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 一般参加可能な講演会のお知らせ。
年末特別講演会「京都大学大学院教授、元安倍内閣・内閣官房参与 藤井聡様」
2019年12月4日(水) 18:45~ 東京都新宿区
【MMT (現代貨幣理論)を学び、日本経済を展望する】
 
 
 さて、IMF(国際通貨基金)に出向している財務官僚(副専務理事をはじめ、数十人います)が、IMFの名前で、
「医療や介護などで増える社会保障費を賄うため、2030年までに消費税率を15%に上げる必要がある
 とのレポートを発表させる権威プロパガンダが行われていることからも分かりますように、すでに消費税再増税に向けた布石が打たれ始めています。

 今更ですが、消費税増税は別に「社会保障の安定化」が目的ではありません。緊縮財政が目的です。

 消費税増税は、緊縮財政。ならば、緊縮財政は、何のため?

 無論、財務省内の出世構造が「緊縮に成功した者(特に消費税増税)が出世する」となっているためですが、それ以前の話として、
「緊縮財政の目的は、緊縮財政」
 と、もはや手段(緊縮)が「至高の存在」と化し、憲法の上に鎮座しているのが我が国です。

 もっとも、10月に消費税が増税され、さらにキャッシュレスポイント還元の影響で、来年7月1日に「再増税」という状況では、現時点で国会議員が消費税率アップの議論をするのは難しいようです。

 とりあえず、財務省の報告書を「IMF製」として出し、経団連には(安定財源の確保のためとのお題目で)「10%超への引き上げも有力な選択肢」と指摘させるなど、増税への世論醸成が進められています。

 反対側で、社会保障支出は抑制、削減、負担引き上げ。こちらは、消費税増税とは違い、目立たないため、容赦なく進みます。

 安倍政権や財務省の何が嫌かといえば、明らかに国民を困窮させる政策に「それっぽい美名」をつけ、国民を騙しつつ推進することです。ついでに、その手の陳腐なプロパガンダに引っかかる人が少なくないことが、同じ国民として情けない。

 例えば、生産年齢人口比率の低下を受けた人手不足解消のために、
「すべての女性が輝く社会づくり」<女性を労働市場に放り込み、低賃金で働かせる
「高度人材の活用」<単なる低賃金の労奴(移民)導入
「人生100年時代。高齢者を戦力に」<高齢者で労働市場に放り込み、低賃金で働かせる
 と、それっぽいレトリック、スローガンが叫ばれ、国民に真の目的(低賃金労働者の増大)がばれないように進められる。

 中国共産党か! ソ連か! ジョージ・オーウェルか!
 
【歴史音声コンテンツ 経世史論】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※11月5日から上島嘉郎先生と三橋貴明の対談「自虐史観はなぜ始まり、深刻化したのか」がご視聴頂けます。
 
 お気づきでしょうけれども、現在、社会保障費の削減・負担増は「全世代型社会保障検討」という名の下で進められています。
 
『見えぬ全世代型保障 論点整理 医師会が負担増反発
 政府は26日、全世代型社会保障検討会議の第4回会合を首相官邸で開き、12月中旬の中間報告に向けた論点を提示した。最大の難関は医療制度改革で、利害関係者との調整が難航している。年金改革でも一定以上の収入がある高齢者の年金を減らす在職老齢年金制度の見直しが頓挫。鳴り物入りで始まった全世代型社会保障制度の改革論議は一進一退を繰り返すばかりか、社会保障のあるべき姿が見えてこない。(坂井広志)
 検討会議で示された論点のテーマは(1)年金(2)労働(3)医療(4)予防・介護-の4つ。安倍晋三首相は「人生100年時代の到来を踏まえて働き方を含めた改革をパッケージとして行っていく」と強調した。「医療などの分野を含めて、年末の中間報告や来年夏の最終報告に向けて具体的な調整を進めていく必要がある」とも語った。(後略)』
 
 当たり前ですが、財務省の飼い犬たる日本の大手メディアは、当然のごとく「社会保障費を抑制することが善」というコンセプトで記事を書いています。

 現在は、財務省の、
「現役世代の保険料負担を軽減しつつ、高額な医療費を保険で支えるには、広く少額の負担を分かち合うべきだ」
 という、緊縮前提の「負担全世帯押し付け論」に、日本医師会が、
「財政論でしかない。容認できない。医療費の上昇分を患者の負担で賄う仕組みを入れることがあってはならない。公的医療保険は相互に助け合うのが基本理念だ
 と、「社会保障の理念」で対抗している状況ですが、これではやはり弱い。多くの国民は、
「医師会の言うこともわかるけど、ザイゲンガー」
 で、財務省の「みんなで負担し、みんなで貧乏になろう」に靡いてしまいます。

 というわけで、MMT(現代貨幣論)という「現実」を理解し、「政府に財政的な予算制約はない」という真実の共有を急ぐ必要があります。

 何度も書いていますし、三橋TVでも
三橋TV第88回【真の社会保障問題と解決策とは?】 
 解説した通り、日本の社会保障の問題は「カネ」ではなく、供給能力です。

 病院に行った際に、医者がいない、看護士が足りない、介護士が足りない、ベッドも足りない、そもそも病院が統廃合で潰され、残っていない。となると、カネがあっても、社会保障は成り立ちません。

 ケルトン教授がシンポジウムで同じことを語っていましたが、リソース(わたくしの言う供給能力)がなければ、政府に「財政的な予算制約がない」状況であっても、社会保障制度は崩壊します

 そして、日本は緊縮財政を続けることで、わざわざ虎の子の供給能力を削減していっています
 
 診療報酬も引き下げの方向で議論が進んでいるため、このままでは医者のなり手がなくなるでしょう。

 さらには、「患者が少ない病院」をわざわざ公表し、ベッドや病院を削減しようとしてしている。

 何が問題なのか? 国民が正しく理解し、政治家を動かさない限り、我が国は「緊縮の王国」のままで、将来的な社会保障制度の崩壊は回避できないでしょう。
 
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