株式会社経世論研究所 講演・執筆依頼等、お仕事のご依頼はこちらから
三橋貴明のツイッターはこちら
人気ブログランキングに参加しています。
 
12月21日(土)シンポジウム「令和の政策ピボットは実現可能なのか?」が開催されます。
また、メルマガ「令和ピボットニュース」が始まりました。皆様、是非とも、メルマガ登録を!
 
三橋TV第170回【日本国民のメモリーを奪う皇統断絶を許すな!】
 
 先週月曜日のチャンネル桜で、前田さんがご紹介下さった「家族を想うとき(原題:Sorry We Missded You)」が12月13日に公開になります。
 ドライバーを従業員ではなく「個人事業主」として扱い、会社の利益を最大化する。
 あるいは、顧客と個人を結びつけるプラットフォームのみを提供し、チャリンチャリンとカネを稼ぐ。
 総称して「シェアリング・エコノミー」と呼ぶことに致しますが、この種の搾取ビジネスについては、三橋TVで室伏先生が解説して下さいました。
 
 すでに、日本でもアマゾンフレックス、ウーバーイーツという形で始まっています。この種のモデルは、搾取ビジネスであり、「全ての責任を労働者(及び顧客)に押し付ける」無責任ビジネスでもあります

 今年3月、パソナ取締役会長の竹中平蔵大先生らが巣くう未来投資会議が、白タク解禁を議論しました。白タクが解禁になると、
〇 ウーバーがぼろ儲け(チャリンチャリン)
〇 既存のタクシー会社が潰れるか、さらなる低価格競争。ドライバーは失業か、貧困化(すでに貧困化していますが)
〇 ウーバーのドライバーは例により「自己責任」。何の保障もなく、労働力を買い叩かれる
〇 顧客は身元不明なドライバーのタクシーに乗らざるを得ない。
 という状況になるわけですが、すでにウーバービジネスが進んだ各国では、上記モデルが問題視され、規制が始まっています。

 11月26日、イギリスのロンドン交通局は、ウーバーに対し、ロンドンでの営業認可を新たに与えない方針を明らかにしました。理由は「安全面の問題」とのことです。
 
 具体的には、個人タクシー免許のない人物が、ドライバー登録できている、免許を取り消されたドライバーも、普通に登録できている。などなどですが、要するに無管理状態のようです。

 ウーバー側は、
「過去2カ月にわたってすべてのドライバーを監査しており、手続きも強化している」
 と反論していますが、いずれにせよドライバーは「従業員ではない」のです。どこまで管理できるのか、疑問です。

 そもそも、ドライバーを従業員ではなく、個人事業主として扱い、管理しないことで利益を膨らませるのがウーバーを初めとするシェアリング・エコノミーの肝です。危ないドライバーの車を停めてしまい、犯罪にあっても、
「そりゃあ、顧客の自己責任」」
 でございますよ、ハイ。
 
【歴史音声コンテンツ 経世史論】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※11月5日から上島嘉郎先生と三橋貴明の対談「自虐史観はなぜ始まり、深刻化したのか」がご視聴頂けます。
 
 
『ウーバーの性的暴行被害、2年間で5981件
 サンフランシスコ(CNN Business) 米配車サービス大手のウーバーが5日に公表した安全性に関する報告書で、2017~18年にかけて報告された性的暴行被害が5981件に上っていたことを明らかにした。
このうち464件はレイプ被害だった。
 ウーバーをめぐっては、CNNの調査報道で昨年、それまでの4年間で米国内の運転手少なくとも103人が、乗客に対する性的暴行などの罪に問われていたことが判明した。運転手は逮捕されたり警察に指名手配されたり、民事訴訟を起こされたりしている。(後略)』
 
 シェアリング・エコノミーが「本当に怖い」と思うのは、人間(労働者)の「雇用や所得を安定させたいという欲求」を無視する点です。

 マズローの欲求5段解説では、下から「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」となっていますが、人間が生きる上で基盤となる「安全欲求」を「満たさない」モデルなのです

 安全欲求とは、経済的に安定したい、健康状態でありたい、危険から身を守りたいといった欲求になります。

 通常のタクシードライバーの犯罪が、なぜ少ないのか。それは、ドライバーが「会社の従業員」として「雇用の安定」を手に入れているためです。犯罪に手を染めた日には、基盤的欲求である「安全欲求」が満たされない状況になるわけですね。

 露骨な書き方をすると、安定を失う恐怖が、犯罪への欲望を上回るのです。(※タクシードライバーが、特に犯罪傾向があると言いたいわけではありません。人間全般の話です

 それでは、雇用や所得の安定が全く認められていないドライバーの場合は・・・・? そりゃあ、確率的に犯罪に手を染めるケースが増えるでしょう。何しろ、「安定を失う恐怖」がないわけですから。
 
 また、労働者側に「雇用・所得の安定」がないということは、これは露骨なデフレ化政策になります。MMTのJGP(雇用保障プログラム)の逆ですね。
 
 労働者の雇用や所得が不安定で、消費が増えず、デフレから脱却できない。デフレで失業者が増える。すると、雇用や所得が不安定な労働者が増える。ウーバーがますます儲かる、というわけですね。
 
 日本では、経済産業省までもが頭がおかしくなっているようで、フリーランス(個人事業主)を「多様で柔軟な働き方」と礼賛し、兼業・副業も進めている有様です。確実に、ウーバー的なビジネスが「儲かる」方向に規制が改革されていくでしょう。

 アマゾンフレックスにせよ、ウーバーイーツにせよ、登録した個人事業主は、「好きな時間に働ける」という建前になっており、それを「餌」としてアピールしていますが、実は話は逆で、
「企業側が必要とするときのみ、仕事がある」
 というのが現実なのです。何しろ、そもそもが企業サイドの「コスト削減」が目的で始まったビジネスモデルです。

 企業のビジネスの都合で、普通に「仕事がない」状況は起きえます。安定した所得など、望むべくもありません。各種の保険(年金や医療保険など)も、自己負担。

 しかも、運送手段(軽トラックやバイク、自転車など)は「個人事業主」が自ら用意せねばならず、その上、何かあっても「自己責任」です。

 自転車でウーバーイーツの宅配に従事していたとして、熱中症で倒れたとしても、ウーバーや飲食店側は何の責任も負いません。すべては、自己責任。
 
 以前、サムスン電子サービスの契約社員だったチェ・ジョンボム氏が、32歳の若さで自殺した事件がありましたが、氏がサムスンという世界的大企業の関連会社の社員でありながら、「時給制」(出来高制)で働いていたことを知り、ショックを受けたことがあります(覚えていますか?)。

 つまりは、仕事があるときにのみ働き、ないときには働けない(=給料をもらえない)。チェ・ジョンボム氏は、労組に入った結果、「仕事を与えない」形で圧力を受けます。わたくしと同じく、乳児の娘がいた氏は、
「腹が減っては暮らせない」
 という言葉を残し、自殺。
悲しい事件でした。

 この種の「ビジネス」が繁栄する社会は「間違っている」と、声を大にして言いたいのです。
 明日に続く。
 
「この種のビジネスが繁栄する社会は間違っている!」に、ご賛同下さる方は、
↓このリンクをクリックを!
本ブログへのリンクは以下のバナーをお使いください。