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三橋TV第76回【令和の政策ピボット 始動!】
スウェーデンが興味深いことになっています。
意外でしょうが、スウェーデンは日本以上に「格差拡大&固定型」の税制だったりします。何しろ、軽減税率があるとは言え、消費税は25%。ご存知の通り、消費税は、
「消費性向が高い低所得者層の消費税対所得税比率が、消費性向が低い高所得者層よりも高くなる」
格差拡大型税制です。
ちなみに、食料品に軽減税率が適用されているとはいえ、12%です。
また、スウェーデンには相続税がありません。富裕層の子孫は、初めから富裕層というわけです。
国民負担率は58.9%(!)。日本(43.4%)と比較しても、高い。
しかも、日本以上に「公共サービスの財源は税金」という誤った発想が根付いており、
「新たな公共サービスを望むならば、税率を引き上げる。税金が高すぎるというならば、公共サービスを減らす」
と、実に合理的なシステムになっています。
本来、税金には、
「富裕層から税金を多く徴収し、公共サービスを提供することで、格差を抑制する」
という機能(いわゆる所得再分配)があるわけですが、日本の消費税増税論者同様に、「税金は財源」という偏った考え方になっているのです。
ウェルス・レポート2019年によると、保有資産100万ドル以上の富裕層は、日本人が人口100万人あたり1.9万人であるのに対し、スウェーデン人は2.1万人。
さらに、資産10億ドル以上のスーパー・ビリオネアは、スウェーデンが100万人当たり3.2人(日本はわずか0.3人)。
スウェーデンの最富裕層1%が自国資産に占める割合は、何気にアメリカよりも大きかったりします。
というわけで、日本と比べてすら「格差社会」であるスウェーデンが、反グローバリズム勢力(民主党)の躍進を受け、非・民主党の政権を組むために政治的妥協が図られ、なぜか「高所得者向け減税」という事態になってしまいました。何を言っているのか分からないかも知れませんが、わたくしも何を言っているのか分かりません。
概要が10日発表された今回の減税策は、昨年9月の総選挙によってどの政党も過半数を握れない「ハングパーラメント(宙吊り議会)」に陥った中道左派と中道右派が政党間で合意した妥協策の一環だ。反移民を掲げる極右スウェーデン民主党を政権から排除する狙いがある。
これは、ドイツやデンマークといった欧州諸国の政治家が直面しているジレンマを映す鏡とも言える。こうした国々の主要政党は、左派と右派の対立を隠すか、あるいはポピュリスト(大衆主義)政党に権力の一端を担わせるかの選択を迫られている。
だが、多くのスウェーデン国民は治安や教育、高齢者介護などの公共サービスに不満を募らせており、富裕層への減税により、格差の拡大に根ざしているとみられる外国人嫌いや大衆主義的な感情がさらに悪化する恐れがある、とアナリストは警鐘を鳴らしている。
今回の減税策では、70万スウェーデンクローナ(約840万円)を超える年間所得者に上乗せされていた5%の税金が廃止される。この追加課税は1990年代初頭の経済危機時に財政支援のため導入されたものだ。(後略)』
記事の末尾で、富豪のヨハンソン氏が、
「自分は特権階級の1人で、自宅周辺に高い壁を築くことができるとも言える。もしくは、地下鉄に乗る人たちに降りかかる災いは、いずれロールスロイスを運転する人たちにも災いとなることを認識する必要がある、とも言えるだろう」
と、意味深なことを語っていますが、壁に囲まれた街「ゲーテッドコミュニティ」で暮らす富裕層であっても「災い」から逃れることはできません。
日本の場合は、非常に分かりやすく、
「大震災が起きた際に、富裕層は見逃してもらえるのか?」
という話です。
もちろん、そんなことはありません。
戦争やテロ、犯罪多発、そして自然災害といった災厄からは、結局は富裕層であっても逃れることはできないのです。
災厄が発生した際に、頼りになるのは外国ではなく、同じ国民です。同じ国民が非常事態が発生した際に助け合う。これこそが、ナショナリズムの本質です。
そして、移民受入も、所得格差拡大も、共にナショナリズムを破壊します。極端な格差社会において、貧困層が富裕層と「同じ国民」という意識を共有することはないのです。
実に歪んでいます。
日本にせよ、スウェーデンにせよ、国民を統合する方向に政策の舵を「ピボット(転換)」しない限り、将来的には富裕層ですら悲惨な状況に追い込まれることになります。
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