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今期は二回目の試みとして、全国各地で開催します。一月は東京で、ゲスト講師は竹村公太郎先生。二月は京都で、ゲスト講師は藤井聡先生です。
 
『三橋貴明&安藤裕_年末特別対談『三橋貴明VS安藤裕「日本経済この一年」(前半)』三橋貴明 AJER2019.12.31
https://youtu.be/mZjktVVjmr8
『三橋貴明&安藤裕_年末特別対談『三橋貴明VS安藤裕「日本経済この一年」(後半)』三橋貴明 AJER2019.12.31
https://youtu.be/a2eJwLhtxkE
 
 さて、本日からお正月明けという方が多いのでしょうが、わたくしは未だに島根におります。

 松江や出雲にいると、毎度、不思議な光景を目にします。宍道湖の北を走っていたら、虹が出ていました。
 
【2020/1/5 松江市宍道湖北岸にて】
 
【2020/1/6 松江市「なにわ一水」より宍道湖】
 
 さて、タイトルの「万国の万国に対する闘争」とは、ホッブズの「万人の万人に対する闘争」をもじったものですが、現代世界は、一応、各国が「主権」に基づき、国民を守る構造になっています。

「日本国政府は国民を見捨てる国家の店じまいをしているじゃないか!」
「中国共産党が主権を持つ中華人民共和国はどうなんだ!」

 といった突っ込みはあるでしょうし、その通りなのですが、全体的な「建前」の話です。
 
 主権とは、その国における「至上、最高、他に優越した権力」という意味です。そして、主権国家とは国家の政府を超える権力が、国内にも「国外にも」存在しない国を意味しています。

 つまりは、他国の属国は主権国家足りえません。そういう意味で、日本が完全な主権国家ではないことは確かであり、屈辱な現実です(が、建前は日本は主権国家となっています。話はオールオアナッシングではありません)。
 
 1648年、三十年戦争を終結させたヴェストファーレン条約では、神聖ローマ帝国の各領邦が「主権国家」となり、帝国は崩壊。それ以降、人類は「主権国家」を主流の国家観としてきたわけですが、ポイントは国家間関係です。

 何しろ、比較しうる権力が国内・国外に存在しないのが主権国家である以上、国家間関係は「自然状態」とならざるを得ません
 
 自然状態とは、元々は国家の「中」において、政府の権力が存在せず、全てが「自由」とされた状況です。「全てが自由」と書かれると、いいことのように聞こえるかも知れませんが、現実は弱肉強食のサバンナ、わたくしの世代で分かりやすいのが「北斗の拳」の世界になるだけです。

 何しろ、人々の権利を認め、安全や安定を守る規制すら、全く存在しない世界です。人々は生存のために、奪い合い、弱者から死んでいきます。
 
 上記の有様を、ホッブズは「万人の万人に対する闘争」と表現したのです。
 
 グローバリズムが最終的に行き着く先は、国家が完全に店じまいした「万人の万人に対する闘争」の社会です。間違いなく。

 それはともかく、現在は国家の中において、政府の存在が「万人の万人に対する闘争」を防いでいるわけですが、国家の「外」はどうなのか?
 
 「地球政府」が存在しない以上、国益が異なる「外国」とは、少なくとも運命共同体にはなれない。運命を共にできるほど国益が同じならば、一つの国になれば済む話です。
 
 第二次世界大戦以降、世界の主要国はアメリカを覇権国とする西側と、ソ連を覇権国とする東側に分断されました。無論、西側諸国と東側諸国は対立を続けるのですが、それぞれのグループでは「覇権国」の下で外交関係がそれなりに安定していたのは確かでしょう。無論、ソ連と中国が衝突するなど、例外はあるのですが。
 
 1991年末にソ連が崩壊し、世界はアメリカを覇権国とするグローバリズムに突入しました。アメリカが、ある種の「国内の政府」の役割を果たし、世界は覇権国が定めるルールの下で、モノ、ヒト、カネの国境を越えた移動を自由化していきます。
 
【歴史音声コンテンツ 経世史論】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※2月15日まで、竹村公太郎先生の「日本文明の誕生~神話から歴史へ~」がご視聴頂けます。
 
 2010年代に入り、アメリカのパワーが「相対的」に弱体化し始めます。特に、グローバリズムを悪用し(あるいは「活用」)、エゴイスティックに自国の国力を強化した中国の存在は大きかったです。

 現在は、覇権国のパワーが各国に及ばなくなる、ポスト・グローバリズム(厳密にはポスト「第二次」グローバリズム)の時代に入っています。となると、当然ながら各国の国益が衝突し、「万国の万国に対する闘争」の時代に突入せざるを得ない

 いや、元々世界は「万国の万国に対する闘争」が前提だったのが、冷戦や覇権国の存在が理由で、たまたま「平和」に見えていたに過ぎないというのが正解なのでしょう。
 
イラン、中東の米施設を報復対象に イスラエル都市も
【ドバイ=岐部秀光】米軍がイラン革命防衛隊の精鋭組織「コッズ部隊」のソレイマニ司令官をイラクで殺害したことを受け、イランは報復措置の検討に入った。イランのメディアは4日、革命防衛隊幹部のアブハムゼ氏が中東地域にある35の米関連施設や対立するイスラエルの都市テルアビブ、ホルムズ海峡を航行する船舶などが攻撃目標の候補になると述べたと報じた。
 イランのラバンチ国連大使は4日、米CNNのインタビューで「軍事行動には軍事行動で対応する。司令官の暗殺はイランへの宣戦布告に等しい」と述べた。
イラク国営テレビは4日、米軍による親イラン民兵組織への新たな空爆が実施されたと報じた。5人が死亡したとの情報もある。米政府は事実関係を確認していない。イラクの首都バグダッドでは4日、数千人が行進してソレイマニ氏の死を悼んだ。
 トランプ米政権は米兵3000人前後を中東地域に追加派遣する検討に入った。クウェートなどに駐留する見通しで、イランによる報復攻撃に備える狙いとみられる。
 トランプ米大統領は3日、「戦争を招く行動はとっていない」とイランとの戦争を望まない立場を強調したが、両国の対立は挑発の応酬に陥る危険が強まっている。』
 
 もちろん、アメリカとイランの関係には歴史があり、両国が衝突するのは今回が初めてというわけではありません。
 
 米軍の空爆により、イラクで殺害されたソレイマニ司令官率いるコッズ部隊が、アメリカ政府から「テロ組織」としてみなされていた。アメリカ軍がイラクにおいて、イラク政府の許可なく軍事行動をとったことは、明らかに国連憲章違反。(国連憲章では、他国への武力行使が原則禁止ですが、相手国が領土内での武力行使に合意した場合は例外とされています)

 共に事実ですが、わたくしはアメリカとイランの衝突の「原因」や今後の展開について論評したいわけではありません。
 単に、国益と国益が衝突する「万国の万国に対する闘争」が世界の現実で、国連憲章や国際条約は、最終的には無視されるのが「世界の現実」であると書きたいだけです。

 善悪論ではなく、「万国の万国に対する闘争」が世界の常態であることを理解する。その上で、日本国が「闘争の世界」で「主権国家」としていかに生き延びるのか、プラグマティスティックに考えなければならない。

 のですが、それ以前の問題として、日本国民の多くが「主権」「主権国家」について理解していないというよりは、考えたこともないように思えます。

 日本は一応、表向き「国民主権国家」です。日本国の「至上、最高、他に優越した権力」を持っているのは、我々日本国民のみで、他にはいません。

 我々が「主権国家」を失った場合、どうなるのか。現在のウイグル人やチベット人、香港人を見れば分かります

 2020年は、まさに「万国の万国に対する闘争」が常態であることを印象付ける形で始まりました。日本国民の主権国家「日本国」を守るために、一日本国民、つまりは一人の主権者として、できる限りのことをしたいと考えています。

 年明けから難しい話で、失礼いたしました。
 
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