株式会社経世論研究所 講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから
三橋貴明のツイッターはこちら
人気ブログランキングに参加しています。
チャンネルAJER
 
令和の政策ピボットの賛同者数が2万人を突破いたしました。
また、メルマガ「令和ピボットニュース」が始まりました。皆様、是非とも、メルマガ登録を!
 
今期は二回目の試みとして、全国各地で開催します。一月は東京で、ゲスト講師は竹村公太郎先生。二月は京都で、ゲスト講師は藤井聡先生です。
 
三橋TV第177回【日本経済を潰すギグエコ・シェアエコの拡大を防げ!】

https://youtu.be/ZCbYqqgaj8c

 

 たまには真面目に「MMT批判のテンプレ」について取り上げたいのですが(正直、ウンザリしている我々ですが)、
 
 日本、米国、英国のように自国建て通貨を発行する国は、際限なく国債を発行でき、赤字を躊躇(ちゅうちょ)せず財政支出を拡大できるとする経済理論が話題になっている。現代貨幣理論(MMT)と呼ばれるもので、米国の一部の経済学者と貧困救済を掲げる民主党議員が提唱している。財政難の中でも財政出動を継続していけるとしたら魅力的な理論だが、果たして真偽のほどはどうか。まず、この理論の実施によって看過できないインフレが起き得るのではないかという、識者たちの議論が集中する論点から見ていく。(上智大学名誉教授・大和田滝惠)(後略)』
 
 もう、一行目から藁人形。
「日本、米国、英国のように自国建て通貨を発行する国は、際限なく国債を発行でき」
 はい、そんなこと誰も言っていません。

 インフレ率が許容する限り、政府は国債を発行できるといっているわけで、「際限なく」といった言葉を使う時点で、勝手にこしらえた藁人形でMMTを貶めようとする意図が満載です。

 つまり、学者として失格です。
 
 一応、後略部以降は「インフレ率」を問題にしていますが、ならば、
「自国建て通貨を発行する国は、際限なく国債を発行でき」
 ではなく、
「自国建て通貨を発行する国は、インフレ率が許容する限り、際限なく国債を発行でき」
 と、書くべきですね。

 その後、インフレ懸念について。
 
危険な事態になり得るのは、市場のマインドが絡んでくるからだ。債務がどこまで増大しても無風で済むとは限らない何らかのきっかけで、ある時点から市場に異変が起き得る。その後に制御可能かどうかは不透明で、誰にも分からない。』

 と、実に抽象的な、実にダメ学者らしい印象操作をしていますが、なんでデフレの国が、インフレ率ゼロ(現在)から、いきなり「制御不可能なインフレ」になるのでしょう。というか「危険な事態」「市場のマインド」「無風」「何らかのきっかけ」「市場の異変」「不透明」ついて、定義を示して頂きましょうか。

 そもそも、インフレ率が健全な範囲を超えて上昇したならば、金融引き締めをすれば済む話です。政策金利を上げるなり、預金準備率を引き上げるなり、銀行の貨幣創出(貸出)抑制手段はいくらでもあります。

 MMTについて「インフレ率上昇を止められない」と主張する者は、
『(引用)債務が増大し続ければインフレが止まらなくなり、ハイパーインフレに行き着くのが必然的な帰結』
 といった極論を口にしますが、なぜ金融政策を無視するのでしょう
 
【歴史音声コンテンツ 経世史論】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※2月15日まで、竹村公太郎先生の「日本文明の誕生~神話から歴史へ~」がご視聴頂けます。
 
 興味深いと思うのは、金融政策を重視する「いわゆるリフレ派」までもが、MMTについて、

『必ずインフレが起きる。(提唱者は)インフレになれば増税や政府支出を減らしてコントロールできると言っているが、現実問題としてできるかというと非常に怪しい(日銀の原田泰審議委員)』

 と、金融政策によるインフレ抑制を無視することです。

 デフレという需要不足の際は、量的緩和によりMBを増やしたところで、実需(需要)となるMSは増えません。何しろ、MSは政府の財政出動か、民間の借り入れによってしか増えないのです。

 政府が緊縮財政で需要を抑制している以上、民間がカネを借りるはずがないでしょう。デフレ期は、政府が緊縮財政を継続している場合、企業が投資や負債を増やす「投資利益率>>>名目金利(※実質金利ではない。特にデフレ期に実質金利を見ている経営者などいない)」の状況は訪れません。ちなみに「>>>」とは、十分に上回っている、という意味です。

 逆に、インフレ率を抑制したいならば、政府支出を抑制気味(一定でOK)にし、金融政策を引き締めに転じれば済む話です。政策金利を引き上げれば、「投資利益率<<<名目金利」となり、投資拡大や負債増はストップします。誰も、儲からない状況でカネを借りようとは思いません。

 MMTを含むあらゆる経済政策は、様々な道具(ツール)の集合体であり、時期によって「効果が十分な政策」「効果が不十分な政策」「無意味な政策」「逆効果の政策」があるというだけの話

 それにも関わらず、財務省主導の緊縮財政路線に頭の中を染められた日本の政界、学界、官界、経済界の愚か者たちは、常に「一つの道具」を議論しようとする。あのね、東京から横浜に行くこと考えたとしても、自動車か鉄道か、鉄道ならば東海道線か、東横線か、横須賀線か、あるいは新横浜で良いならば新幹線か、色々と手段があるでしょう。状況に応じて、手段、道具を選択するのは、当たり前でしょうに。
 
 とりあえず、大和田教授の寄稿(後半のモラルハザード云々は精神論なので、どうでもいいです。というか、あんたは一度でも生き馬の目を抜くビジネス界で明日をも知れぬ身で働いたことがあるのか、と言いたい)を読んでわかることは、
「あ、この人、銀行の信用創造による預金貨幣創出の仕組みすら理解していない」
 という点です。

 なぜ、分かるのかといえば、そもそもインフレ率に最も直接的な関係がある「銀行預金(の創出)」を無視しているためです。

 単純に、「MMTは政府が無限に国債を発行できる理論」という出鱈目を耳にし、中途半端というか10%程度の理解で寄稿を書いたのでしょう。(あるいは、書いてくれと破綻派に頼まれたのだと思います)

 この程度のレベルの人物が「教授」を名乗れる。中身はほぼ間違いであるにも関わらず、「教授」というタイトルで権威づけられ、MMTについて勘違いする国民が増え、日本国や日本国民が救われない。(いわゆる権威プロパガンダ)

 いい加減にしましょう。
 
 MMTを批判するのは構いませんが(MMTだけではないですが)、正しい批判、議論をしましょう。さもなければ、自分の「頭の悪さ」「無知」を、全国にさらすだけですよ、大和田教授。(ちなみに、大和田滝惠名誉教授は元上智大の教授ですが、専門は環境)
 
「MMTを藁人形作って批判するのは、いい加減にやめろ!」に、ご賛同下さる方は、
↓このリンクをクリックを!
本ブログへのリンクは以下のバナーをお使いください。