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「安倍政権のレガシー(後編):前半)」三橋貴明 AJER2020.9.14

    

 

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【一般参加可能な講演会のお知らせ】

令和2年10月17日(土) 三橋経済塾第九期 第10回講義(会場:大阪)https://ws.formzu.net/fgen/S30917843/

 

資本主義の王道 賃金を引き上げ国際競争力を高める [三橋TV第294回] 三橋貴明・高家望愛
https://youtu.be/plyNIl7WtXI

 4-6月期のデフレギャップ(GDPギャップのマイナス)が発表されないなまま、9月が終わろうとしています。
 現在のコロナ危機は、過去の「デフレ期のインフレ対策(物価下落策)」の異様さを、露骨なまでに明らかにしてくれました。あるいは、明らかにしてくれます。
 

 日本が「平均概念の潜在GDP」を使っている以上、2020年度の統計史上最悪のマイナス成長を受け、「過去平均」である潜在成長率は「ゼロ」が数年間続くことになります。


 政府がいかなる政策を採ろうとも、民間がどれだけ努力しようとも、ゼロのままです。何しろ、過去の結果の平均なので、改善はできません。


 その状況で、
「潜在成長率を引き上げるために、構造改革!」
 と、中小企業再編(という名の淘汰)が進められていくことになりますが、構造改革はインフレ対策です。デフレギャップを拡大することはあっても、縮小させることはできません(インフレギャップを縮小させる政策ですので)。

 

【インフレギャップとデフレギャップ】


http://mtdata.jp/data_46.html#Gap
※左側の「総需要」は、実際には「潜在的総需要」。右側は「現実の総需要」。


 デフレが継続すると、経済成長率は低迷し、「過去平均」である潜在成長率もゼロのママです。
 

 となると、
「潜在成長率を引き上げるために、構造改革!」
 となり、デフレ期にインフレ対策が延々と続けられ、供給能力を毀損していくことになります。この異様性を国民の多くが理解しない限り。

玉木雄一郎(国民民主党代表)@tamakiyuichiro
 菅内閣は様々な「改革」を提案しているが、需要不足+供給過剰のデフレ経済下では、規制改革や構造改革がデフレを悪化させる可能性がある。改革を否定するものではないが経済が痛んでいる時の改革礼賛には注意が必要だ。今必要なのは需要の下支えで、そのためには財政支出の拡大や減税を優先すべきだ。』

 玉木代表の認識は正しいですが、どこまで浸透させることができるのか。

 選挙において、
「デフレ期の構造改革」
 を叫ぶ候補者を、国民が容赦なく落選させる状況にならなければ、なかなか事態は改善しないように思えます。まあ、他人事ではありませんので、
「デフレ期の構造改革は、デフレを悪化させ、国民を苦しめるだけ」
 という認識というか「事実」を、何とか広める必要があります。 

 

【三橋貴明の音声歴史コンテンツ 経世史論】

http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/

※特別コンテンツ、近現代史研究家・林千勝先生【大東亜戦争の真実~奪われた勝利への道~】が視聴可能となりました。

 

 もう一つ。「インフレ」に対する認識も変わるはず。

『先進国で異例のマネー急増、 「インフレの芽」を恐れるべきか 唐鎌大輔:みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
◆今、なぜ? マネー急増の読み解き方
 コロナショックによって各国の実体経済が負ったダメージは甚大であり、あらゆる経済統計にその傷痕を見出すことができる。その中で、異様な動きを示している統計として、主要国のマネーサプライ(日本ではマネーストックと呼ぶ)の急増が耳目を集めている。
 マネーサプライは、端的には実体経済における貨幣量であるため、これが増えれば将来的に物価は上昇が見込まれるし、結果的に為替にも無視できない影響を与える。市場参加者にとって、考察しておく価値のある論点である。
 本格的な議論に入る前に、マネー関連統計の定義を整理しておこう。日本の統計を例として解説するが、欧米でも大きな差はない。
 日銀の公表するマネーストックは「金融部門から経済全体に供給されている通貨の総量」を示す統計だ(解説は日本銀行HPを参照している)。中央銀行から金融部門に供給された通貨の供給量であるベースマネーの増加が、マネーストックの増加へ繋がる(そして物価を押し上げる)という考え方がこの先にあるわけだが、黒田体制下で実施された大規模国債購入とその対価としてのベースマネーの急増をもってしても、マネーストックは相応に増えなかった(この点を掘り下げると本稿の趣旨とずれるので、割愛させていただきたい)。(後略)』

 「割愛」しないで、是非とも掘り下げて欲しいものですが、「いわゆるリフレ派」がいかに間違っていたかは、本ブログなどでしつこく検証したので、やはり割愛しましょう。


 実は、後略部で、唐鎌氏は「貨幣」について正しい認識を示しているのです。

『(引用)現在確認されているM2の伸びは、財政措置を反映した動きとみられる。貸出が増加すると借り手の預金が増加するので、預金通貨は増える。この点、危機時に銀行貸出が増加して預金通貨がある程度膨らむことは珍しい話ではない。
 しかし、今回は異例の財政措置の影響が相当に大きいと考えるべきであろう。たとえば日本では、定額給付金(10万円)や事業者への持続化給付金が預金通貨を増やしたはずである。米国でも失業保険の上乗せ給付や現金給付など、政府による手厚い家計部門への支援が特殊要因として考えられる。ユーロ圏も、国ごとに金額や給付対象に差異はあっても、定額給付に類する政策は取られている。資金需要に対応した銀行貸出に加え、特殊な財政措置がM2を直接的に押し上げたのは明白である。』

 驚きました。銀行の貸出が、預金を増やすという「事実」について認識しているエコノミストもいるんですね(いや、嫌みではなく)。


 また、財政措置による預金増については、
「政府の借入(銀行の政府への貸出)が、回りまわって我々の銀行預金口座を増やしている(増やした)」
 ため、結局のところ「貸出=借入が、預金貨幣を増やす」のです。


 さらに、唐鎌氏は、貨幣流通速度(名目GDP=貨幣数量(マネーストック:M)×流通速度(V))の「V」が一定と考える主流派経済学の考え方に疑問を呈し(過去、Vが一定だったことは一度もありません)、

『(引用)現在目の当たりにしているマネー増加が将来のインフレを約束するものではなく、漠然と「マネーが増えたからインフレが怖い」という発想は決して思慮深いものではない』

 と結論付けていますが、というか「インフレ恐怖症も大概にしろ」と(恐らく)言いたいのでしょうが、現実の経済では、
マネタリーベースが増えても、マネーストックが増えるとは限らない」(「いわゆるリフレ派」の間違い)
マネーストックが増えても、インフレになるとは限らない」(貨幣数量説の間違い)
 なのですよ。理由は、マネーストックの増加=需要の拡大ではないためです。


 例えば、民間の借入によりマネーストックが増えたとしても、その多くが財やサービスではなく、土地・株式などの「資産」の購入に回ってしまうと、
「マネーストックは増えているにも関わらず、需要は伸びていない」
 ということは、普通に起きえます(というか、第二次安倍政権以降で起きていた)。


 さらに、政府の借入で家計の銀行預金が増えたとしても、それだけでは単なる所得移転に過ぎず、財やサービスが買われない。つまりは、需要が拡大しない。


 10万円の特別定額給付金を国民が「全額」預金口座の数字のままとして据え置いてしまうと、GDP(需要)は一円も増えません。


 別に、難しい話ではありません。図のインフレギャップ、つまりは(潜在的)総需要に対し、供給能力が不足する状況にならない限り、インフレ率は上昇しない現在は、むしろデフレギャップが「史上最大」になっているのでございますよ。


 日本国民の異様な「インフレ恐怖症」もまた、構造改革主義者たちにパワーを与えてしまうのです。


 今回の危機、具体的には「コロナ恐慌下での、政権によるインフレ対策(構造改革)強行」という危機を切っ掛けに、インフレ、デフレ、貨幣、財政に関する国民の認識が改まらない場合、皮肉な話ですが、ひたすら供給能力が毀損していき、最終的には「真のインフレの危機」が訪れることになります。
 

 恐慌下での構造改革という狂気を、何としても食い止めましょう。
 

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