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三橋TV第169回【必見!誰が日本に水田稲作を伝えたのか?】
 MMTの議論を見ていると、本当に面白いなあ、と思うのは、人間性というか「誠実さ」が出る。

 例えば、これ。
 
 
 内容は、MMTについて理解していない以前に、「(日本ではなく)MMTを叩き潰す」ためのストローマン・プロパガンダを並べ立てただけなので、まあ、論評に値しないのですが、
「(MMTは)なんちゃって経済理論」
「(MMTに基づく政策は)バラマキ政策」
「(MMTは)米国も(日本と)同じようなバラマキ政策をしよう! と考えた結果、作り出したなんちゃって経済理論」
 など、もう言論云々以前に、人間としてどうなの? と、疑問に感じてしまうような陳腐で恥ずかしいレトリック、ストローマンによる印象操作の嵐でございます。
 
 そもそも、MMTは単なる「現在の貨幣のロジック」であり、政策ではありません。しかも、MMTは、クナップの表見主義、ケインズの有効需要の原理、ラーナーの機能的財政論、ミンスキーの「ミンスキー・モーメント」など、知の巨人たちの後継として、二十年以上前にランダル・レイ、ウォーレン・モズラー、ビル・ミッチェルらが集まることで始まったもので、「日本と同じようなバラマキ政策」のために作り出されたわけではありません。

 よくもまあ、ここまで平気で嘘をつけるものです。

 そもそも、MMTについての解説でありながら、この中島聡なる人物は、

1.スペンディング・ファースト
2.市中銀行信用創造(万年筆マネーあるいはキーストロークマネー)
3.政府・民間の貨幣流通に関する恒等式
 
 といった、MMTの基本理論を全く理解していないのが、文章から丸わかりです。
 
 おそらく、MMTについて歪められたレトリックを「また聞き」し、適当にそれっぽい批判フレーズを並べただけなのでしょう。あまりにもレベルが低すぎるので。
 
【「日本の未来を考える勉強会」ーMMTポリティクス〜現代貨幣理論と日本経済〜】
 
 今年五月に「日本の未来を考える勉強会」で講演した際の動画(超人大陸)の視聴が、間もなく四十万に達しようとしています。
 わたくしは、未だに上記の動画の内容について、まともな反論を受けたことがありません。間違っているなら、間違っていると指摘していいんですよ。

 でも、わたくしのセリフやチャートを捻じ曲げ、ストローマンをでっちあげて批判するのはやめてね。しても、無視するけど。
 
【歴史音声コンテンツ 経世史論】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※11月5日から上島嘉郎先生と三橋貴明の対談「自虐史観はなぜ始まり、深刻化したのか」がご視聴頂けます。
 
 ところで、MMTといえば、自民党がMMT勉強会を開きました。
 
『自民党が「MMT勉強会」、出席者から賛否両論
 自民党金融調査会(小倉将信事務局長)は3日、大胆な財政出動を提唱する現代貨幣理論(MMT)の勉強会を開催した。野口旭専修大教授が同理論の歴史的概要と問題点について講演し、出席者から賛否両論の意見が出た。同理論は米国でも大統領選の争点となっており、日本でも今後、与野党の垣根を越えて議論の遡上に上る可能性はありそうだ。
勉強会は大胆な金融政策を提唱するリフレ派で知られる山本幸三議員が、MMTには反対の立場ながら、勉強は必要との判断から企画。会合は議員・議員秘書合わせ20人程度が出席した。
 野口教授は、自国建て通貨を発行している国では、国債を中央銀行が買い入れることにより急激な物価上昇が起きない限り財政出動が可能とするMMT理論の歴史的経緯と概要を説明。主流派経済学と大きく立場が違う論点として、1)有効な経済政策は財政のみで金融政策を無効とみなす点、2)利子率は中銀が外生的に決定可能との前提、3)債務残高は単なる帳簿上の記録であり、気にする必要はないとの見解──などを紹介した。
 勉強会は報道陣に非公開だったが、出席者によると、西田昌司議員は、日銀の金融緩和の効果に限界があり、財政出動が必要な点からMMTを肯定的に受け止めるべき、と指摘。安藤裕議員からは、MMTでは物価が急上昇するまで財政出動が可能としており、歯止めのない議論ではないと擁護する意見が出たという。主催者の山本議員は、金融政策に効果がないとの見解は、金利の引き下げだけでマネーや実体経済を十分刺激はできないとの「旧日銀理論」の立場と似ていると指摘したという。
 出席した自民幹部からは「やはりあまり根拠のない理論のように思えた」との声もあり、受け止めは様々のようだ。』
 
 おいおい・・・。

 野口教授が本当に、
「1)有効な経済政策は財政のみで金融政策を無効とみなす点」
 と語ったとしたら、やはりストローマン・プロパガンダでございますよ。MMTは、政府と中央銀行が一体の「統合政府」が前提の考え方なのだから、金融政策を「無効」などと説明するはずがありません。

 もっとも、MMTは、
〇 中央銀行が市中銀行に発行する貨幣(日銀当座預金)
 と、
〇 市中銀行が民間に貸し出す際に発行する貨幣(銀行預金)
 は「別のおカネ」であり、MB(日銀当座預金)を増やすだけでは、MS(銀行預金)は増えないことを説明し、しかもそれが日本で立証されてしまったので、リフレ派としては立場がないのはわかります。全然、同情できないけど。
 
【日本のマネタリーベースとインフレ率】
 
 日本銀行は、黒田東彦元財務官が総裁に就任した13年春以降、マネタリーベースを何と387兆円も増やしました。ところが、直近(10月)のインフレ率はコアコアで対前年比+0.3%。

 安倍政権下でまともにインフレ率が上昇したのは、2014年4月の消費税増税の時だけです(一年後に、効果がはげ落ちました)。

 というか、19年10月も消費増税したのに、コアコアCPIが対前年比+0.3%って、大丈夫なのでしょうか。もちろん、幼児教育・保育無償化の影響もあるのでしょうが、企業サイドが増税分を飲んでいなければいいのですが。

 いずれにせよ、
「日本銀行がインフレ目標を設定し、量的緩和をコミットメントすれば、期待インフレ率が上がり、実質金利が下がり、デフレ脱却できる」
 という、いわゆるリフレ派の政策は完全に失敗しました。そもそも、MBとMSに直接的な関係がない以上、当たり前です。(もちろん、岩田教授らはそれを承知していたからこそ、上記のややこしいロジックを考えたのでしょうけれども)

 別に、過去の提唱した政策を安倍政権が採用し、失敗したことについて謝れだの、責任を取れだの言う気はありません。とはいえ、間違いを間違いとして認めず、より国民の豊かさや幸福に貢献できるMMTについてストローマン作って批判するのは、これはさすがに人間として恥ずかしいと思いますよ、野口教授。

 もっとも、自民党のMMT勉強会は、何しろ提唱者が山本幸三議員で、呼んだ学者が野口旭教授なわけですから、端から「MMT否定のプロパガンダ」であったのは確実です。(真面目にMMTを勉強したいならば、青木泰樹先生を呼ぶべきでしょう)

 まだしも、安藤先生や西田先生が出席でき、かつロイターが、

『西田昌司議員は、日銀の金融緩和の効果に限界があり、財政出動が必要な点からMMTを肯定的に受け止めるべき、と指摘。安藤裕議員からは、MMTでは物価が急上昇するまで財政出動が可能としており、歯止めのない議論ではない』

 と、書いてくれたのは救いです。昨年であれば、MMT擁護派の意見は「報道しない自由」により黙殺されたことでしょう。MMTというか、「正しい貨幣論」に基づく声が増え、以前より状況が改善しているのは確かなのです。

 というわけで、過去の自分の言動や、現実に否定された自論に固執し、自らの「レンズ」を歪める政治家や学者たちには、容赦なくそれを指摘してあげましょう。彼らが態度を改めるとは限りませんが、少なくとも「次」はやりにくくなります。
 
 中国のような独裁国家ではない我が国は、国民が自ら動き、声を出し、少しずつ、少しずつ、じれったいほどの速度で世の中を「少しでも良い方」に変えるしかないのですよ。そして、ジリジリ蟻が進むような速度で世の中を変えていく民主国家のほうが、一気呵成に政治を動かす独裁国家より、相対的に正しいのですよ、間違いなく。
 
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