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「構造改革路線を改革せよ」(前半)三橋貴明 AJER2020.9.7
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アフガニスタンの事例から考える アメリカによる民主化成功例は「無い」[三橋TV第439回] 三橋貴明・高家望愛
日本国民(特にマスコミ)の殆どが勘違いしていますが、日本の「潜在成長率」とは、
「日本経済の潜在的な生産能力の拡大ペース」
ではありません。正しくは、
「日本経済の過去平均の成長率」
になります。
上記が事実であるにも関わらず(内閣府も、そう説明しています)、マスコミでは潜在成長率の低迷について「日本経済の潜在力が伸びない」という印象の記事が書かれ、
「ならば、競争の激化をもたらす構造改革だ! 規制緩和だ! 民営化だ!」
というレトリックに繋がります。
とはいえ、現実には「平均成長率」に過ぎませんので、日本のGDPが拡大すれば、勝手に潜在成長率も上昇します。(何しろ、過去平均)
なぜ、このような事態になっているのかと言えば、日本が潜在GDPについて最大概念ではなく、平均概念を採用しているためです。
そもそも、日本経済の潜在的生産能力を意味する潜在GDPが「過去平均」なのです。というわけで、経済成長が実現すると、潜在GDPは大きくなり、潜在成長率も上昇します。
国民に誤解を与えないためにも、潜在GDPとして最大概念を採用するか、もしくは「潜在GDP」「潜在成長率」を「平均GDP」「平均成長率」という言葉に改めるべきです。
さて、現在の日本の定義では、潜在成長率は「過去の平均成長率」に過ぎないため、
「政府が大規模財政拡大を実施し、GDPを拡大する」
と、確実に上昇します。日本の潜在成長率(というか平均成長率)を高めたいならば、政府の財政支出でデフレ脱却をすればいい。ただ、それだけの話なのです。潜在成長率とは、「そういう統計」なのですよ。
ちなみに、GDPが2015年基準に改訂され、「過去」のGDPが上方修正されると、潜在成長率は「何もしていない」にも関わらず上昇しました。
【三橋貴明の音声歴史コンテンツ 経世史論】
https://keiseiron-kenkyujo.jp/keiseishiron/
※要望多数につき、評論家・中野剛志先生 【通貨論争史:イギリス編】【通貨論争史:日本編】が再掲となりました。
『予算の年内編成、綱渡り 政治空白長引く懸念、「規模ありき」脱却課題に
新型コロナウイルスの流行下、菅義偉政権が約1年の短命で終わることになった。自民党総裁選を経て新政権が発足するのは1カ月後の10月上旬の見通し。その後の衆院選を挟んで政治空白は長引く懸念があり、コロナ対応の経済対策や2022年度予算の年内編成は綱渡りの日程となる。(中略)
財政出動や金融緩和を柱にしたアベノミクスは12年10~12月期に国内総生産(GDP)比で2%あった大幅な需要不足を埋めはした。問題は、経済の地力を示す潜在成長率を高めるには至らなかったことだ。内閣府の推計によると、13年度に0.9%程度だったのが、足元は0.5%程度。20年度に2.4%という政府見通しはむしろ遠のいた。(後略)』
だ~か~ら~っ!!!
今の日本緒潜在成長率は「経済の地力を示す」わけではなく、過去の成長率の平均に過ぎないのですよ。そういう統計、なのですよ。
安倍政権、菅政権下の潜在成長率が伸びていないのは、現実のGDPが成長していなかったため。
そして、現実のGDPが成長しなかったのは、財政出動が不十分というか、緊縮財政を推進していたためです。
【日本の潜在成長率(%)】
http://mtdata.jp/data_76.html#senzai
注意して欲しいのは、リーマンショック期の日本の潜在成長率が、一時的に「マイナス」に落ち込んでいることです。潜在成長率が本当に「経済の地力を示す」ならば、内戦や革命でもやっていない限り、さすがにマイナスにはなりません。
リーマンショック期の潜在成長率が落ち込んだのは、単に現実の成長率がマイナスになったためです。何しろ、過去平均ですから。
問題は、この種の「統計の定義」を理解しない読者が、日経の「財政拡大しても潜在成長率は高まらなかった」といったレトリックに騙されてしまう点です。デフレ脱却に必要な財政拡大すらせず、毎年、新規国債発行を減らしてきたわけですから、現実のGDPが成長せず、潜在成長率が高まらないのは「必然」なのです。
今後、誰が自民党総裁になり、そこの政党が政権を採ろうとも、この種の「統計マジック」による緊縮財政、構造改革の推進は止まらないでしょう。
この手の統計を駆使したプロパガンダを打破するには、結局は「正しい知見を持った国民」が増えるしかないのです。民主制の国の政治が「多数決」で物事が決まる以上、多数派形成のために努力するしかないのです。
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