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現在の日本において、緊縮財政の「牙城」とでも言うべきシンクタンクが、東京財団政策研究所です。
東京財団は、ボートレース業界のドン、笹川家の支援を受け、1997年に設立されました(当初は国際研究奨学財団)。竹中平蔵氏は、国際研究奨学財団の理事の一人で、後に東京財団と改名された後に理事長に就任しています。(ちなみに、初代理事長は日下公人氏)
我々になじみ深い研究者は、土居丈郎教授、小林慶一郎教授、佐藤主光教授といったところでしょうか。
さて、東京財団の研究者の一人、日銀出身の早川 英男氏が、実に興味深いレポートを公表しました。
『MMT派の信用創造理解:その貢献と限界
(前略)信用創造の理解:貸出の場合
まず、信用創造がどのように行なわれるかだが、普通は預金ないし現金(マネタリーベース)を元手に銀行が貸出を実行することで信用創造がスタートすると考えられている。しかし実際には、MMTが主張するように、「銀行が貸出を実行すると、直ちに同額の預金が生れる」のであり、事前に預金や現金を用意することは必要でない。
一般の人には不思議に思われるかも知れないが、銀行員なら貸出とは「借り手の預金口座に貸出額に等しい預金を書き込む」ことに他ならないことを知っている筈だ。
この時、銀行のB/Sがどう変化するかと言うと、資産サイドで貸出が、負債サイドでは預金が同額増加しており、B/Sの左右は事前にも事後にもバランスしていることが分かる(図表1)。
一方、銀行が原資としての預金や現金を必要とするのは、貸出先の企業が支出を行なうと預金が自行から他行へ流出するからである。その場合の不足資金は通常、市場(日本ではコール市場、米国ではFF市場等)で調達される。これは、MMT派の源流とされるハイマン・ミンスキーが「銀行は、まず現金を手に入れてそれを財源にする貸手ではない。まず貸出を実行して、その後の預金の流出分を賄うため、現金を手に入れるのである」と述べている通りだ[3]。
こう考えると、MMT派の信用創造論は従来「信用貨幣論」、「内生的貨幣供給論」などと呼ばれてきたが、「与信先行論」と捉えるのが適切ではないか(この場合、従来の通説は「現金先行論」となる)。(後略)』
ややこしい書き方をしていますが、マネタリーベースの「預金」とは日銀当座預金、「現金」とは現金紙幣のことです。というか、早川氏、銀行の預金と日銀当座預金の双方を「預金」と呼んでいるので、分かりにくい。
本エントリーでは、我々の資産である預金を「銀行預金」、市中銀行が日銀に保有する預金を「日銀当座預金」と表現します。
A銀行が借り手に貸し出すと、
「借り手の資産、A銀行の負債」
として、銀行預金が発行されます。実際、バランスシートを見ると、銀行預金は借り手の借方、A銀行の貸方に同額で(当たり前ですが)計上されます。
借り手が銀行預金をC社への支払い(振込)に使いました。C社の銀行口座は、B銀行です。
すると、A銀行の負債であった銀行預金が減り、B銀行の負債としての銀行預金が増えます。
A銀行は、B銀行で増えた負債の清算をする必要があり、そこで日銀当座預金が必要になるわけです。(今時、現金紙幣で銀行間決済はやらんでしょう)具体的には、日銀がA銀行の日銀当座預金の数字を減らし、B銀行の日銀当座預金の数字を増やすわけです。
(ちなみに、↑この仕組みが本格的に始まったのは、わたくしが知っている限り「アムステルダム銀行」だと思います)
【再掲 三橋貴明×佐藤健志 フランス革命とMMT(現代貨幣理論)】
現在、三橋貴明と佐藤健志による特別コンテンツ「信じがたい歴史的真実!フランス革命とMMT(現代貨幣理論)」がご視聴頂けます。
https://keiseiron-kenkyujo.jp/keiseishiron/
だからこそ、日銀当座預金(早川氏の言う「原始の預金」)が必要になるわけですね。日銀当座預金が不足しているならば、A銀行はコール市場で調達します。
早川氏の表現では、
「おカネが流れ、移動している」
印象を与えてしまうため、読み手に誤解を与えるような気がします。
『(引用)貸出先の企業が支出を行なうと預金が自行から他行へ流出する』
と書かれていますが(言いたいことは分かりますが)、実際にはおカネが「流出」しているわけではなく、
「A銀行の貸方で負債(銀行預金)の数字が減り、同額、B銀行の貸方で負債(銀行預金)の数字が増える」
が正しいわけですね。
ところで、早川氏は、
『銀行員なら貸出とは「借り手の預金口座に貸出額に等しい預金を書き込む」ことに他ならないことを知っている筈だ。』
と書いていらっしゃいますが、これは信じがたいです。わたくしは、数多くの銀行(のユーザー会)で講演をさせて頂いており、その度に銀行関係者の皆様に確認していますが、ほとんどが「また貸し論」で理解しています。
銀行が貸し出すためには、預金を受け入れなければならない、という間違った認識をお持ちの方だらけでした。(支店長クラスでさえ)
それはまあ、早川氏は日銀入行時に、正しい信用創造の仕組みを教えられたのでしょうけれども(日銀内では、正しく教えられています)。
それはともかく、緊縮派の牙城である東京財団で、正しい信用創造の議論が始まったのは良いことです。土居教授や、小林教授らは、早川氏の論説を読み、どのように「着地点」を探るのでしょうか。
「信用創造を正しく理解し、緊縮財政を終わらせよう!」に、ご賛同下さる方は、