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三橋TV第171回【安倍政権の「財政拡大志向」の裏を読み解け!】

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 さて、消費税を増税すると、毎度毎度、実質賃金が大きく下がります。何しろ、消費増税は強制的な物価の引き上げですが、給料は物価上昇分は上がらないため、実質賃金は下がります。

 ところが、今回の増税では10月の実質賃金が対前年比+0.1%になるという珍現象が見られました。もちろん、理由があります。
 
『10月実質賃金は前年比0.1%増、2カ月連続増=毎月勤労統計
 厚生労働省が6日発表した毎月勤労統計調査(速報)によると、10月の実質賃金は前年比0.1%増と、2カ月連続で増加した。
 名目賃金に当たる現金給与総額は前年比0.5%増の27万3466円で2カ月連続でプラス。ボーナスなど特別に支払われた給与は同4.4%減の6219円となった。
 基本給にあたる所定内給与は前年比0.6%増の24万7118円だった。残業代など所定外給与は同変わらずの2万0129円だった。』
 
 実質賃金は、名目賃金の変動から物価上昇率の影響を排除することで求めます。ここでいう物価上昇率とは、具体的には「持家の帰属家賃を除く総合消費者物価指数」のことです。
 
 というわけで、持家の帰属家賃を除く総合と、わたくしが最も重視する「コアコアCPI(食料(酒類除く)エネルギーを除く総合)」で消費者物価指数をグラフ化しました。
 
【日本のインフレ率の推移(対前年比%)】
 
 持家の帰属家賃を除く総合は、エネルギー価格を含んでいるため、2008年(資源バブル期)に大きくプラス化しています。とはいえ、コアコアは全く上がっていません。当時の日本もデフレでした。

 96年以降、コアコアCPIがプラス化したのは二回のみ。97年と、14年のみです。つまりは、96年以降、日本のインフレ率は「消費税増税以外では上がったことがない」と理解するべきです。その後は毎回デフレに逆戻り。まあ、消費税を増税するとデフレが深刻化するので、当たり前なのですが。
 
 問題は、上図は19年10月を含んでいるという点です。19年のインフレ率は、持家の帰属家賃を除く総合も、コアコアも対前年比+0.3%。14年には、両者ともにいきなり4月に+2%超になったのと比べると、えらい違いです。

 この違いは、なぜ起きたのか。幼児教育無償化の影響です。
 
 10月から、幼稚園、保育所、認定こども園等を利用する3歳から5歳までの全ての子供たちの利用料が無料になりました。さらに、住民税非課税世帯は、0歳から2歳までの利用料も無料です。

 無料とはいっても、政府が代わりに出すわけですが、いずれにせよ該当世代の子供たちを持つ世帯は、これまで2万円、3万円と支払っていた利用料が「ゼロ」になったのです。結果、消費者物価の統計でいえば、「教育費」が下がり、インフレ率の上昇を抑制したのです。

 というわけで、「持家の帰属家賃を除く総合」がわずか+0.3%の上昇で済み、実質賃金が+0.1%となった。
 
 もっとも、上記はあくまで幼児、乳児を持つ世帯の話で、そうではない世帯は関係ありません。普通に実質賃金が下落しているでしょう。
 
【歴史音声コンテンツ 経世史論】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※2月15日まで、竹村公太郎先生の「日本文明の誕生~神話から歴史へ~」がご視聴頂けます。
 
 ところで、実質消費が14年4月を上回る落ち込みになったことは触れましたが、ちょっと(いや、かなり)凄まじいことになっています。
 
【日本の実質消費指数(季節調整値)の推移(2015年=100)】
 
 上図は日本の実質消費について、対前年比ではなく、指数そのものをグラフ化したものです。
 
 21世紀に入って以降、日本の実質消費は漸減が続いていました。消費税という「消費に対する罰金」が存在していた以上、当然ですが、14年3月に跳ね上がり(駆け込み消費)、14年4月に大きく落ち込みました。

 その後、政府は「V字回復する」と寝言をほざいていましたが、我々は「L字型低迷に陥る」と警鐘を鳴らしました。どちらが正しかったか、分からない人は目玉を取り換えて下さい。
 
 2019年9月、やはり多少の駆け込み消費があり、10月に駆け込み消費分を上回る落ち込みに。(2020年7月1日に、ポイント還元がなくなり、再増税なので、もう一度同じ軌跡を描くと予想)

 注目点は、2019年10月の実質消費指数の水準は、2014年4月を「下回ってしまった!」という点です。

 2019年10月、我々は2014年4月以上に消費できなかったのです。さすがは、”三冠王”安倍総理大臣、見事なものです。
 
 ちなみに、三冠王とは、
「憲政史上、最も実質賃金を引き下げた総理大臣」
「憲政史上、最も実質消費を引き下げた総理大臣」
「憲政史上、最も出生数を減らした総理大臣」
 という意味です。総理はルソーの定義でいう「最悪の政府」の三冠王です、おめでとう、安倍総理!
 
 というわけで、実質消費は2014年4月以上に落ち込んでいるわけですが、さらにとんでもないデータが公表されてしまいました(明日に続く)。
 
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