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三橋TV第186回【「家族を想うとき」の主人公は、将来の貴方の姿です】
 
 はい、というわけで、ケン・ローチ監督の「家族を想うとき」を見て参りました。想像以上に、凄い映画でした。

 しかも、現実のイギリス(実話が元ネタ)というのが怖いのですが、同じタイミングで藤井聡先生もご覧になっていたようですね。
 
 この週末、巷で話題になっているイギリス映画、ケン・ローチ監督の『家族を想う時』(sorry we miss you)を観てきました。
https://longride.jp/kazoku/
 以前、このメールマガジンで『ジョーカー』の映画評論を掲載しましたが・・・
https://foomii.com/00178/2019111511000060331
 何人かの方から「ジョーカーがよかったっていってた藤井さんなら、是非観たらいいですよ」と紹介されていたのが、この『家族を想う時』でした。(後略)』
 
 「家族を想うとき」は、「わたしは、ダニエル・ブレイク」で英国緊縮財政の顛末を描き、カンヌ映画祭のパルムドール(最高賞)を受賞したケン・ローチ監督が、またもやグローバリズム愚劣さを描いた傑作です。
 
 運送会社が、もはやドライバーを従業員としては雇わず、個人事業主と化し、業務委託契約。リスク(保険、運送車、緊急事態、等)は全て個人事業主に丸投げ。
 
 どう考えても「従業員」であるにも関わらず、契約で働く個人事業主たちは、全てを「自己責任」で荷物を運び、配送時刻に遅れることは許されず、休むと罰金。端末が(過失なく)壊れても罰金。彼らは、会社から守られないのです。

 主人公は、元々借金を抱えている状況で、自前のトラックを用意するために、妻の車を売り、借金を膨らませて「契約」(入社ではない)し、一日十四時間働いても、借金だけが増えていく。個人事業主は労働規制により守られることもありません。
 
 企業側からしてみれば、何しろ従業員ではなく個人事業主との「契約」であるため、社会保険の負担はなく(ドライバーの自己責任)、設備投資も不要で(トラックも個人負担)、ドライバーやトラックの余裕を抱えて、非常時(誰かが病気になったとか)に備える必要もなく、しかも仕事がなければ報酬は不要と、まさに、
「短期の利益最大化」
 のみを追求するならば夢のような、ある意味「究極」のモデルです。

 その状況で、妻子を抱え、何とか「マイホームを!」という夢を実現するべく、長時間労働を続ける主人公。

 次第に、家族が壊れていき、最後は・・・・。という、涙なしでは見れない作品なのですが、実は「実話」がベースです。実話の方では、確か主人公が病をおして働き続け、最後は亡くなったはずです。

 現在の日本は、労働者の「保護」に「岩盤規制」とレッテルを貼り、ひたすら規制緩和を進めています。

 何しろ、経済産業省からして、
「兼業・副業」、「テレワーク」、「雇用関係によらない働き方(フリーランス等)」を含めた多様で柔軟な働き方を、働き手一人ひとりが自由に選択できる社会へ向けて、今後も施策を検討してまいります。
 と、個人の「労働者としての保護」を破壊する政策を「美しく説明」し、推進しているのです。

 というわけで、このまま「家族を想うとき」のごとき、フランチャイズ、ギグエコ、シェアエコ、フリーランスのモデルが日本でも溢れかえることになるわけですが、ここで注目するべきは「消費税」です。
 
 消費税が「派遣社員化」を促進したことは以前にも書きましたが、フリーランスも同じなのです。
 
【歴史音声コンテンツ 経世史論】

http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※2月15日まで竹村公太郎先生の「日本文明の誕生-神話から歴史へ-」をご視聴頂けます。。

 

売上 1000万円
売上原価 ▲200万円
粗利益 800万円
人件費 ▲500万円
利益 300万円
 
 の企業があったとして、消費税は粗利益800万円にかかります。
 
 この企業が、人件費となっている労働者を個人事業主にして、業務委託契約にするとどうなるか。人件費を売上原価化(外注費化)することができます。
 結果、
 
売上 1000万円
売上原価 ▲700万円
粗利益 300万円
人件費 -
利益 300万円
 
 となり、消費税は粗利益300万円にかかるということで、消費税を思いっきり節税できるのです。(しかも、従業員の社会保障負担も消える)

 個人事業主となった元・従業員は、年間売上1千万円未満であるため、消費税の負担はありません

 というわけで、消費税はギグエコ、フリーランスを推進する可能性が高いのですが、さらに怖いのは2023年10月に開始予定の「インボイス制度」です。インボイス制度では、企業は仕入れ(売上原価)側から「適格請求書」をもらわなければ、仕入れ額控除ができなくなります。(要は、支払い消費税が増えてしまう)
 
 そして、それまで消費税を支払っていなかったフリーランスの個人事業主が「適格請求書」を発行するには、「適格請求書発行事業者」として消費税を支払わなければならなくなります。さもなければ、適格請求書を発行できず、企業側から「切られる」でしょう。

 フリーランス側が消費税を支払うならば、「値上げ」をしなければなりませんが、果たしてそれが認められるのかどうか。力関係から言って、消費税分を「飲まされる」というオチになると思います。

 というわけで、今、マスコミの愚かな論調に煽られて「フリーランス!」などとやっていると、2023年以降に地獄を見ることになるでしょう。

 いずれにせよ、労働者の派遣化、フリーランス礼賛、ギグエコ推進、そして消費税。全て「働く国民を貧しくする」ことでは共通しているのです。この愚かしい状況を改善するためには、まずは「現実」を知らなければならない。

 そのためにも、ケン・ローチ監督「家族を想うとき」は、最高の「入門書」なのだと思います。「家族を想うとき」の主人公リッキーは、将来の貴方の姿です
 
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