この記事ではコンタクトを。

歌が無い、ダンスプレイミュージカル【コンタクト】の鑑賞は3年半振りです。
前回は、歌が無いオムニバス形式のダンスプレイ、と聞いても何のこっちゃ?状態でしたが、今回は作品の構成も内容もわかってるつもりで観に行きました。
今回久し振りの上演とあってか、また数少ないダンサーの為の作品とあってか、とにかくチケットの売れ行きは凄まじかった印象の今作。
先行初日に、平日公演なのにサイドブロックになってしまい、また席も競り負けを起こすと言う、近年では久し振りの大惨敗なチケ取り事情な作品でした。
コンタクトがどんな作品なのか知らずに(歌が無い事すら知らなかった人が、少なくとも身の回りにチラホラ)取りに掛かった初見組と、坂田加奈子さん、井上佳奈さん、加藤久美子さん、高倉恵美さん、松島勇気さん、岩崎晋也さん、西尾健治さんなど、錚々たるダンサー陣が顔を揃える作品とあって、買い占める勢いで取りに掛かったダンサーヲタの皆さんが、結構な割合を占めたんじゃないかなぁと思います。
公演期間が短い事も拍車を掛けたのか、四季扱い分のチケットはほぼほぼ完売だそうで。
そんなワケで今回は上手サイドブロック6列。
こちらキャストボード。
前期(2011/2/1)からの役付きのチェンジは以下の通り。
貴族:花島佑介さん⇒ツェザリ・モゼレフスキーさん
召使い:徳永義光さん⇒松島勇気さん
マイケル・ワイリー:加藤敬二さん⇒田邊真也さん
貴族と召使いの前任の方は果たして今も在団してるのかどうか…。
【PART I SWINGING】
非常に短く、台詞も無く、ただ貴族が『あははははは』と笑ってるだけ、と言っても過言ではないシーン。
女性が乗るブランコを召使が押し、それを酒を飲みながら貴族が見て笑ってる、と言うシーン。
女性がブランコの上から何とか貴族に触ろうとするのを、貴族がかわしてるだけのシーン。
アメリカでは笑いが起きる作品なのに、日本では国民性の違いからか、シーンとしてると言われてるシーン。
今回も例に漏れず、シーンとしてた。
今回は召使が松島さんだという事で、ブランコの上で行われる松島さんのアクロバティックな演技を楽しみに観ていたのですが。
ひょっとして、これアメリカ人が笑う理由がわかったかも知れない。
と言うか、前回は何だかチンプンカンプンだったのに、今回なんだかこのシーン凄く面白くて、思わずニヤリとしてしまうシーンが。
と言うのは、貴族の目を盗んで女と召使がブランコの上でしてる事って、思い切り『性』を意識してるんじゃないかなって思ったら、もうその挙動の一つ一つがおかしくて…。
まぁ、オーバーアクションで二人がブランコの上でテン、テン、テン!しちゃってるのは、多分観ればわかるんだろうけど、良く観てると女の目は召使の股間に釘付け…それこそ本当にガン見なんです。
召使の腰の動きに合わせて、女は目をカッと見開いたまま、顔を股間に近づけたり離したり…。
貴族と女の間では、なかなか交わらないものが、女と召使の間で簡単に交わってしまう面白さ。
まぁ、最後に召使が貴族に見せ付けたものが何なのか、何故あそこで二人は入れ替わったのか、たった一言の台詞『上出来だ!』が何を意味するのかはまだ理解できないけどね。
【PART II DID YOU MOVE?】
タイトルをそのまま訳すと、夫の台詞の『動いたな?』になるワケですね。
このシーンは、前期同様に牧野公昭さんの存在感満点な夫と言うキャラ、それに坂田さんとグヨルさんのダンスと、わかりやすくて面白いパート。
夫の命令で、ウェイターに話しかける事も、微笑みかける事も、動く事さえ許されない妻が、その反動?か妄想の世界で自由に踊りまわるお話。
まぁ、夫にあれこれ制約をつけられ、自由に動けない反動で、と言うのも解るんだけど、奥さんちょっと妄想世界に浸りすぎでしょ!と言う作品ですね(笑)
この作品は後述のPART IIIとは違って現実と妄想世界の繋ぎ目が非常に滑らかなところも見所の一つじゃないかと。
もちろん、坂田さんのダイナミックなダンスが堪能出来るのは一番の魅力ですが、舞台ところ狭しと踊った最後に、当然各々のキャストが元の定位置に戻るわけですが(現実では動いてないことになってるので)、滑らか~に戻る様に振り付けがなされてるんですよね。
でも、例えばウェイター長(グヨルさん)はビシっとした綺麗な姿勢で立ってるんだけど、踊った後で汗だくなので、涼しい顔をしてるのに汗だくなウェイター長、とか見た目的に面白いところもあったり。
妄想の中での坂田さんの悪戯や、現実の世界での夫と従業員が作り出す絶妙な空気に客席からも笑い声が漏れます。
【PART III CONTACT】
休憩を挟んで第二幕。
テーマは、表面だけの栄誉を手にした裏で、人とのコンタクトが上手く取れずにノイローゼになりかけて自殺まで図ろうとする男が、幻の中で黄色い女(イエロー)に出会い、何とかアプローチしようと奮起する話。
前期の鑑賞でも、 マイケル・ワイリーの“焦れば焦るほど空回りで何をやってもうまく行かない現象”に共感して、前期一番楽しめたパートでした。
今回は前期の敬二さんに代わり、田邊さんがワイリー。
このシーンは、PART IIではドスの効いた声とスキンヘッドの強面で高圧的な存在だった夫役の牧野さんが一転、とびきりファンキー(笑)なヅラを被って、ややお姉口調のバーテンに変身するのも見物。
一番時間が長く、また一番場面転換が多く、またワイリーの精神状態を表しているかの様に、何が現実で何が幻なのかがはっきりしない場面のつなぎ方をしてる作品です。
多分、盛り場のダンスシーンは全て幻、という位置づけなんだろうけど、ここでワイリーは様々な思いで踊る男女を横目に酒を飲んでいるけど、突然現れた黄色い女に心を奪われ、なんとか近付こうとするも、中々踏み出せず、何とか踏み出そうも周りに不恰好な姿を嘲笑され、必死にもがく。
一番身近な出来事だな、と今回も感じました。
自分が必死になればなるほど、遅々として物事は上手く進まないし、そういう時ほど、周りの視線が気になる、バカにされてるかの様な視線を感じる。
身近だから共感できる、その心理。
水原さん→西尾さん→松島さん→朱さんと次々にアプローチしてくる男性ダンサーをことごとく、華麗にスルーしつつ、ワイリーに対して挑発的な視線を向ける黄色い女、バーテンも後押しをしてて、これだけお膳立てが揃ってても、一歩が踏み出せない気持ち、これもこれでわかるわ~。
終盤、何やらトラブルが発生!
ラスト、クレームを言いにワイリーの部屋に乗り込んで来た下階の住人であるミネッティーさん(高倉さん)が、黄色い女とそっくりだった事でワイリーの中で何かが変わったのか、あれだけ不恰好に二の足を踏んでたのが嘘の様にスマートに、しかし状況を考えれば非常に滑稽な状態で『僕と一緒に踊って下さい』と言うシーン。
過去に一度しか観たことがなく、今回は三年ぶりの鑑賞となったのもあり、あれ…前回こうだったのに…と言う違和感こそ感じる事はなかったものの…。
踊ってください!と申し出て、ワイリーがミネッティーさんを抱き締めて、前後に軽くステップを踏んだ…と言うより、ほとんど揺れただけって感じの状態で、ワイリーが『ここに座って』と小声で話しかけて、(踊ってって言っておきながら座って??)ってなって、すぐに『ありがとうございました、もう一人の僕が出て行きました』みたいになって、何この不自然な感じ????ってなってるうちに、不自然に幕がおりて、幕が下り切る前にセットがハケ初めて、上手側のセットが幕に引っ掛かって、そして舞台裏から不自然なガヤガヤが…。
四季の舞台で、幕が下りてからガヤが聞こえる作品なんて思い当らないし、何だか慌ててる感じだし…と思って、何だかすっきりしないうちに、これまた静かに幕が開いて、不自然なカテコ。
オレが感じたのはこの程度だったんだけど、詳しい人は『踊ってください!』から異変に気付いていた様です。
なんでも、舞台上で黄色い女=ミネッティー役の高倉恵美さんが意識朦朧として、倒れ掛かったのをすかさずワイリー役の田邊さんが受け止めたらしいです。
本来ならここで踊らなきゃいけない所を、座らせたのは、田邊さんが機転を利かせての事だった様です。
それでもカテコには支えられながらも登場した高倉さん。
でも、田邊さんは井上さんと組んでた。
オレはどういう状況なのかイマイチ察せなかったけど、事情を察してた客層はここで、気が気ではなかったのだと思います。
劇場から出たら、外には救急車がスタンバイしていました。
今だからこそ、高倉さんの意識が飛び掛けたらしい?という状況を知ってるけど、この時はあれだけ激しいダンスの演目、誰か怪我をしたもんだと思ってました。
でも、よくよく考えたら、救急車を呼ぶってよっぽどの事だよね。
大事に至ってない事を祈ります。
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