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12月21日(土)シンポジウム「令和の政策ピボットは実現可能なのか?」が開催されます。
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三橋TV第173回【ケン・ローチ監督最新作から見える搾取ビジネスの恐怖】
 
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 第一回のゲスト講師は、竹村公太郎先生です。台風19号による荒川や利根川の「危機」が、いかに深刻だったか。河川の専門家のお話を伺います。

 
 12月12日、イギリス総選挙。事前の予測では苦戦が伝えられ「過半数を獲得できるか微妙」と言われていた、ボリス・ジョンソン首相率いる保守党が圧勝。これで、来年1月末のイギリスのEU脱退はほぼ確定でしょう。

 2017年6月23日のイギリス国民投票は、実は法的拘束力がありません。あくまで、議会が国民に「お伺い」を立てる主旨で、「国民投票で離脱派勝利=ブレグジット」とはなりません。最終的に決定するのは、あくまでイギリス議会です。

 そのイギリス議会の選挙において、来年1月末のブレグジットを公約に掲げた保守党が大勝ちした。これで、ジョンソン首相は「国民の信任」という権威を手に入れました。そもそも、ジョンソン首相は保守党の党首選で勝ったことで首相に就任し、有権者の票により選ばれたわけではなかったのです。
 
イギリス 1月末のEU離脱へ前進 保守党 歴史的圧勝
 与党の歴史的な圧勝で、EU(ヨーロッパ連合)離脱が確実となったイギリス。
 気になる日本経済への影響は。
 イギリス・ジョンソン首相「わたしたちはやり遂げた! 勝利したんだ!」、「障害を突破して今、朝飯前の栄光の瞬間、新しい夜明けを前にしている」
 保守党の支持者を前に、力強く勝利を宣言したイギリスのジョンソン首相。
 EU離脱の是非が最大の焦点になったイギリスの総選挙は、与党・保守党が365議席を獲得。
 過半数を大きく上回り、歴史的圧勝を収めた。
 ジョンソン首相「過半数を得た今、何ができる?」
 支援者「EU離脱!」
 ジョンソン首相「予定通り1月31日にEUを離脱する。“もしも”も“たぶん”もない!」
 保守党の勝利に、EUのミシェル大統領は、「わたしたちは早急に、イギリス議会が離脱合意の投票を行うことを期待している。われわれEUは(次のステップに進む)準備ができている」と述べた。(後略)』
 
 今回の選挙結果の注目点は、保守党の圧勝、労働党の惨敗と同時に、SNP(英地域政党スコットランド民族党)の躍進です。SNPは、スコットランドの59議席中、何と55議席を獲得。

 SNPのスタージョン党首は、
「ボリス・ジョンソンは、イングランドのEU離脱を付託されたかもしれないが、スコットランドのEU離脱は付託されていない。スコットランドは自らの将来の選択権を持たなければならない」
 と語っています。

 イングランドとスコットランドは、1707年の合同法により「連合王国」となったわけですが、元々は別の国でした。というよりも、連合王国始祖であるノルマンディー公ギヨーム二世(ウィリアム一世)のイングランド王国征服以降、スコットランドは常にイングランドの「侵略」の脅威にさらされ続けてきた歴史を持っています。

 エジンバラ城が岩石(キャッスルロック)の上に建てられ、人々は壕の外(現、新市街)に住むことを禁じられていたのは、イングランド王国軍の侵略が繰り返されたためです。

 ちなみに、イングランドとスコットランドは「宗教」が違います。実は「英国国教会」や「イギリス国教会」というものは存在しません。「イングランド国教会」と「スコットランド国教会」は全く異なる宗派なのです(プロテスタントとしては、ひとくくりにされてしまっていますが)。

 というわけで、今後、スコットランドがどうなるかは予断を許さないところですが、
EUというグローバリズムに対抗し、ブレグジットを選択した結果、連合王国としてのナショナリズムが壊れ、スコットランドが独立した
 などという結果になったら、もはや乾いた笑いも出てきません。
 
【歴史音声コンテンツ 経世史論】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※2月15日まで、竹村公太郎先生の「日本文明の誕生~神話から歴史へ~」がご視聴頂けます。
 
 それはともかく、今回のジョンソン保守党の大勝利の主因は何でしょうか。

 先日、イギリスに行った際に、EU離脱派も残留派も、共に「わだかまり」を抱えているのを感じました。しかも、国民投票で離脱が選択されたにも関わらず、なかなか現実化しない(EUとの交渉や、イギリス議会の判断があるため、当然なのですが)。

 つまりは、イギリス国民は「閉塞感」に悩まされていたのではないかと。そこで、保守党がずばり「来年1月のEU離脱」という分かりやすい争点をアピールした。対する労働党は、なんだかフニャフニャしたイメージでした。
 
 結果、分かりやすい「ワンフレーズ」が勝利した。「離脱か? 残留か?」ではありません。
保守党に投票し、来年1月末の離脱を決めるか。労働党に投票し、グダグダを継続するか?
 の選択になってしまったように思えるのです。(むしろ労働党は、自由民主党と組んで「EU残留!」とやった方が、票が取れたのでは・・・。まあ、部外者の想像ですが)

 SNPの躍進も、「スコットランド独立」というワンフレーズがスコットランドの人々の心をつかんだのではないでしょうか。

 さて、我が国です。
 正直、19年10月の消費税増税のインパクトは想像以上でした。何しろ、実質消費や景気動向指数が、14年を上回る落ち込みになったのです、

「史上初めての、景気後退期における増税」
 のインパクトを、わたくしも正直、読み間違えました。ここまでひどいとは・・・。

 しかも、来年7月1日には再増税。加えて、五輪不況。日本に限らず、五輪の年はどの国も必ず不況になります。

 アベ・ショックは、来年にかけて間違いなく深刻化していくのです。国民は、七年以上も政権を握りながら結果を出せないどころか、貧困化と格差拡大を進めた安倍政権、あるいは「自民党政権」に対する閉塞感で満ちるでしょう。

 そのタイミングで、野党が「消費税廃止」というワンフレーズを掲げ、選挙協力をしたら?

 自民党側は、今回の英総選挙の労働党と同じく、「フニャフニャ」とした公約しか掲げられないでしょう。

 もちろん、わたくしは「ワンフレーズ・ポリティクス」が正しとは思いませんが、手法が間違っていようと、結果が良ければ、それで構いません。より真っ当な手法を使い、状況が悪化するよりはマシです。

 自民党が勝とうが、野党が勝とうが、ワンフレーズだろうが、深い議論が行われようが、「結果的に間違った政策」が推進されるのでは、意味がないのです。

 今までの日本のパターンは、デフレで閉塞感が高まったタイミングで、「改革!」「構造改革!」系のワンフレーズが受けてしまうものでした(郵政民営化など)。それに対し、安倍政権は、正しい政策を掲げて政権を取り、見事に裏切りました。

 このタイミングで、消費税増税でアベ・ショック。

 今後のわが国で閉塞感が高まっていくのは確実で、野党がもし「消費税廃止」でまとまることができた場合、これは自民党側への強烈なプレッシャーになります。政界を「反・緊縮財政」でかき混ぜ、緊縮三法の改定を実現する。最低でも、PB黒字化目標を破棄する。

 正直、現在の日本の政策転換は、↑以外の道が見えないのです。(ご意見があったら、書き込んでください)

 いずれにせよ、閉塞感が満ちた状況での「ワンフレーズ」は強烈なインパクトがあります。野党サイドには、是非とも「消費税廃止」でまとまって欲しいと思います。
 
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