて見栄ではなく、現状を打開する為の手段を考える為にその発想を使うようになり、自らの危険を省みずに相手を助けようとする、そんな関係に進展していきます。
そしてクライマックス、ハートの女王がメアリーアンの死を受け入れて心を取り戻どし、不思議の国が元通りになり、アリスとチャールズが元の世界に戻る時。
もし本当にこれが、アリスかチャールズどちらかの
想像の世界だとしたら、どちらかがどちらかの想像によって生まれた人物である事になる。
それってつまり、元の世界に戻ってしまったら、どちらかは消えてしまうという事ではないか?
アリスが気付いた、残酷な結末。
元の世界に戻らずにこのまま不思議の国に住んでは?と不思議の国の住民に持ちかけられるも、二人は元の世界に戻る事を決意。
そして元の世界に戻り、片方は消えてしまいます。
消えたのはアリスの方。結局これはチャールズの想像の物語でした。
チャールズは、不思議の国で出会った仲間達と、そしてアリスをこれからも生かし続ける為に、自らの体験を本にしようと決意。
小説家のチャールズ、彼がのちに『不思議の国のアリス』を書きあげたルイス・キャロル(本名:チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン)でした。
と言うお話。
最後の結末はちょっと想像出来ない形でしたが、この結末は好きだなー。
どちらかと言うと、物語をミュージカルに仕立てた、と言うよりも音楽とダンスの合間合間を物語で繋ぎ合わせたかの様な比重の作品でしたが、これはこれで面白かったと思います。
15日追記。
観た時は感じなかったけど、あれから一週間ほど経って、この作品からほのかに『夢醒め臭』が感じられました。
幽霊になってしまったメアリーアンの存在、メアリーアンの影を追って傷付く女王、それに序女王を説得する際に、今度はアリスのお母さんに女王様と同じ悲しみを負わせる事になる、と言う台詞。
アリスとメアリーアンとハートの女王の関係が、ピコとマコとマコ母の関係と非常に良く似てる気がしました。
実は当日まで知らなかったんですが、当日は期間中たったの二度しかないアフタートークショーの該当回。
折角なので終演後のアフタートークショーも鑑賞しました。
アリス(misonoさん)、チャールズ(吉田さん)、帽子屋(小野田さん)、白ウサギ(渡辺さん)、チェシャ猫(星野さん)、ハートの女王(松井さん)の6人によるトークショーで、司会進行による質問に出演者が答える形式。
ミュージカル初出演と言う松井さんの『歌が本当に大変だった!』連発に笑いが巻き起こり、星野さん演じたチェシャ猫は本来は亡き川島なお美さんの役だった、と言う裏話や、帽子屋の衣装が本当に米米チックで米米時代を思い出したという小野田さん、また学生時代に米米の大ファンでライブにも行っていたという吉田さんが、小野田さん(しかも米米っぽい衣装)との共演は本当に夢の様…と言う感想を漏らしたり、misonoさんの台詞や歌に『バラエティのmisono』が出てきてしまいアリスを演じる上でmisonoを抑えるのが大変だった、という苦労話などが披露され、短時間ながらに楽しいイベントでした。
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