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『MMTとハイパーインフレ論者(その2)(前半)』三橋貴明 AJER2019.7.9
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三橋TV第117回【日本経済の潜在力が世界一な理由】
 相変わらず、MMT(現代貨幣理論)に対する、プロパガンダが続いています。
 
『財政に「呪文」は通用しない MMTとアベノミクス 本社コメンテーター 上杉素直
 蛇口をひねれば水が流れ出し、シンクの中にたまっていく。やがてシンクが満たされると水は外部へあふれ出す。ときには排水口から水が抜け、シンク内の水位が下がることもある――。
 主要な通貨を発行する国は、過度なインフレにならない限り財政赤字が増えても問題ないとする学説「現代貨幣理論(MMT)」。今月、提唱者であるニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授が来日し、おカネを水にたとえながら説いてみせた。
 ケルトン氏の比喩では、水がたまるシンクが経済だ。政府を示す蛇口から出てくる水が財政出動で、排水口から出て行ってしまう水は税金を指す。経済を活気づけるには、財政をふかして減税するほど良いことになる。シンクから水があふれ出す現象をインフレになぞらえ、財政出動の限界を表しているのだという。
 米国では税金を上げずに社会保障を充実させるアイデアとして、左派の政治家がMMTを持ち出して話題を呼んだ。日本でも消費増税に反対する人たちがMMTを支持している。負担がなくてリターンを得られるというおいしい話なのだから、有権者の耳には心地よく響くに違いない。
 しかし、多くの専門家が口をそろえるように、政府の借金が膨らむのに無頓着なMMTは問題があると思う。湯水のごとく財政出動を膨らませるために、国債を無限に発行できるわけはない。インフレが起きた時点で財政出動をやめるなんて、本当にできるとは信じがたい。目先の人気取りに使われる財政ポピュリズム(大衆迎合)の「呪文」の類いがまた登場したということだろう。(後略)』
 
 シンクの例を出しているということは、上杉は先日のケルトン教授のシンポジウムにいたことになります。
 
 ケルトン教授の講演を聞いているにも関わらず、見出しからプロパガンダ丸出しです。いきなりMMTに対し「呪文」とレッテル張り「多くの専門家が口をそろえるように」と権威プロパガンダ。
 「政府の借金が膨らむのに無頓着なMMT」「湯水のごとく財政出動を膨らませる」「国債を無限に発行できるわけはない。」と、ストローマン・プロパガンダ。
 「インフレが起きた時点で財政出動をやめるなんて、本当にできるとは信じがたい。」と、過去の事例を無視した歴史捏造プロパガンダ。

 「目先の人気取りに使われる財政ポピュリズム(大衆迎合)の「呪文」の類い」と、ラベリング。
 あまりにも典型的なので、むしろ笑ってしまいました。
 
 まず、MMTは「国債を無限に発行できる」などとは言っていません。単に、自国通貨建て国債のみしか発行していない国は、財政的な予算制約がないと言っているに過ぎません。

 財政的な予算制約がなくても、国民経済の供給能力(ケルトン教授が言うリソース)という限界はあります。モノやサービスの生産能力をはるかに上回る需要を、政府が国債発行で創出した場合、インフレ率が適正な水準を越えて上昇していしまいます。

 というか、上杉は分かっているようです。何しろ、
「インフレが起きた時点で財政出動をやめるなんて、本当にできるとは信じがたい」
 と、書いているのです。

 分かっていながら、MMTがあたかも「国債を無限に発行できる」と主張しているかのごとく印象操作。

 しかも、
「インフレが起きた時点で財政出動をやめるなんて、本当にできるとは信じがたい」
 って、うん、それお前の勝手な思い込み。過去の事例を見る限り、民主主義により財政出動を抑制し、インフレ率を制御できなかったという事例はありませn。少なくとも、日本においては。

 つまり、上杉は思い込みで記事を書く上に、歴史的事実を無視するか、もしくは知らないことになります。

 昨日も書きましたが、偉そうにエリート面して記事を書くインテリもどきたちが、これほどまでにレベルが低いか、もしくは悪質なわけで、民主主義の方が「マシ」であると判断せざるを得ないのです。

 ここまで平気で嘘をつき、印象操作を図る連中に、自分の国の運命を委ねる気にはなりません。
 
【歴史音声コンテンツ 経世史論 始動!】
http://keiseiron-kenkyujo.jp/apply/
※6月16日(日)から、中野剛志氏との特別対談コンテンツ【歴史とナショナリズム】をご視聴頂けます。是非、ご入会下さい。
 
 同時に、上杉に代表される財政破綻論者たちは、国民を「愚民」として見ているのが分かります。つまりは、インフレになっても我々が財政の抑制を求めることはないと、勝手に決めつけているわけでございます。

 民主主義を否定する、反・民主主義のエリートたちが、MMTを否定する。

 後略部で、上杉は、
「政府の債務は国内総生産(GDP)の2倍を超え、子や孫の世代へのツケは膨らむばかりだ。」
 と書いていますが、ならば、他の国はどうなるのでしょうか。
 
【日米中の政府支出・政府債務・インフレ率の推移】
◆日米中の政府債務の推移(2001年=1)
◆日米中の政府支出の推移(2001年=1)
◆日米中のインフレ率(対前年比%)
 21世紀に入り、中国は政府債務を16.5倍に、政府支出を15.7倍にし、GDPは8倍。インフレ率の平均は2.3%。
 アメリカは政府債務を3.9倍に、政府支出を2.1倍にし、GDPは2倍。インフレ率の平均は2.1%。
 日本は政府債務が1.7倍、政府支出が1.1倍、GDPは1倍。インフレ率の平均は0.1%。

 上杉ら財政破綻論者は、決まって「他国の事例」を出しません。とりあえず、中国に行って「国の借金で破綻する! ツケを将来世代に先送りするな!」と言ってこい。

 この手の連中が心を入れ替えることはありません。データで彼らの嘘を証明し、それを「多くの国民に見せる」ことが大事です。

 というわけで、今回は典型的な反MMTプロパガンダへの対抗例として、日経の上杉素直を取り上げました。
 
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