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『政府が国債を発行すると家計の預金が増える①』三橋貴明 AJER2019.2.26

https://youtu.be/mBjN9lCa2h8

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三橋TV第67回【並んで頂くか、間に座るか迷った件】
 
 元々、いわゆるリフレ派の理論には、フィッシャー方程式とフィリップス曲線が根底にありました

 フィッシャー方程式とは、大恐慌期の経済学者アーヴィン・フィッシャー教授が提唱した、
実質金利 = 名目金利 - 期待インフレ率
 という式です。上記の式を右辺から左辺に読み解くことで、「期待インフレ率を上げることで、実質金利を下げ、消費や投資を増やす」というリフレ派理論が成立したわけです。

 さらに、いわゆるリフレ政策は、「インフレ率」と「失業率」がトレードオフの関係にあることを示すフィリップス曲線を組み合わせることで、
「インフレ率を引き上げ、失業率を下げる(雇用を改善する)」
 というデフレ脱却の考え方になっていました。

 先日、岩田規久男教授が使用した「崩壊したフィリップス曲線(コアCPI版)」の図をご紹介しました。
 
【日本のフィリップス曲線(コアCPI版)】
 
 フィリップス曲線とは、インフレ率と失業率がトレードオフの関係にある、つまりは、
「インフレ率が高いときは、失業率が下がり、インフレ率が下がると(デフレになると)失業率は上がる」
 という関係を示したものです。

 岩田教授の図は、インフレ率がコアCPIになっています。日本銀行のインフレ率の定義がコアCPIであるためなのでしょうが、コアCPIは「エネルギー」を含んでしまっています。
 資源輸入国の日本が、エネルギー価格を含むコアCPIでインフレ率を見ることは、やはり不適切だと思います。
 
『消費者物価指数 2月、伸び率鈍化
https://mainichi.jp/articles/20190323/ddm/008/020/034000c
 総務省が22日発表した2月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は、前年同月比0・7%上昇の101・3だった。前年実績を上回るのは2年2カ月連続。緩やかな上昇基調に変わりはないものの、エネルギー関連品目の上げ幅が縮小したため、伸び率は前月から0・1ポイント鈍化した。 』
 
 2月のCPI(消費者物価指数)の上昇(+0.7%)を牽引したのは、やはりエネルギーです。電気代が対前年同月比7.7%上昇、都市ガス代も8.9%上昇となり、コアCPI(生鮮食品を除く総合CPI)を引き上げました。

 というか、エネルギー関連品目の影響をまともに受けるコアCPIで見出しを作るのは、いい加減にやめて欲しいです。
 
 
 というわけで、わたくしが使用するコアコアCPI(食料(酒類除く)エネルギーを除く総合)で見ると、対前年比+0.3%でした。

 相変わらずデフレ傾向が強いわけですが、コアコアCPIでフィリップス曲線を作成してみると、現在の我が国がいかに「異様」な状況になっているかが分かります。
 
【日本のフィリップス曲線(コアコアCPI版)】
 
 何と、2014年4月以降のフィリップス曲線が、「右肩上がり」になってしまっています! こんなものは、もはやフィリップス曲線でも何でもない!

 上の岩田教授版(コアCPI版)は、まだしも14年4月以降は「水平に近づいた」ですが、コアコアCPIにすると右肩上がり。
 
 ちなみに、岩田教授はどこかの見苦しい「いわゆるリフレ派」たちのように、
「インフレ率などどうでもいい。雇用が改善すれば成功だ!」
 などと情けないことは叫ばずに、真摯に「なぜ、雇用は改善しているにも関わらず、物価は上昇しないのか?」について分析し、原因を探っていらっしゃいました。

 一つの仮説として、岩田教授は、
「非正規雇用の給料は上昇しているが、正規雇用は抑制されている。日本の労使協調路線が影響しているのではないか
 と、語っていました。

 つまりは、労組がそれほど正規職の昇給を求めないため、経営側は人件費上昇を単価に反映させずに済んでいるのではないか、という話です。
 
 労使協調の影響がゼロとは言いませんが、日本の労組の組織率は17・1%(2017年)。労働組合員数は998万人。対する日本の就業者数は6300万人。

 労使協調が、全体の物価抑制にそこまで影響するとは思えません。
 
 いずれにせよ、現実のデータを受け、「なぜなのだろう?」と考える姿勢が大切です。財政破綻論者、いわゆるリフレ派、MMT否定派などに欠けているのは、この「現実のデータに基づき、考える」という態度なのですよ。

 というわけで、なぜ現在の日本ではフィリップス曲線が成立していないのかについて、考えてみたいと思います(明日に続く)、。
 
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